警備会社のシニア採用|雇用率83.1%の調査から考える5つの実務

ホンネ調査

警備会社のシニア採用は、人手不足を補うための一時的な対応なのでしょうか。

株式会社マイナビが2026年7月8日に発表した「シニアバイトの採用に関する企業調査(2026年版)」によると、65歳以上のシニアバイトを雇用している企業は全体の61.0%でした。業種別では「警備・交通誘導」が83.1%で最も高く、清掃の76.4%、介護の70.3%を上回っています。

警備業では、シニア人材がすでに主要な担い手となっています。本記事ではマイナビの調査結果をもとに、警備会社におけるシニア採用の現状と、採用・配置・定着で確認したいポイントを解説します。

警備会社のシニア採用が広がっている背景

警備会社のシニア採用を考えるうえでは、警備業界の年齢構成を確認する必要があります。

警察庁の「令和6年における警備業の概況」によると、2024年末時点の警備員数は58万7,848人です。このうち60歳以上は約47.0%、65歳以上は約34.3%、70歳以上は20.9%を占めています。つまり、警備員のおよそ2人に1人が60歳以上、約3人に1人が65歳以上です。

警備会社にとってシニア採用は、人手不足を補い、現場の配置体制を維持するための重要な採用施策となっています。

ただし警備業界全体の高齢化が進んでいることを考えると、シニア人材だけに採用を依存することにも注意が必要です。若手・中堅採用を進めながら、シニア人材が長く安全に働ける環境を整えることが求められます。

警備・交通誘導のシニアバイト雇用率は83.1%

マイナビの調査は、アルバイト採用に関わる20~60代の採用担当者1,483人を対象に実施されたものです。

調査では65歳以上のシニアバイトを「雇用している」と回答した企業は61.0%となり、前年の57.9%から3.1ポイント増加しました。一方、直近半年間にシニアバイトを新たに採用した企業は34.9%で、前年から2.5ポイント低下しています。

業種別のシニアバイト雇用率は、次のとおりです。
• 警備・交通誘導:83.1%
• 清掃:76.4%
• 介護:70.3%
警備・交通誘導は、調査対象となった業種のなかで最も高い結果となりました。警備員の高齢者雇用が、業界に広く定着していることがうかがえます。

とはいえ、この調査における「警備・交通誘導」の回答者数や、施設警備、交通誘導警備、雑踏警備などの警備種別ごとの内訳は、公開されたプレスリリースでは確認できません。そのため、83.1%をすべての警備会社にそのまま当てはめることはできません。

調査結果は業界全体の傾向を把握する材料として捉え、自社の地域、警備種別、勤務条件、隊員構成と照らし合わせて判断する必要があります。

出典|シニアバイトの採用に関する企業調査(2026年版)

※本調査におけるハッスルシニアとは、65歳以上のシニアで、週30時間以上もしくは週5日以上アルバイトとして勤務し、働く意欲が高いシニアのこと。

警備会社におけるシニア人材活用は人手不足対策だけではない

マイナビの調査では、今後シニアバイトを採用したいと回答した企業は56.4%でした。

採用したい理由として最も多かったのは、「人手不足の解消・改善につながるから」の45.6%です。企業がシニア人材に期待する役割や能力では、「職場に特有の専門知識・専門スキル」が32.2%で最も高くなりました。警備会社でもシニア人材を人数確保のためだけに採用するのではなく、それまでの職務経験や対人対応力を生かせる可能性があります。

出典|シニアバイトの採用に関する企業調査(2026年版)

例えば、次のような経験は警備業務でも活用できます。
• 接客業で培った来訪者への対応力
• 工事・物流現場で得た安全確認の経験
• 管理職経験による責任感や周囲への配慮
警備未経験者であっても、前職で培った対人対応力や安全意識を生かせる場合があります。

