街頭の防犯カメラは、専用のポールや建物だけに設置するものではありません。自動販売機に防犯カメラを組み込んだ「みまもり自販機」のように、既存設備を活用して地域の防犯に役立てる取り組みもあります。
防犯カメラの導入を検討する警備会社にとって、こうした設置方法の広がりは、顧客への提案にも関係するテーマです。重要なのは、カメラの種類だけでなく、設置場所や撮影範囲、映像の管理方法、事件・事故発生時の対応まで含めて防犯体制を考えることです。
本記事では、みまもり自販機を一例に、街頭防犯カメラの設置方法や自治体の導入事例を紹介します。あわせて、個人情報保護法との関係や、警備会社が導入・運用を提案する際に確認したいポイントを整理します。
防犯カメラの設置方法の一つ「みまもり自販機」とは
「みまもり自販機」は、防犯カメラを内蔵した自動販売機です。キリンビバレッジが展開する防犯カメラ付き自動販売機で、自治体や地域団体などと連携した設置事例があります。
藤沢市では、警察や自治会・町内会、企業などの関係団体と連携し、「防犯カメラ付き自動販売機(みまもり自販機)」の設置を推進しています。2021年度から設置実績があり、2024年には市内7台目、2025年には市内8台目の設置事例が公表されています。
設置条件や費用負担は事例ごとに異なる
みまもり自販機を防犯カメラの低コストな設置方法として一律に扱うことには注意が必要です。自治体によって設置場所や契約条件、費用負担の仕組みなどが異なるためです。
例えば下関市では、2026年8月に火の山公園へみまもり自販機を設置したことを公表しています。同市では、防犯カメラの設置・メンテナンスに係る費用をキリン側が負担する仕組みが紹介されています。
このように、警備会社が顧客へ導入を提案する場合は、「自販機だから安い」と考えるのではなく、設置条件や費用負担、管理主体を確認したうえで判断することが必要です。
街頭防犯カメラの設置方法は一つではない
街頭防犯カメラには、専用ポールを新設する方法のほか、既存設備を活用する方法もあります。
街頭防犯カメラの設置方法には、次のような例があります。
| 設置方法 | 特徴 | 確認したいポイント |
|---|---|---|
| 自販機一体型 | 自動販売機と防犯カメラを組み合わせる | 設置条件、撮影範囲、管理主体 |
| 電柱・信号柱など既存の柱 | 既存設備を活用 | 電源、所有者の許可・工事条件 |
| 専用ポール型 | カメラの位置や方向を設計しやすい | 設置工事、土地・道路関係の手続き |
| 建物・施設設備への設置 | 壁面や施設設備を活用 | 設置許可、所有者・管理者、設備仕様、撮影範囲 |
どの方法が適しているかは、設置場所によって異なります。
例えば、広い範囲を高い位置から撮影したい場合と、人の目線に近い位置から周辺を撮影したい場合では、必要なカメラの位置や画角が変わります。また、電源や通信環境が確保できるか、誰が設備を管理するのかといった条件も設置方法を左右します。
警備会社が顧客に提案する際は、最初から特定の製品や方式を前提にするのではなく、「何を守るためのカメラなのか」を確認することが出発点になります。
防犯カメラの設置では個人情報の取り扱いにも注意
防犯カメラを設置する際には、撮影した映像の取り扱いも確認する必要があります。個人情報保護委員会は、画像から特定の個人を識別できる場合、その画像情報は個人情報に該当すると説明しています。
また、防犯カメラを防犯目的で利用する場合には、利用目的をできる限り特定し、その範囲内でカメラ画像を利用する必要があります。
カメラの設置状況から本人が撮影されていることを容易に認識できない場合には、本人が容易に認識できるようにするための措置が必要です。具体例として、防犯カメラが作動中であることを入口やカメラの設置場所などに掲示する方法が示されています。また、外観から防犯カメラであることが分かる場合でも、掲示などによって撮影中であることを分かりやすくすることが望ましいとされています。
そのため、警備会社が防犯カメラの設置や運用に関わる場合は、撮影目的や範囲だけでなく、掲示、映像の保管・管理、閲覧権限なども確認する必要があります。
