2026年の警備業法施行規則改正案で、雑踏警備の配置基準や検定合格警備員の扱いは変わるのでしょうか。
警察庁は2026年8月7日、「警備業法施行規則の一部を改正する内閣府令案」などについて、パブリックコメント(意見募集)を開始しました。今回の改正案では、警備員指導教育責任者資格者証や機械警備業務管理者資格者証、警備員等の検定に係る合格証明書などの申請書等の様式が見直されます。施行予定日は2026年10月1日です。
一方で、今回の改正案によって雑踏警備業務における検定合格警備員の配置基準そのものが変更されるわけではありません。
警備会社にとっては、2026年の改正案で変わる手続き・様式と、現在も適用されている雑踏警備の配置基準を切り分けて確認することがポイントになります。
本記事では、今回の警備業法施行規則改正案の内容を整理したうえで、現行の雑踏警備配置基準、1級・2級の検定資格、警備会社が確認しておきたい実務対応について解説します。
警備業法施行規則改正案2026年は何が変わる?
今回の警備業法施行規則改正案2026年の動きを確認する際、最初に押さえておきたいのは、現場の警備員配置人数を直接変更する改正ではないという点です。
警察庁が公表した意見公募要領では、今回の改正について「資格申請者の利便の増進を図るため、申請書の様式等の改正を行う」と説明しています。警備業法施行規則の改正案では、次の2種類の申請書等の様式が対象です。
- 警備員指導教育責任者資格者証の交付申請書等
- 機械警備業務管理者資格者証の交付申請書等
また、国家公安委員会規則の改正案では、さらに対象が広がります。
具体的には、
- 警備員指導教育責任者講習受講申込書等
- 機械警備業務管理者講習受講申込書等
- 技能検定員資格者証の交付申請書等
- 教習指導員資格者証の交付申請書等
- 駐車監視員資格者証の交付申請書等
- 警備員等の検定に係る合格証明書交付申請書等
の様式や、記載すべき事項が改正対象となっています。
つまり、雑踏警備業務に直接関係する部分としては、検定合格証明書の交付申請に関する様式が見直されることがポイントです。今回の改正案では、2026年10月1日の施行が予定されています。
今回の改正案と「配置基準」は別に確認する
「警備業法施行規則が改正される」と聞くと、雑踏警備の資格者配置も変更されるのではないかと考えるかもしれません。しかし、今回の改正案の概要を見る限り、配置基準の変更は改正内容に含まれていません。
そのため、2026年10月から雑踏警備の1級・2級資格者の配置人数が変わる、といった説明を、今回のパブリックコメントだけを根拠に行うことはできません。ここを混同しないことが、今回の改正案を読むうえで重要です。
改正案については資格関係の手続きや様式を確認し、配置については現在の警備業法や「警備員等の検定等に関する規則」に基づいて確認する。この2つを分けて考えると、制度変更の内容を整理しやすくなります。
現行の雑踏警備配置基準を確認
では、今回の改正案とは別に、現在の雑踏警備ではどのような資格者配置が求められているのでしょうか。
警備業法第18条では、専門的な知識・能力を必要とし、事故が発生した場合に不特定または多数の人の生命、身体または財産に危険を生じるおそれがある警備業務について、国家公安委員会規則で定めるところにより、検定合格警備員を配置する仕組みが定められています。雑踏警備業務も、その対象となる業務の一つです。
「警備員等の検定等に関する規則」では、雑踏警備業務を、警備業法第2条第1項第2号に規定する警備業務のうち、人の雑踏する場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務で、雑踏の整理に係るものとしています。
配置基準については、警察庁の制度を踏まえた神奈川県警察の説明が分かりやすく整理されています。
現在は、雑踏警備業務を行う場所ごとに、原則として1級または2級の検定合格警備員を1人以上配置します。
さらに、その場所が雑踏警備業務の実施上、2以上の区域に区分される場合には、それぞれの区域に1級または2級検定合格警備員を1人以上配置し、加えて、その場所全体を統括する1級検定合格警備員を1人以上配置する仕組みです。
整理すると、次のようになります。
| 状況 | 必要となる資格者配置 |
|---|---|
| 1つの場所で雑踏警備を行う | 1級または2級を1人以上 |
| 1つの場所を複数区域に区分する | 各区域に1級または2級を1人以上 |
| 複数区域に区分する場合 | 上記に加えて1級を1人以上 |
ここで注意したいのが、「イベントの規模=必要な資格者数」ではないということです。
配置基準を考える際には、単純な来場者数だけではなく、雑踏警備を行う場所をどのように区域分けするかが関係します。
雑踏警備の「区域」はどう考える?
