【前編】月商1,000万円超の警備会社の経営判断とは?既存事業の限界から、警備事業で成長軌道に乗るまで

インタビュー

船井総研主催の警備・ビルメンテナンス研究会レポート

警備会社の経営者が本当に知りたいのは、目の前で起きている「数字と判断のプロセス」ではないでしょうか。
2026年1月23日、東京・八重洲で開催された警備・ビルメンテナンス研究会(主催:株式会社船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティング)では、まさにその“判断のリアル”が共有されました。研究会には約50名が参加し、会場は活気に満ちていたのが印象的です。

  • 月商や隊員数といった具体的な事業データ
  • どの局面で、どのような判断をしたのか
  • その結果、何がうまくいき、何につまずいたのか

この研究会では上記の内容が、経営者本人の言葉で語られます。今回参加した研究会での登壇者はどちらも月商1,000万円を超える株式会社プレシャスワーク株式会社セーフプラスの代表です。
この体験レポート前編では、まず研究会の空気感と実態を踏まえつつ、その中で語られた株式会社プレシャスワークがどのように警備事業を立ち上げ、月商1,000万円超の成長軌道に乗せたのかを、研究会で語られた内容をもとに紹介していきます。

数字と判断を照らし合わせ、自社経営を考える場

本研究会は、単なる講演会ではありません。同じ業界、近い規模感の経営者が集まり、自社と同じ状況ならどう判断するか、どこまでなら再現できるか、を重ね合わせながら話を聞く比較と検討の場として機能しています。
急成長企業の華やかな成功談ではなく、中小規模の警備会社が現実的に直面する課題と、その乗り越え方が共有される点に、この研究会の価値があるようでした。

既存事業だけでは、売上にも人にも限界が見え始めていた

出典|株式会社プレシャスワーク公式ホームページ

2026年1月23日に開催された研究会で事例が紹介された一社である株式会社プレシャスワークです。

登壇企業データ(研究会発表内容より)
  • 許認可:2024年10月
  • 月商:約1,400万円
  • 隊員数:48名

同社は、もともと販売促進を専門に行っているイベント会社でした。眞子社長は、警備事業に参入した背景について、既存事業だけでは売上に翳りが見え始めていたこと、そして働き手のためにも次の事業の柱が必要だったと説明しました。

  • いろんなところにいって仕事ができること
  • 事業構造がシンプルであること
  • 人が主体となる事業であること

この条件に合致した選択肢として約1年探した結果、警備事業への参入を決断します。

「正直、かなり泥臭い業界だった」警備事業立ち上げ初期

一方で、警備業界への参入は決して平坦ではありませんでした。

  • 初めて入る業界だった
  • 警備会社特有の縄張り意識への不安
  • 新規参入であることへの警戒感

眞子社長は立ち上げ初期を振り返り、「正直、かなり泥臭い業界だと感じた」と語りました。
特に苦労したのが採用です。

  • 求人を出しても、まったくリアクションがない
  • 採用が動き出すまでに約3か月かかった

採用で最も重視しているのは「スピード」

採用面で、最も意識しているのは応募への対応スピードです。

  • 応募があれば、5分以内に折り返す
  • 応募対応専任を置く
  • 面接は基本的に社長自身が対応

現在、面接は電話・オンライン・対面のいずれかを応募者に選んでもらう形を取っているそうです。
その際、条件説明の前に「会社としてどんなスタンスなのか」を最初に伝えることを重視していると語られました。

キーワードは「真面目なヒーロー」

プレシャスワークでは、以前から「真面目なヒーロー」というキーワードを掲げています。
同社が目指しているのは、「香川一、真面目な警備会社」。そのため隊員には、現場でのスキルだけでなく、小さな子どもが見ても「かっこいい」と感じる仕事姿勢を大切にしてほしいと考えています。

この考え方は採用の場面でも明確です。面接ではまずこの理念を伝え、共感してもらえるかどうかを重視しており、理念への理解がなければ採用や育成は難しいとしています。
「真面目なヒーロー」という価値観は、隊員の評価基準だけでなく、内勤スタッフとの価値共有にもつながっているとのことでした。

