「ファン付き作業着を着ていても暑い——」近年の猛暑環境の中で、そう感じる警備員は少なくありません。
警備業界ではここ数年、ファン付き作業着の導入が進み、夏場の熱中症対策として広く活用されています。一方で、高温多湿の環境や長時間の屋外業務では、さらなる暑熱対策を検討する動きもみられます。
特に交通誘導警備やイベント警備では、直射日光の下で長時間勤務するケースも多く、暑さ対策は重要な課題の一つです。こうした中、身体を直接冷やす「冷却装備」への関心も高まっています。
今回、日本生まれのサポーター専業ブランド「MEDIAID(メディエイド)」を展開する日本シグマックス株式会社は、保冷剤を活用した冷却ベストの新製品を発表しました。これは、猛暑下で働く現場作業者の身体負担軽減を目的としており、建設・物流・警備など屋外業務を想定した製品です。
本記事では、今回発表された保冷剤ベストの特徴を紹介しながら、警備業界で冷却装備の活用が注目される背景について解説します。
警備業界の熱中症対策は“組み合わせ型”へ
警備業界の暑熱対策は、この数年で大きく変化しています。以前は、水分補給や塩分補給といった基本的な対策が中心でした。しかし現在は、ファン付き作業着や冷感インナー、ネッククーラーなどの暑熱対策用品を導入する企業も増えています。

厚生労働省によると、2024年の職場における熱中症による死傷者数(休業4日以上)は1,257人、死亡者数は31人となっており、職場での熱中症対策の重要性は高まっています。特に交通誘導警備では、直射日光を受けながら長時間立哨するケースも多く、アスファルトの照り返しによって体感温度が上昇しやすい環境にあります。
加えて、ヘルメットや安全ベスト、無線機など複数の装備を身につけるため、身体に熱がこもりやすいという特徴があります。こうした背景から、ファン付き作業着は多くの警備会社で暑熱対策の一つとして活用されています。
一方で、高温多湿の環境ではファン付き作業着だけでは十分な冷却効果を感じにくい場合もあり、近年は身体を直接冷やす冷却装備への関心も高まっています。その一つとして登場しているのが、今回の保冷剤ベストです。
新たに発売された保冷剤ベストとは

今回、 日本シグマックス株式会社 が発表した新製品は、保冷剤を内蔵して使用する冷却ベストです。
特徴は、保冷剤によって身体を直接冷却できる点にあります。今回の製品では、暑熱環境でも冷却効果が長時間持続する専用保冷剤を採用しています。リリースによると、保冷剤を多層構造の断熱シートで覆うことで、40℃環境下でも4℃〜10℃の冷却面温度を約4時間維持できる仕様となっています。
また、保冷剤の配置にも工夫があります。

環境省では、首の両側や脇の下、足の付け根など太い血管が通る部位を冷やすことが有効と紹介しています。今回の製品では、脇下と背中に合計4個の保冷剤を配置する構造を採用しています。単なる冷却ベストではなく、冷却部位を意識した設計が特徴です。
さらに、バッテリー不要という点も大きな特徴です。近年は電動ファン付き製品も普及していますが、今回の製品は保冷剤のみで冷却を行うため、電源を必要としません。
また、着用感にも配慮されています。伸縮性のあるパワーメッシュ素材を採用することで、薄さ・フィット感・動きやすさを両立し、長時間の着用を想定した仕様となっています。
近年はさまざまな暑熱対策製品が登場していますが、本製品は「直接冷却」と「長時間の冷却持続」を特徴とした製品として展開されています。
警備業界で「冷却装備」が重要になっている理由
警備業務は、一般的な屋外作業とは異なる特徴があります。
例えば交通誘導警備では、工事車両や歩行者の安全確保を行うため、炎天下であっても一定時間その場を離れられないケースがあります。直射日光に加え、アスファルトの照り返しを受ける現場も多く、暑熱環境の影響を受けやすい業務の一つです。
また、警備業界では高齢化も進んでいます。警察庁「令和6年における警備業の概況」によると、警備員の47.0%が60歳以上となっており、熱中症リスクへの対応はこれまで以上に重要な課題となっています。
さらに、2025年6月からは職場における熱中症対策の強化が義務化され、事業者には熱中症発生時の対応手順の整備や周知などが求められるようになりました。
警備会社には、WBGT(暑さ指数)の確認、休憩管理、水分・塩分補給、装備の見直しなど、さまざまな熱中症対策が求められています。その中で、今回のような保冷剤ベストは、暑熱環境下で働く隊員の身体負担軽減を支援する装備の一つとして注目されています。
暑熱対策は「支給する」から「現場に合う」へ
警備業界では、ファン付き作業着や冷感インナー、ネッククーラー、保冷剤ベストなど、さまざまな暑熱対策製品が登場しています。
それぞれ特徴が異なるため、現場環境や業務内容に応じて選択することが重要です。例えば、長時間屋外で勤務する交通誘導警備と、施設内を中心に勤務する施設警備では、求められる機能や装備が異なる場合があります。
今回紹介した保冷剤ベストも、身体を直接冷却できることやバッテリーを必要としないことが特徴です。今後も警備業界では、現場の状況に応じて複数の暑熱対策を組み合わせながら、安全な作業環境づくりを進めていくことが求められるでしょう。
まとめ|警備業界の暑熱対策は「組み合わせ」の時代へ
今回発表された保冷剤ベストは、暑熱環境下で働く作業者向けの新たな暑熱対策製品の一つです。
警備業界では、交通誘導警備やイベント警備など、屋外で長時間勤務する業務も多く、熱中症対策の重要性が高まっています。特に近年は、ファン付き作業着や冷感インナー、ネッククーラーなど、さまざまな暑熱対策製品が活用されています。
今回の保冷剤ベストは、身体を直接冷却できることやバッテリーを必要としないことが特徴です。今後も警備会社には、現場環境や業務内容に応じて適切な暑熱対策を組み合わせながら、安全な作業環境づくりを進めていくことが求められるでしょう。
警備NEXTでは今後も、警備業界の熱中症対策・安全装備・現場改善に関する最新情報を継続的に発信していきます。
参考文献・出典
〇日本シグマックス株式会社リリース「制限の多い労働環境でも使える熱中症対策製品「メディエイド アイシングギア 保冷剤ベスト」を6月5日より新発売」(2026年5月29日公表)
〇令和6年における警備業の概況
〇環境省熱中症予防情報サイト(熱中症を疑ったときには何をするべきか)
〇令和6年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」