採用面接では警備経験の有無だけで判断せず、過去の仕事でどのような役割を担っていたのか、どのような場面で安全確認や対人対応を行っていたのかまで確認することが重要です。警備会社におけるシニア人材活用では、人数の確保だけでなく、過去の職務経験や対人対応力を生かせる業務を検討しましょう。

シニアバイト雇用企業の約7割で就業意欲の高い人材が勤務

調査では65歳以上のシニアバイトを雇用している企業のうち、週30時間以上または週5日以上働く意欲の高い「ハッスルシニア」がいる企業は69.8%でした。こうした人材については、「仕事の量」や「仕事の丁寧さ」が評価されていました。

一方、勤務意欲が高くても、長時間勤務や連続勤務を前提にせず、本人の希望や健康状態を踏まえて配置しましょう。

警備会社がシニア採用で確認したい5つのポイント

警備会社がシニア人材を安定した戦力として迎えるには、募集から配置、教育、定着までを一体で考える必要があります。

1.年齢ではなく業務との適性を確認する

シニア採用では、「高齢だからこの業務は難しい」「元気そうだから問題ない」と年齢や外見だけで判断しないことが大切です。同じ年齢でも、体力、健康状態、職務経験、希望する勤務日数は異なります。採用時には、現場で必要となる動作や勤務条件を具体的に伝え、本人と認識を合わせていきます。

例えば交通誘導警備では、長時間の立ち仕事、屋外での勤務、車両や歩行者の状況確認が発生します。施設警備では、巡回、階段の昇降、夜間勤務、モニター監視などが含まれる場合があります。

面接では、次の項目を確認します。
• 希望する勤務日数と時間帯
• 夜勤や長時間勤務への対応可否
• 立ち仕事や歩行を伴う業務への対応
• 業務を行ううえで配慮が必要な事項
• 通勤方法と現場までの移動負担
• 過去の職務経験と得意な業務

健康状態について必要以上に踏み込むのではなく、安全に勤務するために必要な範囲で確認し、本人の同意を得ながら配置に反映することが大切です。

2.仕事内容と勤務条件を具体的に伝える

「シニア歓迎」「未経験歓迎」と書くだけでは、実際の働き方は伝わりません。求人票では勤務時間、休憩、業務内容、現場環境、移動方法などをできるだけ具体的に記載します。

特に確認したいのは、次の内容です。
• 1日の実働時間と休憩時間
• 立哨(決められた場所に立って行う警戒・監視業務)、巡回、受付などの業務割合
• 夜勤や当務の有無
• 屋外・屋内の別
• 現場への直行直帰の可否
• 法定研修の実施方法

仕事内容を曖昧にしたまま採用すると、入社後に「想定より立ち仕事が多かった」「現場までの移動が難しい」といったミスマッチが生じます。応募を増やすことだけでなく、応募者が自分に合う仕事かどうかを判断できる求人情報をつくることが、早期離職の防止につながります。

3.体力と健康状態に応じて配置する

マイナビの調査ではシニア人材を雇用する際の課題として、「突発的な体調不良や通院等によるシフト調整の発生」が30.2%、「デジタルツールや新たな業務への対応に時間がかかる」が29.3%となりました。

警備会社では、採用後の一律配置ではなく、本人の特性に応じて現場を選ぶ必要があります。長時間の立哨が難しい人には休憩や交代を確保し、夜勤の負担が大きい人には日勤中心の配置を検討します。
屋外勤務では、暑さや寒さなど季節ごとの身体的負担にも配慮が必要です。

2026年4月1日から、改正労働安全衛生法に基づく「高年齢者の労働災害防止のための指針」が適用されています。これにより、事業者には高年齢労働者の労働災害防止に向けた措置を講じることが努力義務として求められています。指針では高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善や作業管理など、事業者が取り組むべき内容が示されています。

