警備ロボットで警備員の仕事はどう変わる?|豊島区役所でAI見守りを実証

テクノロジー

警備ロボットやAIの導入が進むと、警備員の仕事はどのように変わるのでしょうか。
東京都豊島区は2026年9月9日から、区役所本庁舎1階ロビー・総合案内周辺などで、AI見守りシステムと自律移動型警備ロボット「SQ-2」の実証実験を開始しました。豊島区によると、東京23区の区役所では初めての取り組みです。

AI見守りシステムでは、白杖を利用する方や車いすを利用する方などを防犯カメラ映像からAIが検知し、職員への通知や優先案内につなげます。一方、警備ロボットでは自律走行や障害物回避、遠隔監視による倒れた人などの検知を検証します。

警備業界では人手不足への対応や業務の省力化が課題となるなか、こうした技術を現場でどう活用するかが注目されています。本記事では、豊島区役所の実証実験を例に、警備ロボットとAIによって警備員の業務がどう変わる可能性があるのか、導入時に確認したい運用面のポイントとあわせて解説します。

豊島区役所で警備ロボット実証が始まった背景

警備業界では、限られた人員で安全を確保しながら業務を続けるため、省力化やデジタル技術の活用が課題になっています。

警察庁は2025年12月、警備業を「省力化投資促進プラン」の対象業種に追加しました。同プランでは、2025年9月の有効求人倍率が警備業6.70倍、全職業1.10倍だったことなどを示し、警備業務の自動化・機械化・システム導入を進める方針を示しています。警備ロボットやバーチャル警備システム、警備ドローンなどを活用した施設警備業務の省力化も取り組みの一つに挙げられています。

こうした業界全体の動きのなかで始まったのが、豊島区役所の実証実験です。
豊島区では、AIをはじめとするデジタル技術を行政サービスの向上に活用する取り組みを進めています。今回の実証では、来庁者への案内支援と庁舎内の安全管理という異なる用途にAIとロボットを活用し、DXによる業務改善を検証します。
実証期間は2026年9月9日から12月8日までで、場所は豊島区役所本庁舎1階ロビー・総合案内周辺などです。

AI見守りと警備ロボットは何を検証するのか

今回の実証実験では、AI見守りシステムと警備ロボットがそれぞれ異なる役割を担います。

AI見守りシステムは来庁者の案内を支援

AI見守りシステムは、防犯カメラの映像から、白杖を保持する方や車いすを利用する方などをAIがリアルタイムで検知する仕組みです。検知した結果は職員に通知され、優先案内につなげる運用が検証されます。

ここで重要なのは、AIが「介助が必要かどうか」を判断する仕組みとして説明されているわけではない点です。公開されている実証内容では、対象となる来庁者をAIが検知し、その情報を職員による案内につなげる仕組みとされています。

つまり、AIが人の代わりに来庁者へ対応するのではなく、AIによる検知と人による案内を組み合わせることが今回のポイントです。

自律移動型警備ロボット「SQ-2」は巡回や安全管理を検証

警備ロボットには、SEQSENSEの自律移動型警備ロボット「SQ-2」が活用されています。
豊島区の発表では、今回の実証で検証する内容として、

  • 自律走行性能
  • 障害物回避性能
  • 360度カメラによる巡回と遠隔監視で、倒れた人を自動検知

が挙げられています。

また、360度カメラによる巡回と遠隔監視を行い、庁舎の安全管理の高度化と警備業務のDX化を検証します。
SQ-2は、3D LiDAR(レーザー光を利用して周囲の形状や距離を把握するセンサー)などを利用して自律移動する警備ロボットです。SEQSENSEの製品情報では、巡回・立哨・動哨などの警備業務を人と分担して行うことや、カメラによる映像のリアルタイム配信などが説明されています。

ただし、これらはSQ-2の製品としての機能であり、豊島区役所で今回すべての機能を検証しているという意味ではありません。今回の実証については、豊島区が公表している検証項目を基準に見る必要があります。

警備ロボットの導入で警備員の仕事はどう変わるのか

警備ロボットの導入では、警備員の仕事がどのように変わるのかが一つの論点になります。

今回の豊島区の実証は、AIによる検知を職員の案内につなげる仕組みや、ロボットによる巡回・遠隔監視などが検証されています。こうした実証内容からは、機器による検知・巡回と、人による確認・判断・対応をどのように組み合わせるかが、今後の運用を考えるポイントの一つになると考えられます。

例えば、ロボットが施設内を巡回し、倒れた人などを検知した場合、運用方法によっては その情報をもとに警備員が現場を確認することが考えられます。

従来、警備員が自ら巡回して確認していた業務の一部を機器が担えば、警備員は検知後の現場確認や来庁者への対応など、人による判断が必要な業務に時間を振り向けられる可能性があります。

もちろん、これは豊島区の実証結果として確定したものではありません。実証実験は、実際の環境で技術や運用方法を検証する段階です。

したがって、今回の取り組みから読み取れるのは「警備員が不要になる」ということではなく、警備業務の一部を機械が担った場合、人と機械の役割分担をどう設計するかが重要になるという点です。

