最新の犯罪統計から考える施設警備|警備会社が契約先の防犯体制を見直す5つのポイント

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自社が警備を担当する施設について、現在の犯罪発生状況と警戒体制を照らし合わせていますか。

警察庁の「令和7年の犯罪情勢」によると、令和7年の侵入窃盗の認知件数は4万7,233件で、前年から4,197件、9.8%増加しました。侵入窃盗は令和4年まで減少した後、増減を繰り返しており、直近では再び増加しています。

こうした数字は、すべての施設で警備方法を変更すべきことを意味するものではありません。しかし、契約時に定めた警戒計画や巡回方法、防犯設備が、現在の施設環境や犯罪リスクに適合しているかを確認するきっかけにはなります。

本記事では、最新の犯罪統計と警備業の概況、警備業法、個人情報保護法、防犯カメラのRBSS(優良防犯機器認定制度)などを踏まえ、警備会社が契約先の防犯体制を見直す際に確認したい5つの実務ポイントを解説します。

なぜ今、施設警備の防犯体制を見直すのか

警備会社にとって、契約先の施設を適切に警戒するためには、契約時に定められた警備内容を正確に実施することが基本です。一方で、施設の利用状況や周辺環境、設備、犯罪発生状況などが変化すれば、契約時と現在とでリスクの見え方が変わる場合があります。そこで重要になるのが、現在の警戒体制を定期的に確認することです。

犯罪件数の変化を「自社物件のリスク確認」に使う

警察庁の「令和7年の犯罪情勢」によると、令和7年の侵入窃盗は4万7,233件でした。令和6年は4万3,036件だったため、前年比9.8%の増加です。令和3年には3万7,240件まで減少していましたが、令和5年は4万4,228件、令和6年は4万3,036件、令和7年は4万7,233件となっています。

ただし、この統計だけから「施設の侵入リスクが一律に高まった」と判断することはできません。
犯罪の発生状況は地域や施設の種類、時間帯、管理状況などによって異なるためです。警備会社が統計を活用する際は、全国的な傾向をそのまま契約先に当てはめるのではなく、「自社が担当する施設では、どのようなリスクが考えられるか」を確認する材料として使うことが適切です。

例えば、夜間に人の出入りが少ない施設であれば、閉館後の出入口や搬入口、駐車場などを改めて確認する。店舗であれば、営業時間終了後の施錠状況や従業員出入口の管理を確認する、といった具合です。

「決められた警備を行う」だけで終わらせない

ここで注意したいのが、「提案型警備」という言葉の使い方です。

「提案型警備」は警備業法上の正式な業務区分ではありません。本記事では、契約で定められた警備業務を実施するだけでなく、契約先の施設環境やリスクを確認し、必要に応じて改善案を共有する考え方を便宜上「提案型警備」と表現します。

警備会社が契約先に対して、契約内容を超える作業を独断で行うことは適切ではありません。だからこそ、現場で気付いた事項を記録し、契約先と共有したうえで、必要に応じて警備計画や設備、運用方法の変更を協議する流れが重要になります。

これは、警備員個人の判断だけに頼るものではありません。現場から上がった情報を会社として整理し、契約先との協議につなげる仕組みが求められます。

犯罪統計と警備業の概況から考える施設警備の現状

警備会社が防犯体制を見直す際には、犯罪統計に加え、施設警備を支える警備業界の状況も確認しておきたいところです。
警察庁の「令和7年における警備業の概況」によると、令和7年12月末時点の警備業者数は1万949業者、警備員数は59万6,985人でした。前年と比較すると、警備業者は138業者、警備員は9,137人増加しています。

また、施設で発生する犯罪に目を向けると、令和7年の万引きの認知件数は10万5,135件で、前年から7.0%増加しました。発生場所別では、商業施設が5万6,652件と全体の半数以上を占めています。
施設警備を考える際には、侵入窃盗だけでなく、施設の種類に応じて発生しやすい犯罪や時間帯などを確認することも重要です。

施設ごとに想定される犯罪や警戒すべき場所は異なるため、警備会社が複数の施設を管理する場合には、それぞれの現場で把握した注意点や事案を組織として共有することも重要です。設備や記録も含めて情報を蓄積し、各施設の警戒体制の見直しにつなげる仕組みが求められます。