雑踏警備の配置基準を理解するうえで、重要になるのが「区域」です。
神奈川県警察は、区域を特定する際の考慮事項として、
- 雑踏警備を行う場所の広さ
- 予想される雑踏の状況
- 従事する警備員の人数・配置状況
- 情報通信技術の利用状況
- その他の事情
を挙げています。ここでいう情報通信技術には、カメラやセンサー、小型無人機、画像認識・人工知能を利用したプログラム、通信機器などが含まれます。
したがって、区域設定は「会場を機械的に何分割するか」という考え方ではありません。
例えば警察の具体例では、球場のゲートについて、来場者が多いゲートを1ゲートで1区域とし、比較的来場者が少ない複数のゲートをまとめて1区域とする考え方が示されています。スタンドについても、通路の状況や指定席・自由席の違いなどを踏まえて区域を分けています。
つまり、区域の設定は、実際の雑踏の発生状況や警備体制を踏まえて考えるものです。
警備会社が配置計画を作る場合も、「会場が大きいから区域を増やす」「人数が多いから資格者を増やす」と単純化するのではなく、どこで人が集まり、どの範囲を一つの警備単位として管理するのかを確認する必要があります。
大規模イベントだけが配置基準の対象ではない
もう一つ、警備会社が注意したいのが、雑踏警備の配置義務を「大規模イベントだけのルール」と考えないことです。
神奈川県警察の質疑応答集では、雑踏事故はイベントの種類や規模、屋内・屋外の別、人口密度の平均値などにかかわらず、群衆の動線上にボトルネックが生じたり、群衆の心理状況が変化したりすることで発生し得るため、イベントの規模によって検定合格警備員の配置義務の有無を分けるのではなく、すべての雑踏警備業務について検定合格警備員を配置する必要があると説明しています。
これは実務上も押さえておきたいポイントです。
「小規模だから資格者配置は不要」と一律に判断するのではなく、まずその業務が警備業法上の雑踏警備業務に該当するかを確認する。そのうえで配置基準を確認するという順番になります。
イベント警備でも「雑踏警備」とは限らない
「イベント警備」という名称だけで、すべての業務を雑踏警備業務として扱うわけではありません。
神奈川県警察の質疑応答集では、イベント等に伴う警備であっても、施設警備業務や交通誘導警備業務が雑踏警備業務に包括されるものではないとしています。
例えば、コンサート会場で手荷物検査や施設内の巡回を行う業務は、通常は1号業務に該当します。
一方、同じ警備員が、混雑する入口で入場者の整列を呼びかけるなど「人の雑踏の整理」を担当している場合には、その部分について雑踏警備業務に該当することがあります。
交通誘導についても同様です。
イベント会場周辺で車両を誘導する業務は交通誘導警備業務に該当しますが、多数の観客が集まる交差点などで、人の雑踏を整理する業務を行う場合には、その部分が雑踏警備業務に該当することがあります。
さらに、同じ警備部隊が雑踏警備と交通誘導の両方を担当すること自体は可能ですが、両方の業務について配置基準が適用される場合には、それぞれの配置基準を満たす必要があります。
このため、イベント警備を受注する際には、契約書や警備計画の内容を確認し、実際に担当する業務が何に該当するのかを整理しておくことが大切です。
雑踏警備業務検定1級・2級の役割を整理
雑踏警備の資格者配置を考えるうえでは、1級と2級の役割も整理しておきたいところです。
警備業法第23条では、公安委員会が警備業務の種別に応じて検定を実施し、警備員または警備員になろうとする者の知識・能力を、学科試験と実技試験によって判定すると定めています。合格者には、警備業務の種別ごとに合格証明書が交付されます。
雑踏警備業務の検定も1級・2級に分かれています。
実務上の大きな違いとして押さえておきたいのが、複数の区域に分けて雑踏警備を行う場合の1級資格者の配置です。
神奈川県警察の説明では、各区域には、区域内の警備員を指導する者として1級または2級検定合格警備員を1人以上配置し、一つの業者が複数区域を担当する場合には、その複数区域全体を統括管理する者として1級検定合格警備員を1人配置する考え方が示されています。
このため、警備会社が資格者の手配をするときは、「資格者が何人いるか」だけではなく、「どの区域を担当させるのか」「複数区域を統括する1級資格者を確保できるか」まで確認する必要があります。
2026年改正案を警備会社はどう受け止める?

