警備員の健康管理について、「健康診断を実施しているから問題ない」と考えていないでしょうか。
厚生労働省は、2026年10月1日から7日まで「全国労働衛生週間」を実施します。全国労働衛生週間は、職場の健康管理や労働衛生(働く人の健康を守るため、作業環境や健康管理などを改善する取り組み)を見直す期間として、毎年実施されているものです。2026年度で77回目を迎えます。
2026年度の実施要綱では健康保持増進、メンタルヘルス、長時間労働による健康障害の防止、高年齢労働者への対応、熱中症対策などが挙げられています。
警備業では夜間勤務や屋外勤務など勤務環境が現場ごとに異なり、高年齢の警備員も多く働いています。この記事では全国労働衛生週間2026の概要と、警備会社が日常の健康管理体制を見直す際のポイントを整理します。
全国労働衛生週間2026は10月1日から7日まで
2026年度の全国労働衛生週間は10月1日から7日まで実施され、9月1日から30日までは準備期間とされています。全国労働衛生週間は労働衛生に関する意識を高め、職場での自主的な取り組みを促して労働者の健康を確保することなどを目的としています。期間中は各事業場で職場巡視やスローガンの掲示、労働衛生に関する講習会などが行われます。
2026年度のスローガンは、「ひとりひとりが貴重な人材 心も体も健やかに みんな生き生き健康職場」です。
重要なのは、週間中だけ特別な取り組みを行うことではありません。実施要綱では、準備期間に日常の労働衛生活動を総点検することも示されています。警備会社でも、この機会に普段の健康管理や勤務管理に見落としがないか点検することがポイントです。
健康管理・メンタルヘルス・長時間労働をどう見直すか
2026年度の実施要綱では労働者の健康保持増進、長時間労働による健康障害の防止、メンタルヘルス対策などが重点事項として示されています。また高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境づくりも、取り組むべき課題の一つとされています。
健康診断は実施後のフォローまで
健康診断は受診して終わりではありません。実施要綱では、異常所見がある労働者について、業務内容を医師へ適切に伝え、医師の意見を聴いたうえで必要な事後措置を行うことが挙げられています。
警備会社では、再検査や精密検査が必要な警備員への案内に加え、夜勤や長時間勤務など実際の勤務内容と健康状態をあわせて見ることが必要です。
メンタルヘルスは相談しやすい環境まで整える
メンタルヘルス対策では、セルフケアや管理監督者によるラインケア、相談体制の整備、ストレスチェック結果の集団分析を活用した職場環境改善などが示されています。
警備員は施設や工事現場、イベント会場など、本社や営業所から離れて勤務する場合があります。そのため管理者から見えにくい負担を把握できるよう、日々の連絡や面談など相談につながる接点を設けておくことが求められます。
長時間労働だけでなく勤務間隔にも目を向ける
実施要綱では時間外・休日労働の削減や年次有給休暇の取得促進に加え、勤務間インターバル制度の導入も挙げられています。勤務間インターバルとは、勤務終了後から次の勤務開始までに一定の休息時間を確保する仕組みです。
警備業では、日勤・夜勤の組み合わせや急な欠員対応などで勤務が複雑になることがあります。月間の総労働時間だけでなく、前日の勤務終了時刻と翌日の勤務開始時刻を見て、十分な休息を確保できているかも確認したいところです。

警備会社で特に見直したい健康管理
全国労働衛生週間の重点事項を警備業の実務に置き換えると、健康状態に応じた配置や勤務管理、高年齢労働者への対応、現場ごとの健康リスクへの対策が重要になります。
警備員の約半数が60歳以上
警察庁の「令和7年における警備業の概況」によると、2025年末の警備員数は59万6,985人です。年齢別では、60~64歳が12.6%、65~69歳が13.1%、70歳以上が21.6%で、60歳以上は合計47.3%を占めます。全国労働衛生週間でも、高年齢労働者をはじめとした労働者の健康管理が取り組むべき課題として挙げられています。
ただし年齢だけで勤務可否を判断するのではなく、健康状態や業務内容、勤務環境を踏まえて考えることが必要です。長時間の立哨、屋外での交通誘導、夜間の施設警備など、警備業務によって身体への負担は異なります。
日々の体調と勤務状況をセットで把握する
警備会社では体調不良の申告を受ける仕組みだけでなく、その情報を配置や勤務管理に反映できているかも見直す必要があります。
