「警備の未来フォーラム2026」開催|危機管理・教育・AI・管制DXから考える警備業の未来

テクノロジー

2026年10月21日、警備業界の経営とDXをテーマにした「警備の未来フォーラム2026」が東京・品川で開催されました。警備会社向けシステム「警備フォース」を提供するアトミックソフトウェア株式会社が主催し、警備業界を支える8社が共催しました。

採用難や高齢化、人件費の上昇など、警備会社を取り巻く環境が変化するなか、これからの警備会社はどのように事業を維持し、成長させていくのか。今回のフォーラムでは、危機管理や人材育成、AI活用、現場運営、経営のあり方など、幅広い視点から警備業の未来について考える機会が設けられました。
本記事では、当日の様子と各登壇者が紹介した取り組みをレポートします。

「警備の未来フォーラム2026」が品川で開催

イベントでは、元警察庁警備局長の金重凱之氏による基調講演をはじめ、LINE WORKS、manebi、アジラ、アトミックソフトウェアの各社が登壇。警備会社が直面する課題やDXの活用について講演しました。
主催者によると、今回のフォーラムには150件以上の申し込みがあり、当日は110人以上が来場しました。開業準備中の事業者や小規模な警備会社から、警備員1,000人以上を抱える警備会社の経営者まで幅広く寄せられ、当日は主催者の想定を上回る来場があり、途中で座席を追加する対応も行われました。

また、会場後方には主催者と共催8社による計9つの展示ブースが設けられました。講演に登壇した企業のほか、アンドエル、JOB PAY、JSS、NNNも出展。講演の合間には来場者がブースを訪れ、各社のサービスについて説明を受けたり、情報交換したりする様子が見られました。

警備フォース|これからの警備会社の経営とDX

オープニングでは、警備フォースを提供するアトミックソフトウェア株式会社が「これからの警備会社の経営とDX」をテーマに登壇しました。

同社が開催にあたって掲げたのは、「これからの警備業で、何を守り、何を変えていくべきなのか」という問いです。採用難や高齢化、人件費の上昇など、警備会社を取り巻く環境が変化するなか、従来の業務や経営のあり方を見直し、事業を継続・成長させていく必要性を示しました。
人材の確保・定着、警備品質の維持、収益性の改善など、警備会社が抱える課題はさまざまです。AIや警備ロボットといった技術の選択肢も広がっていますが、同社はDXを目的そのものではなく、各社の課題に応じて活用する手段として位置づけています。

今回のフォーラムは、警備会社と各分野の専門企業が知見を共有し、今後の経営や現場運営について考える場として企画されました。講演に加えて展示ブースや情報交換の時間を設け、参加者が自社の課題に合った取り組みを検討できる機会となりました。

危機管理から教育・AIまで、各社が警備業の課題とDXを解説

国際危機管理機構|警備業の危機管理とDX、技術が進んでも求められる人間の判断

基調講演には、株式会社国際危機管理機構の代表取締役社長で、元内閣総理大臣秘書官、元警察庁警備局長の金重凱之氏が登壇しました。講演テーマは「警備業における危機管理とDX化」です。

金重氏は、警察庁時代の警備活動や大規模な国際会議の警備に携わった経験を交えながら、危機管理の基本と、技術の進歩によって変わる警備のあり方について解説しました。
講演で繰り返し取り上げられたのは、警備員自身の安全を確保することの重要性です。警備員の安全が守られなければ、事故や災害が発生した際の初動対応や判断にも影響が及びます。金重氏は、警備員の安全確保が、結果として警備対象を守ることにつながるという考えを示しました。

また、警備業のDXについては、従来の警備ロボットに加え、フィジカルAIやAIエージェントなど、新たな技術の活用についても説明しました。
こうした技術によって、巡回や監視、異常発生時の情報共有など、警備業務の一部を支援できる可能性があります。一方、AIに任せられる業務が増えても、人間による判断は欠かせず、最終的な責任は人間が担うべきだと語りました。

LINE WORKS|現場と本部をつなぐコミュニケーションDX

LINE WORKS株式会社は、「これからの警備会社を支えるコミュニケーションDX」をテーマに登壇。音声コミュニケーションアプリ「LINE WORKSラジャー」を中心に、警備現場における情報共有の課題が取り上げられました。

警備業務では、現場の警備員と管制担当者、現場責任者との連絡が欠かせません。一方で、電話や無線機、チャットなど複数の連絡手段が使われることで、情報の伝達や管理が複雑になる場合があります。特に、巡回中や緊急対応時には、スマートフォンに文字を入力することが難しく、音声による連絡が必要となる場面も少なくありません。

講演では、こうした課題への対応として、スマートフォンを無線機のように利用できる「LINE WORKSラジャー」の機能が紹介されました。複数チャンネルの音声を管理者が確認できる仕組みや、音声を文字起こしして記録する機能などを説明。従来の音声連絡をデジタル化することで、現場と本部の情報共有を支援する考え方が示されました。