警備員に求められる役割も変化する可能性

警備ロボットやAIを活用する現場では、警備員が機器から得られた情報を確認し、必要な対応につなげる場面が増える可能性があります。

例えば、

  • ロボットやシステムから通知された情報を確認する
  • 必要に応じて現場へ向かう
  • 来庁者や施設利用者へ声をかける
  • 状況に応じて施設側へ連絡する
  • 機器では判断しにくい状況を人が確認する

といった役割です。

警備員の仕事が単純に「巡回から監視へ」置き換わるのではなく、機器から得られた情報をもとに現場を判断する役割が生じる可能性があります。

一方で、どの業務を機器に任せ、どこから人が対応するのかは施設ごとに異なります。導入すれば自動的に省力化できるわけではなく、実際の警備体制に合わせた運用設計が必要です。

警備会社がDX導入前に確認したい3つのポイント

警備ロボットやAIを自社の受託施設で活用する場合、機器の性能だけを見るのでは十分ではありません。

1.検知後の対応フローを決める

最初に確認したいのが、機器が何かを検知した後の対応です。

例えば、
「誰が通知を受けるのか」
「誰が現場を確認するのか」
「施設側への報告は誰が行うのか」
「機器が停止した場合はどうするのか」

といった流れを事前に決めておく必要があります。

ロボットが巡回していても、検知後の対応が決まっていなければ、警備業務全体の省力化にはつながりません。

2.施設環境と警備業務の相性を確認する

ロボットを導入する場合は、施設の構造や利用状況も確認する必要があります。
例えば、通路の幅や段差、人の往来、エレベーターなどの設備、通信環境などです。特に庁舎や商業施設など、不特定多数の人が利用する場所では、時間帯によって混雑状況が変わります。そのため、実際の巡回ルートや混雑時間帯を踏まえ、「どの業務なら機器を活用しやすいか」を検討することが重要です。

3.警備員への教育と運用ルールを整える

新しい機器を導入すると、警備員にも新しい業務が発生します。
端末の操作方法を覚えるだけでなく、通知を受けたときの判断や、機器に不具合が生じた場合の対応なども確認しなければなりません。

そのため、導入前に操作研修や現場訓練を行い、実際の警備業務に組み込める状態を作る必要があります。また、防犯カメラなどの映像を利用するシステムでは、利用目的や情報の取り扱いについても確認が必要です。

今回の豊島区のAI見守りシステムも、防犯カメラ映像から対象となる来庁者を検知し、職員への通知や優先案内につなげる仕組みとして実証されています。AIを導入する場合は、技術面だけでなく、どの情報を何のために利用するのかという運用面まで確認することが欠かせません。

「人を減らす」だけではない警備DXの考え方

警備ロボットを導入するとき、まず人件費の削減を考えるケースもあるでしょう。
しかし、警備DXの効果は、人員削減だけで判断する必要はありません。

警察庁の省力化投資促進プランでは、警備業の省力化について、生産性向上だけでなく、労働災害防止につながる自動化・機械化・システム導入も推進しています。2029年度までに警備業の労働生産性を2024年度比25%向上させることも目標として掲げています。

そのため、警備会社が導入効果を検討する際には、

  • 巡回・監視業務の負担をどれだけ減らせるか
  • 警備員が現場対応に使える時間を確保できるか
  • 機器導入後も安全な警備体制を維持できるか
  • 教育や運用変更にどの程度の負担が生じるか

といった複数の視点から検討する必要があります。

いきなりロボットを導入するのではなく、現在の受託業務のなかで「機械化できる業務」と「人が対応すべき業務」を整理することから始める方法もあります。

まとめ|警備ロボット実証から考えるこれからの警備員の仕事

豊島区役所で始まった警備ロボット実証は、AIやロボットを警備・庁舎運営にどう組み込めるかを検証する取り組みです。

今回の実証では、AI見守りシステムが白杖を利用する方や車いすを利用する方などを検知して職員への通知につなげる一方、警備ロボット「SQ-2」では自律走行、障害物回避、遠隔監視による倒れた人などの検知を検証します。

ここから警備会社が考えたいポイントは3つあります。

  1. 機器が担える業務と、人が担う業務を分けて考える
  2. 検知後の現場確認や報告など、人による対応フローを事前に決める
  3. 導入効果を人員削減だけでなく、生産性・安全性・業務負担の面から検証する

警備ロボットやAIは、導入すればすぐに警備員の仕事を置き換えられるものではありません。実際の現場では、施設環境や契約内容、警備員の配置、機器の性能などを踏まえた運用設計が必要です。

まずは自社の受託施設で、現在の巡回・監視業務のうち「機器で補助できる業務」と「人による判断が必要な業務」を整理してみることが、警備DXを検討する第一歩になります。

豊島区役所で始まった実証実験の今後の結果が、施設警備における人とテクノロジーの役割分担を考える材料の一つになりそうです。

警備NEXT(警備ネクスト)では、業界の法令動向や事案を継続的にウォッチし、現場に役立つ視点でお届けしています。

※本記事は公開情報をもとに編集部が作成したものです。特定の企業の法的判断を示すものではありません。

参考・出典

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