保存期間は設置主体や運用ルールを確認する
防犯カメラ映像の保存期間については、「1週間」「2週間」などと全国一律の日数が定められているわけではありません。個人情報保護委員会は、利用の必要性を考慮して保存期間を設定し、個人データを利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努める必要があるとしています。
そのうえで、自治体の条例やガイドライン、設置主体の運用規程、機器の仕様など確認する必要があります。
警備会社が映像管理を受託する場合には、契約内容と運用ルールを確認し、保存期間や消去方法、閲覧できる担当者などを明確にしておくことが重要です。また、事件や事故が発生した際に、警察などから映像提供を求められた場合の手続きについても、あらかじめ整理しておくと運用時の混乱を防ぎやすくなります。
自治体の導入事例から見る防犯カメラ設置の多様化
みまもり自販機の導入事例を見ると、設置目的や関係者の役割が地域によって異なることが分かります。
藤沢市では自治体・警察・地域・企業が連携
藤沢市では、市、警察、自治会・町内会、企業などが連携して、みまもり自販機の設置を進めています。
2024年には六会駅前自治会、市、藤沢北警察署、キリンビバレッジ株式会社の4者が協定を締結し、六会駅前自治会館敷地内にみまもり自販機を設置しました。また、2021年の導入事例では、事件時に画像が必要になった場合の役割分担も明確にされています。キリンビバレッジが記録媒体の回収・運搬を担い、町内会が画像提供の可否を判断し、警察が画像提供を依頼する仕組みです。
防犯カメラの設置では、機器そのものだけでなく、映像を誰が管理し、事件時に誰が対応するのかまで決めておく必要があることが分かります。
日高市では費用負担の仕組みも示されている
埼玉県日高市でも、みまもり自動販売機を活用した防犯活動が行われています。同市では、市、飯能警察署、キリンビバレッジ株式会社が防犯活動に関する協定を締結し、みまもり自動販売機の設置を進めています。
市の資料では、一定の売上が見込める場所について、カメラ設置費用などをキリンビバレッジ株式会社が負担する仕組みが示されています。
このような事例は、街頭防犯カメラの設置において、設備の購入者と設置・維持管理を担う主体が必ずしも同一ではないことを示しています。警備会社が導入を提案する際も、費用だけを見るのではなく、誰が設備を所有・管理し、どの範囲まで費用を負担するのかを確認する必要があります。
2026年にも新たな導入事例
2026年8月には、山口県下関市の火の山公園にみまもり自販機が設置されました。下関市では、2024年にキリンビバレッジ株式会社などと安全・安心なまちづくりに関する協定を締結しており、その取り組みの一環としてみまもり自販機の設置を進めています。同市の2026年の事例では、防犯カメラの設置・メンテナンスに係る費用をキリン側が負担する仕組みが示されています。
2026年時点でも、こうした既存設備を活用した防犯の取り組みが自治体で行われていることは、警備会社にとっても把握しておきたい動向です。
防犯カメラは「設置後の運用」まで考える

防犯カメラは、設置するだけで防犯体制が完成するわけではありません。奈良市では2026年度、自治会などが地域に設置する防犯カメラについて、カメラや録画装置の購入費、設置工事費、看板などの費用を対象とした補助事業を実施しています。
一方、自治会向け補助事業とは別に、奈良市自身が2026年度に発注する防犯カメラ設置事業の仕様書では、通信機器のセキュリティ、パスワード設定、映像データの暗号化、アクセスログの記録など、映像を安全に管理するための要件が示されています。こうした公的資料からも、防犯カメラは設置場所や機器だけでなく、設置後の管理方法まで考える必要があります。
警備会社が運用に関わる場合は、次の点をあらかじめ整理しておくとよいでしょう。
- 誰が映像を管理するのか
- 誰が閲覧できるのか
- 保存期間と消去方法をどうするのか
- パスワードなどの情報管理をどう行うのか