警備業務では、緊急時に誰がどの情報を受け取り、どのように対応したかが重要になります。
こうした記録を残せることは、現場での情報共有や事後の確認にも役立ちます。

manebi|採用難の時代に求められる警備員教育のDX

株式会社manebiは、「人が育つ警備会社へ、警備員教育とDX」をテーマに講演しました。同社は、eラーニングを中心とした教育サービスを展開しており、警備業向けの教育にも取り組んでいます。講演では、警備員の高齢化や採用難を背景に、新たな人材の確保だけでなく、採用した人材を育成し、定着につなげることの重要性が語られました。

警備業界では、新任教育や現任教育など、警備員に対する継続的な教育が求められます。しかし、複数の営業所を持つ警備会社などでは、講師の確保や教育日程の調整、受講履歴の管理などが担当者の負担となる場合があります。

こうした課題に対し、manebiはeラーニングを活用した教育のデジタル化や標準化について紹介。教育内容を統一することと、受講状況を把握できる仕組みを整えることが重要だと言います。同じ科目であっても、営業所や担当者によって教え方が異なれば、教育の品質に差が生じる可能性があります。また、教育記録が紙などで分散していると、受講状況の確認にも時間がかかります。

講演では、教育の実施状況を確認できる環境を整えることや、教材を共通化することなどが、警備会社の取り組むべき課題として挙げられました。法定教育の座学はeラーニングに任せ、新しい現場に入る隊員へのフォローなど、人にしかできない教育に力を注げる体制を整えることで、人が育つ組織になっていくと説明しました。

アジラ|AIによる省力化と警備現場の業務改革

株式会社アジラの松田怜史氏は、「AIで変わる、警備業の未来」をテーマに講演。同社は、映像解析AIを活用したセキュリティシステム「AI Security asilla」を提供しています。講演では、警備業界におけるAI活用の動向とともに、実際の現場で業務効率化を進める際の課題が紹介されました。

アジラが強調したのは、AIシステムをひとつ導入すれば効率化できるものではなく、その効果を現場全体に広げるには業務全体を見直す視点が必要だという点です。警備業務は、モニタリング業務だけでなく、巡回、入退館管理、鍵の管理、異常発生時の対応など、多岐にわたります。そのため、一部の業務を自動化しても、ほかの作業が従来どおり残っていれば、現場全体の負担は十分に減らない可能性があります。映像解析AIに加え、警備ロボットや入退館管理システムなどを組み合わせ、現場全体の業務を見直すことの必要性が語られました。

例えば、カメラでモニタリングできる範囲については巡回方法を見直し、人による確認が必要な場所に重点を置くといった運用が考えられます。

また、省力化によって確保できた人員を別の現場へ配置し、新たな受注につなげるという事例も紹介されました。AIの活用を単なる人員削減ではなく、限られた人員を生かして事業を拡大するための手段として捉える考え方が示されました。

警備フォース|管制から給与・請求までバックオフィスを一元管理

最後に、主催のアトミックソフトウェア株式会社が、警備業向けクラウドシステム「警備フォース」を紹介しました。同システムは、警備員の配置や上下番確認といった管制業務から、給与・請求、法定備付書類の管理までを一元化するものです。

講演では、法定備付書類の管理機能や、隊員・現場情報の登録に対する導入支援などが紹介されました。また、現場別・隊員別の売上や経費、粗利などを把握できる経営分析機能も備えています。さらに、年末調整にも対応するなど、警備会社のバックオフィス業務を幅広くカバーしています。警備会社では、配置表や勤務実績、給与計算、請求業務などを別々の方法で管理しているケースもあります。警備フォースは、こうした情報を一元管理し、転記作業や確認業務の負担軽減を図る仕組みです。

また、2025年に正式リリースした「警備フォース」は、2026年7月に導入社数100社を突破しました。同社によると、導入社数は約半年で2倍以上に増加したといいます。今後については、利用企業から寄せられる声を開発に反映し、実際の警備業務に即した機能改善を続けていく方針を示しました。

編集部まとめ|警備業のDXは現場と経営の両面から

今回の「警備の未来フォーラム2026」では、危機管理、コミュニケーション、人材育成、AI、バックオフィスの5つのテーマを通じて、警備業界の課題と今後の方向性が示されました。各社の講演で共通していたのは、新しい技術の導入だけでなく、現場の業務や組織の運営方法も見直す必要があるという点です。

例えば、管制業務の効率化で事務作業を減らす一方、現場では警備員との連絡方法や巡回業務の見直しが求められます。また、人材の採用が難しい状況では、教育を充実させ、現在働いている警備員の定着につなげることも欠かせません。

今後、警備業界でAIやロボットなどの技術活用が進むなか、警備員が担う業務や働き方も変わっていく可能性があります。一方で、現場の安全確保や緊急時の判断など、人に求められる役割がなくなるわけではありません。技術に任せる業務と、人が担う業務をどう組み合わせるかが、これからの警備会社にとって重要なテーマとなるでしょう。

主催者によると、参加者からは「また開催してほしい」「自社の課題を考え直すきっかけになった」といった声も寄せられたといいます。

今回のフォーラムは、警備業のDXを単なるシステム導入として捉えるのではなく、限られた人員で警備品質を維持し、将来に向けてどのような経営や現場運営を目指すのかを考える機会となりました。

警備NEXT(警備ネクスト)では、今後も警備業界のDXや人材育成、働き方の改善などをテーマに、企業や現場への取材を続けていきます。

関連記事

TOP
CLOSE