急な欠勤が出れば代替要員の確保が必要になりますが、配置を優先して体調の悪い警備員を勤務させれば、本人の健康だけでなく、現場での安全確認や判断にも影響するおそれがあります。
健康状態を伝えやすい環境と、欠員が発生した際の対応体制をあわせて整えておくことが必要です。
治療と仕事を両立できる体制も見直す
全国労働衛生週間の実施要綱では、病気の治療を続けながら働く労働者への「治療と就業の両立支援」も重点事項として挙げられています。具体的には、会社としての基本方針の周知、相談窓口の明確化、社内の支援体制の整備、個人情報の適切な管理、休暇・勤務制度の整備などが示されています。
警備業では、勤務場所や時間帯、業務内容が現場によって異なります。そのため、治療中の警備員が勤務を続ける場合には、単に「働ける・働けない」で判断するのではなく、本人の健康状態や医師の意見を踏まえながら、どのような働き方が可能なのかを検討することが必要です。例えば、夜勤を含む勤務から日勤中心の配置へ変更する、長時間の立哨が続く現場を避ける、通院日に休暇を取得しやすくするなど、業務内容や勤務時間を調整できる場合があります。
一方で、健康情報は個人情報でもあります。必要以上に現場へ共有するのではなく、本人の意向や業務上必要な範囲を踏まえて取り扱うことも欠かせません。警備員が治療を理由に離職せず働き続けられる環境を整えるためにも、相談を受けたときの窓口や、配置・勤務を調整する際の社内フローをあらかじめ整理しておくことが求められます。
夏の熱中症対策を秋に振り返る
2026年度の実施要綱では、熱中症対策として、WBGT(暑さ指数)の把握、労働衛生教育、体調不良者を早期に発見するための連絡体制などに加え、夏季に実施した対策の振り返りも示されています。
交通誘導警備など屋外勤務がある会社では、暑さが落ち着いた時期に、今年の対応が現場で機能したかを整理しておくと翌年の改善につながります。
例えば、次のような項目を振り返ります。
- WBGT値をどのように把握していたか
- 休憩や水分・塩分補給を実施できたか
- 体調不良時の連絡体制が機能したか
- 発注者や元請けと休憩時間や作業環境について調整できたか
小規模事業場では外部支援の活用も
小規模な事業場では、社内だけで健康管理やメンタルヘルス対応の体制を整えることが難しい場合もあります。2026年度の実施要綱では、小規模事業場における産業保健活動の充実も重点事項の一つとされ、産業医・産業保健師等の活用や、地域産業保健センター(小規模事業場などを対象に、医師による面接指導や健康相談などの産業保健サービスを提供する地域の窓口)による支援の活用などが示されています。
自社だけで対応を完結させるのではなく、必要に応じて外部の専門的な支援につなげられる体制を把握しておくことも選択肢です。
全国労働衛生週間を機にまず見直したい5項目
全国労働衛生週間は、自社で定めている制度が実際の現場で機能しているかを点検する機会にもできます。
1.健康診断後のフォローまで行えているか
健康診断の結果を確認し、必要に応じて医師の意見聴取や就業上の措置につなげます。
2.体調変化を把握できる仕組みがあるか
本社や営業所から離れた現場でも、警備員が体調不良を伝えられる連絡方法を整えておきます。
3.勤務時間だけでなく休息も確保できているか
夜勤後から次の勤務までの間隔など、総労働時間だけでは見落としやすい負担にも目を向けます。
4.メンタルヘルスについて相談しやすいか
相談窓口の有無だけでなく、警備員が相談先を把握し、利用しやすい運用になっているかを点検します。
5.今年の熱中症対策を振り返ったか
現場で機能した対策と改善が必要な点を整理し、翌年度の準備につなげます。
制度を定めていても、現場で運用されていなければ十分とはいえません。本社で決めたルールと実際の勤務状況に差がないかまで見ることで、健康管理上の課題を把握しやすくなります。

全国労働衛生週間2026を日常の健康管理を見直す機会に
全国労働衛生週間2026は10月1日から7日までですが、健康管理はこの1週間だけ取り組むものではありません。警備会社では、健康診断後の対応、日々の体調把握、メンタルヘルス、勤務時間と休息、高年齢労働者や屋外勤務への配慮などを継続的に見直す必要があります。
2025年末時点で、警備員の47.3%が60歳以上です。警備員が長く働ける環境を整えるためにも、全国労働衛生週間を、自社の制度だけでなく現場での運用まで見直す機会として活用してみてはいかがでしょうか。
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※本記事は公開情報をもとに編集部が作成したものです。特定の企業の法的判断を示すものではありません。