- 事件・事故発生時に誰が映像を確認・提供するのか
警備会社が防犯カメラを提案するときの5つの確認ポイント
防犯カメラの販売・設置・運用支援を行う警備会社の場合、機器の紹介だけでなく、現場の警備体制と組み合わせて検討することが重要です。
1.何を守るためのカメラなのか
まず確認したいのは設置目的です。侵入対策なのか、施設周辺のトラブル対策なのか、地域の犯罪抑止なのかによって、必要な設置場所や撮影範囲は変わります。
2.どこを撮影する必要があるのか
次に、既存カメラや警備員の巡回ルートを確認し、死角を把握します。人による巡回だけでは把握しにくい場所について、防犯カメラで状況確認を補完できる場合があります。ただし、カメラの位置によって撮影できる範囲は変わるため、設置前に現場を確認することが必要です。
3.電源・通信環境を確認する
設置場所によっては、電源や通信環境の確保が課題になります。専用ポールだけでなく、既存設備やソーラー・バッテリーなどを活用する方法も選択肢になりますが、方式ごとに設置条件や維持管理の負担が異なります。
4.映像の管理主体とルールを明確にする
防犯カメラの映像は、特定の個人を識別できる場合、個人情報として取り扱う必要があります。誰が映像を管理するのか、誰が閲覧できるのか、どの程度保存するのか、警察などから提供を求められた場合にどう対応するのかを事前に整理します。警備会社が管理業務を担う場合は、顧客との契約内容と実際の運用ルールにずれがないかも確認します。
5.カメラ映像を警備業務にどうつなげるか
最後に考えたいのが、人による警備との組み合わせです。例えば、カメラで異常を確認した場合に警備員が現場を確認するなど、映像を警備業務の判断材料として活用する方法があります。ただし、防犯カメラが設置されていることによって、警備員の巡回や現場対応が不要になるわけではありません。
カメラで何を確認し、その情報を誰がどのように利用するのかまで決めておくことが、実務上のポイントになります。
まとめ|防犯カメラは「設置方法」と「警備運用」をセットで考える
みまもり自販機は、自動販売機に防犯カメラを組み込むことで、既存設備を地域防犯に活用する取り組みの一例です。自治体や地域団体、企業、警察などが連携して設置する事例もあり、街頭防犯カメラの設置方法を考えるうえで参考になる取り組みです。
警備会社が防犯カメラの導入・運用を検討する際は、次の3点を確認しておきましょう。
- 現場の目的と死角を確認し、設置場所・方式を選ぶ
- 映像の管理者、保存期間、閲覧権限などの運用ルールを整理する
- カメラ映像を警備員の巡回や異常時対応にどうつなげるかを決める
防犯カメラは、設置しただけで防犯体制が完成する設備ではありません。設置場所や撮影範囲に加え、個人情報の取り扱い、映像管理、警備員による現場対応まで含めて考える必要があります。
まずは、自社が管理する施設や巡回エリアについて、現在の防犯カメラの死角と映像管理ルールを確認してみましょう。そこから現場に合った設置方法を検討することが、実効性のある防犯体制を考える第一歩になります。
警備NEXT(警備ネクスト)では、業界の法令動向や事案を継続的にウォッチし、現場に役立つ視点でお届けしています。
※本記事は公開情報をもとに編集部が作成したものです。特定の企業の法的判断を示すものではありません。
参考・出典
- 藤沢市「防犯カメラ付き自動販売機(みまもり自販機)」
- 藤沢市「防犯カメラ付き自動販売機(みまもり自販機)を設置します。~『安全・安心のまちづくりに係る協定』を締結します~」
- 日高市「防犯カメラ付き自動販売機(みまもり自動販売機)」
- 下関市「火の山公園への『みまもり自販機』の設置について」(2026年8月24日)
- 個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」
- 奈良市「令和8年6月1日受付開始 自治会等への防犯カメラ設置補助金交付事業についてのご案内」
- 奈良市「令和8年度奈良市防犯カメラ設置事業仕様書」
- 奈良市「自治会等が設置する防犯カメラ設置及び運用に関する奈良市ガイドライン」