また、新任研修では経営理念に関する約15分間の動画を視聴してもらい、社内で定義した5つのヒーロー像を具体的に説明しています。このヒーロー像を目指すことが、そのままキャリアアップにつながる設計になっている点も特徴です。
理念を言葉だけで終わらせず、研修や評価に落とし込むことで、結果として離職を防ぐ仕組みの一つとして機能していることがうかがえます。

現場に落とし込み、実際に変わったこと

「真面目なヒーロー」という考え方は、理念として掲げているだけでなく、現場での振る舞いにも影響が出ているといいます。
警備の難易度が比較的低い現場であっても、挨拶や声かけ、周囲への気配りといったコミュニケーションの取り方が重要であり、そうした点が評価につながっていると感じる場面が増えているとのことでした。

実際に、クライアントからは「対応が丁寧」「安心して任せられる」といった評価を受けることが多く、業務内容そのもの以上に、人としての対応姿勢が評価されている実感があるといいます。
他にも班長からのクレームがないなど「真面目にやっている」「現場での立ち居振る舞いが良い」といった、周囲からの評価が自然と集まるようになってきたとのことでした。
理念を直接意識する機会が少ない現場だからこそ、日々の行動に落とし込まれているかどうかがこうした小さな変化として表れているのかもしれません。

月商1,000万円を超えた転機と、あえて売上を落とした経営判断

転機となったのは昨年6〜7月です。一気に仕事量が増え、月商1,000万円を超える水準に達しました。
一方で、売上の伸びと同時に経営と指導教育責任者の負荷も急激に高まり、数字上は成長しているものの、体制が明らかに追いついていない状態だったといいます。この状況を受け、眞子社長が選んだのは、「さらに売上を伸ばす」ことではなく、「一度立ち止まる」判断でした。

そこで8〜9月は意図的に売上を落とし、体制整備を優先。
売上を伸ばす前提として、制度・手続き・管理体制を整えておかなければ成長は続かない
研究会では、この判断が結果的にその後の安定成長につながったことが共有されました。

労務管理と入札準備が、次の成長を左右した判断

研究会では、労務面の整備が次の成長フェーズで重要だったという話にも言及がありました。

同社では警備業界への参入から約半年後、「次の売上規模を超えるために必要な体制づくり」としてプロキャス警備を導入。
労務管理の面で実務的に助けになったと振り返ります。
売上が伸び始めるタイミングでは現場対応や営業に目が向きがちですが、実際にはその裏で勤怠・労務・管理業務の負荷が一気に増えるのが警備事業の特徴です。
この段階で労務管理を後回しにすると、経営者や管制担当の負担が増し成長のブレーキになりかねません。

また、今振り返って「もっと早くやるべきだったこと」として挙げられたのが、入札参加資格の申請。
「入札の参加資格の申請を、もっと早くしておけばよかった」という言葉からは、仕事が増えてから準備するのでは遅いという実感がうかがえました。

前編まとめ|警備事業の成長は、判断の積み重ねで決まる

プレシャスワーク社の事例から見えてくるのは、警備事業は勢いや売上至上主義では続かないという現実です。

  • 市況をつかむまでの我慢
  • 売上を落としてでも体制を整える判断
  • 採用・理念・営業を一貫した考え方で運用する姿勢

これらの判断の積み重ねが、月商1,400万円・隊員48名体制という結果につながっています。
後編では、アパレル事業の縮小を決断し、警備事業へ軸足を移した株式会社セーフプラスの事業転換事例を紹介します。

船井総研が主催する警備・ビルメンテナンス企業の経営者向けの継続的な会員制勉強会は、「経営者のみ・初回のみ」と条件が合えばお試しで無料参加することも可能です。
次回は2026年3月2日(月)11:00~16:30に開催予定。ぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。

警備NEXT(警備ネクスト)では、引き続き警備業界のDXや働き方改善に関する調査・取材を行い、現場と経営をつなぐ情報を発信していきます。

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