ここまで確認したように、今回の改正案と雑踏警備の配置基準は、直接結び付くものではありません。
では、警備会社は今回の改正案をどのように実務へ反映すればよいのでしょうか。
1.資格関係の申請様式を確認する
まず確認したいのが、2026年10月1日に予定されている様式変更です。
今回の改正案では、警備員指導教育責任者資格者証、機械警備業務管理者資格者証、警備員指導教育責任者講習、機械警備業務管理者講習、検定合格証明書など、複数の資格・講習関係手続きが対象となっています。
そのため、資格関係の申請を担当する部署では、自社で使用している書類が対象となるかを確認し、施行後の手続きに備えておくとよいでしょう。
2.現在の資格者配置を確認する
今回の改正によって配置基準が変わるわけではありません。
だからこそ、この機会に現在の案件を対象として、
- 雑踏警備業務に該当する業務はどれか
- どの場所が配置基準の対象となるか
- 1つの場所を複数区域に分ける必要があるか
- 各区域の1級・2級資格者を確保できているか
- 複数区域に区分する場合、必要な1級検定合格警備員を確保できているか
- 交通誘導警備など別の配置基準も適用されないか
を確認しておくと、配置計画の精度を高められます。
3.「資格者の人数」だけで配置計画を作らない
資格者配置では、単に資格者の在籍人数を確認するだけでは不十分です。
例えば、複数のイベントが同じ日に重なれば、資格者が社内に十分在籍していても、実際の配置に回せる人数が不足する可能性があります。また、複数区域を担当する案件では、1級資格者を全体の統括に配置する必要があります。
そのため、受注時点でイベントの日程や警備範囲、区域設定などを確認し、資格者の確保状況と照合することが実務上のポイントになります。
4.警備計画と契約内容を確認する
雑踏警備に該当するかどうかは、業務の名称だけで判断するものではありません。
神奈川県警察の質疑応答集でも、個々の警備業務について、委託契約書の内容や業務の実態などから雑踏警備業務の定義に該当するかを判断するとしています。
したがって、イベント警備を受注する際には、依頼者から示された業務内容と、実際に警備員が担当する業務を確認することが必要です。
「イベント警備」という一つの名称でまとめるのではなく、人の雑踏の整理、施設の警戒、車両の誘導などに業務を分けて考えることで、必要な資格や配置基準も整理しやすくなります。
5.正式な公布内容を確認する
今回の情報は、2026年8月18日時点ではパブリックコメントに付されている改正案です。e-Govでは2026年8月7日に意見募集が開始され、締切は9月5日23時59分となっています。
また、改正案では2026年10月1日の施行が予定されています。
したがって、現段階で社内に情報共有する際は「改正された」とするのではなく、「改正案が公示され、10月1日の施行が予定されている」という状態を明確にしておくことが適切です。
今後、正式に公布された際には、パブリックコメント時点の案から変更がないかを確認したうえで、社内の手続きや運用に反映しましょう。
まとめ|改正案と現行の配置基準を分けて確認しよう
2026年8月7日に公示された警備業法施行規則改正案では、資格申請者の利便性向上を目的として、警備員指導教育責任者資格者証や機械警備業務管理者資格者証、検定合格証明書などに関する申請書等の様式が見直されます。施行予定日は2026年10月1日です。
一方、今回の改正案によって、雑踏警備業務における検定合格警備員の配置基準そのものが変更されるわけではありません。
現行制度では、雑踏警備業務を行う場所ごと、またはその場所が2以上の区域に区分される場合には区域ごとに、1級または2級検定合格警備員を1人以上配置します。さらに、2以上の区域に区分される場合は、その場所ごとに1級検定合格警備員を1人以上配置します。
今回の記事で押さえておきたいポイントは、次の3つです。
- 改正案の内容:資格者証や検定合格証明書などの申請書等の様式が見直される
- 現行の配置基準:雑踏警備では、場所や区域に応じて1級・2級の検定合格警備員を配置する仕組みがある
- 警備会社の対応:今回の様式変更と、現在の資格者配置ルールを分けて確認する
まずは自社の資格関係手続を担当する部署で、2026年10月1日に予定されている様式変更を確認してください。
同時に、現場を管理する担当者は、現在受注している雑踏警備について、業務内容、区域設定、資格者配置が現行基準と合っているかを確認しておくとよいでしょう。
特にイベント警備では、「大規模だから資格者を増やす」という考え方だけではなく、実際にどの業務が雑踏警備に該当し、どこを区域として設定するのかを確認することが、配置計画を考える出発点になります。
今後、改正案が正式に公布された際には、申請様式などの変更内容を改めて確認し、自社の資格管理や申請手続きに反映していきましょう。
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※本記事は公開情報をもとに編集部が作成したものです。特定の企業の法的判断を示すものではありません。