1号警備業務は施設を対象とした警戒・防止を担う

警備業法第2条第1項第1号では、事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地などの「警備業務対象施設」における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務を1号警備業務として定義しています。

警察庁の令和7年の概況では、1号警備業務を行う警備業者は6,975業者で、警備業者全体の63.7%でした。このうち、施設警備を行う業者は6,690業者で、警備業者全体の61.1%を占めています。

さらに、機械警備業者は512業者ですが、機械警備業務の対象施設数は352万5,422施設に上ります。前年から対象施設は10万1,952施設、2.9%増加しています。

機械警備も警備業法上の1号警備業務に含まれますが、警備員が常駐して施設を警戒する施設警備とは、業務の実施方法が異なります。警備業法第2条第5項では、機械警備業務を1号警備業務に該当する業務として定義しています。

つまり、施設の防犯体制を考える際は、有人警備と機械警備を単純にどちらか一方へ置き換えるのではなく、契約内容や施設の特性に応じて、それぞれの役割を整理する必要があります。

防犯設備と関係法令から確認したいポイント

犯罪リスクへの対応を考えるとき、警備員の巡回だけに目を向ける必要はありません。防犯カメラや記録装置、照明、出入口の管理など、施設側の設備・運用も含めて確認することが重要です。

RBSSは防犯カメラを選ぶ際の技術的な参考基準

防犯カメラについて確認しておきたいのが、公益社団法人日本防犯設備協会の「RBSS(優良防犯機器認定制度)」です。RBSSは法律で定められた設備基準ではなく、日本防犯設備協会が防犯機器について一定の性能・機能を確認し、認定する制度です。

例えば、防犯カメラについては、カメラの性能だけでなく、デジタルレコーダーについても記録画質、記録レート、記録時間、記録画像の取り出し、日時検索、機器異常確認などの基準が示されています。
そのため、警備会社が契約先へ防犯カメラの改善を提案するときは、「高画質なカメラに交換しましょう」といった抽象的な説明だけで終わらせず、

  • 暗所でも必要な範囲を撮影できるか
  • 出入口などで逆光によって人物が確認しにくくなっていないか
  • 必要な期間の映像を保存できるか
  • 必要な日時の映像を検索・取り出しできるか
  • 機器異常を把握できる状態になっているか

など、実際の施設運用に沿って確認することが有効です。

RBSSを「法律上必須の設備」として説明するのではなく、防犯設備の性能を検討する際の認定基準の一つとして参考にすることがポイントです。

防犯カメラ画像や入退室ログでは個人情報の取扱いにも注意

防犯体制を強化する一方で、カメラ画像や入退室記録などの情報管理にも注意が必要です。

個人情報保護委員会は、防犯カメラによって特定の個人を識別できる画像を取得する場合、個人情報を取り扱うことになると説明しています。ただし、特定の個人を識別できるカメラ画像が、すべて直ちに「個人データ」に該当するわけではありません。 カメラ画像や入退室ログなどが個人データに該当する場合には、個人情報保護法第23条に基づき、漏えい、滅失、毀損の防止などのために必要かつ適切な安全管理措置を講じる必要があります。

安全管理措置には、組織的・人的・物理的・技術的な措置があります。カメラ画像を扱うシステムについても、誰がアクセスできるのか、どのように情報を管理するのかを整理する必要があります。

警備会社が契約先に設備改善を提案する場合も、「防犯性を高める」という目的だけでなく、画像やログを誰が管理するのか、保存・閲覧・取り出しのルールが定められているかまで確認すると、より実務的な提案になります。

警備会社が実践したい「防犯体制見直し」5つのポイント

ここまでの統計や法令、設備基準を踏まえると、警備会社が契約先の防犯体制を確認する際は、次の5項目から始めると整理しやすくなります。

1.警戒計画と現在の施設環境を照らし合わせる

最初に確認したいのは、現在の警戒計画が施設の実態と合っているかです。

例えば、契約時には使用されていなかった出入口が新設されていないか、搬入口の利用時間が変わっていないか、営業時間や従業員の出入りに変更がないかを確認します。

巡回についても、単に「以前からこのルートだった」という理由で継続するのではなく、現在の施設環境に照らして確認します。

ただし、巡回ルートや時間帯を警備会社の判断だけで変更するのではなく、契約内容や警戒計画を確認し、必要な変更について契約先と協議することが前提です。

2.死角と防犯設備の状態を再点検する

次に、防犯カメラが設置されている場所と、実際に警戒したい場所が一致しているかを確認します。特に、

  • 搬入口
  • 裏口
  • 駐車場
  • 建物の側面
  • 倉庫周辺
  • 夜間に照度が低下する場所

などは、昼間と夜間で見え方が変わる可能性があります。

カメラの画角だけでなく、照明、録画状態、保存期間、時刻設定なども確認します。必要に応じてRBSSの認定基準も参考にしながら、設備更新の必要性を契約先へ説明するとよいでしょう。