4.教育方法を一人ひとりに合わせる

シニアの未経験者を採用する場合も、警備業法に基づく教育を適切に行います。年齢や社会人経験が長いことを理由に、教育内容を省略することはできません。

一方で、理解や習得の速度には個人差があります。研修では一度に多くの内容を伝えるのではなく、業務手順を分けて説明し、実際の動作を確認しながら進めることが有効です。

デジタルツールを使用する場合は、端末の操作だけを説明するのではなく、「いつ」「何のために」「どの画面を使うのか」を業務の流れと合わせて伝えます。

例えば、次のような対応が考えられます。
• 操作手順を画面付きの資料にする
• よく使う機能から段階的に教える
• 研修後も定期的に理解度を確認する

「シニアはデジタルが苦手」と一括りにせず、経験と習熟度を確認したうえで支援することが重要です。

5.役割と評価基準を明確にする

シニア人材の定着には勤務上の配慮だけでなく、仕事への納得感も必要です。
マイナビの調査ではシニア人材の活躍に向けた施策として、「時給の引き上げ」が54.9%、「有給休暇の付与」が48.3%、「休息時間の十分な確保」が45.3%となりました。

一方、「役職や責任のあるポジションの付与」は32.8%にとどまっています。体調への配慮は欠かせませんが、「負担をかけない」という理由で補助的な業務だけを任せ続けると、本人の経験や意欲を生かせない場合があります。

警備経験や適性に応じて、次のような役割を検討できます。
• 新任隊員への現場ルールの共有
• 来訪者対応や受付業務
• 現場内の連絡・報告の補助
• 装備品や提出書類の確認
• 若手隊員への声かけ
• 現場責任者の補助

年齢ではなく、担当業務の遂行状況や勤務姿勢を基準に評価する仕組みを整えていきましょう。

高年齢者雇用安定法との関係も確認する

シニア採用を進める際は、新規採用だけでなく、自社で働く従業員の継続雇用制度も確認する必要があります。高年齢者雇用安定法第9条では、定年を65歳未満に定めている事業主に対し、次のいずれかの高年齢者雇用確保措置を講じることを義務づけています。

• 65歳までの定年引き上げ
• 定年制の廃止
• 希望者全員を対象とした65歳までの継続雇用制度の導入

2025年4月1日には、継続雇用制度の対象者を労使協定の基準によって限定できる経過措置が終了しました。ただし2025年4月からすべての企業に「65歳定年」が義務づけられたわけではありません。また法律が個々の労働者について65歳まで雇用する義務を直接課しているわけでもありません。事業主に対し、法定の雇用確保措置を整備することが求められています。

さらに70歳までの就業機会を確保するため、定年引き上げや継続雇用制度などの措置を講じることは努力義務となっています。
警備会社は外部からシニア人材を採用するだけでなく、現在働いている警備員が年齢を重ねても勤務を継続できる制度になっているかを確認する必要があります。

まとめ|警備会社のシニア採用は配置と定着まで設計する

マイナビの調査では、警備・交通誘導における65歳以上のシニアバイト雇用率は83.1%となり、調査対象業種のなかで最も高い結果でした。

警備会社が確認したいポイントは、次の3点です。
1.シニア人材は、警備業の人手不足を支える主要な担い手となっている
2.年齢だけで判断せず、経験、健康状態、希望条件と業務の適性を確認する
3.採用人数だけでなく、教育、配置、休憩、役割、評価まで設計する

警備業界では、すでに60歳以上の警備員が全体の約47%を占めています。シニア採用は特別な採用施策ではなく、警備会社の採用・人員配置を考えるうえで欠かせないテーマです。

まずは自社で働く60歳以上の警備員について、勤務時間、担当現場、健康面への配慮、教育方法、今後希望する働き方を確認してみてください。そのうえで、求人内容や配置基準が実態に合っているかを見直すことが、シニア人材の採用と定着につながります。

警備NEXT(警備ネクスト)では、警備業界の最新動向と実務に役立つ情報を継続的に発信しています。
※本記事は公開情報をもとに編集部が作成したものです。特定の企業の法的判断を示すものではありません。

参考文献

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