3.出入口・鍵・セキュリティログを確認する

防犯設備が整っていても、出入口の管理が適切でなければ、施設全体の警戒に影響します。そこで、鍵の貸し出し方法、キーボックスの利用状況、電子錠や入退室管理システムのログなどを確認します。重要なのは、警備員だけを確認対象にしないことです。

契約先の従業員、協力会社、清掃業者など、施設に出入りする関係者の管理方法も含めて確認すると、より具体的な課題を見つけやすくなります。

なお、入退室ログなどに個人情報が含まれる場合は、誰が閲覧できるのか、どのように保存するのかといった情報管理のルールも確認が必要です。

4.警備員教育に「何を見るか」を落とし込む

警戒体制を見直しても、現場の警備員に変更内容が伝わっていなければ、実際の警備には反映されません。そこで、警備員指導教育責任者などが中心となって、施設ごとの注意点を教育内容や現場指示に落とし込みます。

例えば、「搬入口を重点的に確認する」というだけではなく、

「通常と異なる時間帯に車両が出入りしていないか」
「扉やシャッターが通常と異なる状態になっていないか」
「周辺の照明や防犯カメラに異常がないか」

など、何を確認するのかを具体化します。もちろん、こうした確認項目も契約内容や現場の警戒計画との整合性を取る必要があります。

現場で得られた気付きは日報などに記録し、責任者が確認できるようにしておけば、単発の注意喚起で終わらせず、次回の警戒計画見直しにもつなげられます。

5.契約先に防犯体制の確認結果を共有する

最後は、確認した内容を契約先と共有することです。
例えば、防犯設備の死角、鍵管理上の確認事項、巡回中に発見した異常、施設環境の変化などを整理し、「現状」「確認された課題」「対応案」の3段階でまとめます。このような報告を定期的に行えば、警備会社が何を確認しているのかが契約先にも伝わりやすくなります。

また、設備変更や警備方法の変更が必要な場合も、いきなり現場の運用を変えるのではなく、確認結果をもとに契約先と協議できます。警備品質を可視化し、改善事項を共有することは、契約内容と実際の警備業務との認識を合わせるうえでも有効です。

まとめ|最新の犯罪統計を契約先の防犯体制見直しにつなげる

最新の犯罪統計を見ると、侵入窃盗は令和7年に4万7,233件発生し、前年から9.8%増加しています。もっとも、全国の統計だけを見て、すべての施設のリスクが同じように高まったと判断することはできません。

警備会社が取り組みたいのは、こうした公的な統計を契約先の施設環境と照らし合わせ、現在の警戒体制に見直す余地がないかを確認することです。

今回のポイントを整理すると、次の3点です。

  1. 犯罪統計は、契約先の施設が抱えるリスクを確認するための材料として活用する
  2. 警備員だけでなく、防犯カメラ、記録装置、出入口、鍵管理などを含めて防犯体制を確認する
  3. 確認結果を警備計画、現場教育、契約先との協議につなげ、継続的に改善する

まずは、自社が契約する主要な施設の警戒計画を取り出し、現在の巡回ルートや重点確認箇所が施設の現状と合っているかを確認してみてください。

そのうえで、防犯カメラの死角、出入口や鍵の管理、夜間の照明、現場での確認項目まで順番に点検すると、具体的な改善事項を整理しやすくなります。

犯罪統計は、それだけで警備方法を決めるものではありません。公的なデータを出発点として、自社が担当する施設の実態を確認し、契約先と改善点を共有する。その積み重ねが、現在のリスクに合わせた施設警備につながります。

警備NEXT(警備ネクスト)では、業界の法令動向や事案を継続的にウォッチし、現場に役立つ視点でお届けしています。

※本記事は公開情報をもとに編集部が作成したものです。特定の企業の法的判断を示すものではありません。

参考・出典


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