警備員研修とは?新任教育・現任教育の違いと進め方を解説

人材育成

警備員教育は、「実施しているだけ」では評価されにくい時代になっています。

未経験者採用の増加や警備員の高齢化に加え、熱中症対策やカスタマーハラスメント対応など、現場で求められる対応も変化しています。その一方で、「新任教育と現任教育の違いが整理できていない」「法定教育が“受講させるだけ”になっている」と感じている教育担当者や現場責任者も少なくありません。

警備業では、警備業法に基づき警備員への教育が義務付けられています。しかし実際には、“教育を実施すること”が目的化し、内容が形骸化してしまうケースもあります。法定教育を実施するだけでなく、現場リスクへ対応できる内容になっているかも求められています。

本記事では、警備員研修の基本として、新任教育・現任教育の違い、教育内容、現場で定着しやすい進め方まで、警備業界の実務視点で解説します。

警備員研修とは?まず押さえたい基本

警備員研修は警備業法で義務付けられている

警備員研修は、警備業法および警備業法施行規則に基づく「法定教育」です。

警備業法第21条第2項では、警備業者に対し、警備員へ教育を行うとともに、必要な指導・監督を行うことが定められています。また、警備業法施行規則第38条第1項では、警備員教育の具体的内容が定められています。

警備業務は、人や施設の安全を守る仕事です。交通誘導警備(工事現場等で車両・歩行者を誘導する業務)では、警備員の判断ミスが第三者事故へ直結する可能性があります。また施設警備でも、不審者対応や防災対応など、現場で即時判断が求められる場面は少なくありません。そのため警備業界では、「現場へ出る前の教育」と「継続的な教育」の両方が重視されています。

警備業務ごとに必要な教育内容は異なる

警備業務は、警備業法上で以下の4区分に分かれています。

  • 1号警備:施設警備、巡回警備、保安警備、空港保安、機械警備など
  • 2号警備:交通誘導警備・雑踏警備
  • 3号警備:貴重品運搬警備、現金輸送など
  • 4号警備:身辺警備

施設警備では、受付対応や巡回、防災センター業務などに応じた対応力が求められます。一方、交通誘導警備では、工事車両や一般車両、歩行者を安全に誘導する必要があります。同じ「警備員」という職種でも、現場によって求められる判断や危険ポイントは大きく異なります。教育内容も、配属業務に応じて組み立てる必要があります。

“研修を受けただけ”では現場品質は上がらない

警備員研修で問われるのは、「受講したか」だけではありません。教育内容を現場で実践できる状態まで落とし込めているかが重要です。

交通誘導警備では、誘導位置が悪く車両の死角へ入ってしまったり、歩行者確認が遅れたりするケースがあります。無線共有が十分できておらず、現場全体の連携が崩れてしまうこともあります。施設警備でも、来館者対応でのクレームや巡回漏れ、不審者対応の遅れなど、教育不足が原因になるトラブルは少なくありません。

警備品質に問題が発生した場合、教育内容や指導状況が確認されることもあります。そのため現在の警備会社には、“法令対応のための教育”ではなく、“現場品質を維持するための教育”が求められています。

新任教育と現任教育の違いとは

新任教育とは

新任教育とは、新たに警備業務へ従事する警備員へ行う教育です。

警備業法施行規則では、警備業務に配置する前に必要な教育を実施することが定められています。

一般的な新規採用者の場合、新任教育は20時間以上実施する必要があります。なお、資格保有者や一定の警備業務経験者は、教育時間の短縮や一部免除が認められる場合があります。

新任教育は大きく、「基本教育」と「業務別教育」に分かれています。基本教育では、警備業法や基本動作、事故発生時対応、救急法など、警備員として必要な基礎知識を学びます。一方、業務別教育では、実際に従事する警備業務に応じた内容を行います。

交通誘導警備であれば、誘導灯の使い方や車両停止位置、片側交互通行、重機周辺での立ち位置など、現場で必要な動きを学びます。

新任教育の目的は、“警備員として安全に現場へ出られる状態”をつくることです。

現任教育とは

現任教育とは、すでに現場へ配置されている警備員へ継続的に行う教育です。警備業法施行規則では、現任教育を年度ごとに10時間以上実施することが定められています。これは単に教育時間を確保するためではなく、現場で必要な知識や安全意識を継続的に更新するためです。

新任教育が「現場へ出る前の基礎教育」であるのに対し、現任教育は、現場品質や安全意識を維持するための教育という位置付けになります。

警備業務は、経験年数が長くなるほど“自己流”になりやすい側面があります。交通誘導警備では誘導方法や無線報告が現場ごとに変わってしまったり、施設警備では巡回や来館者対応が形骸化してしまったりするケースもあります。

現任教育は、こうした“慣れ”による事故やトラブルを防ぎ、現場全体の認識をそろえる役割があります。あわせて、事故情報や現場ルールの変更点を継続的に共有し、認識を更新していくことも重要です。

新任教育と現任教育の違いを比較

新任教育と現任教育の大きな違いは、「対象者」と「目的」です。

新任教育は、警備員として働く前に必要な基礎教育です。一方、現任教育は、現場経験者に対して知識や安全意識を更新するための教育になります。

項目新任教育現任教育
対象新たに警備業務へ従事する警備員現場勤務中の警備員
実施タイミング配属前年度ごと
主な目的基礎習得品質維持・知識更新
教育時間20時間以上10時間以上

目的を整理せずに同じ内容を繰り返してしまうと、教育が形骸化しやすくなります。

新任教育・現任教育の進め方

新任教育は“現場を想像できるか”が重要

新任教育で多い課題の一つが、「座学中心で終わってしまうこと」です。

未経験者の場合、警備業法や専門用語だけでは現場をイメージしにくいケースもあります。交通誘導警備では、「片側交互通行を行う」と言われても、どの位置に立ち、どのタイミングで車両を停止し、歩行者へどう声を掛けるのかまで理解できていないことがあります。その状態で現場へ配置すると、誘導の遅れや周囲確認不足につながり、事故リスクも高まります。

そのため、現場写真や動画を使いながら教育を行うケースもあります。実際の現場映像を使いながら説明することで、未経験者でも理解しやすくなります。

新任教育では、現場配置後の動きをイメージできる状態まで落とし込む必要があります。

現任教育は“毎年同じ”にしない

現任教育では、「毎年同じ内容になっている」という課題も少なくありません。

実際の現場では、教育用DVDを流して終了したり、出席確認のみで終わったりするケースもあります。しかし現場環境や求められる対応は変化しています。

夏場の交通誘導警備では、警備員本人の体調不良だけでなく、判断力低下による事故リスクにも注意が必要です。空調服や水分補給だけでなく、体調異変時の対応まで教育へ組み込むケースもあります。現場によっては、外国人ドライバーとのコミュニケーションが必要になる場面もあります。

現任教育は、「去年と同じ内容を繰り返す場」ではありません。現場で起きている変化を共有し、事故やクレームを未然に防ぐための教育として更新し続ける必要があります。

“理解したか”まで確認する

警備員研修で見落とされやすいのが、「理解度確認」です。

教育を実施しても、隊員側が内容を十分理解できていなければ、現場では機能しません。特に高齢隊員では、「分かったつもり」のまま現場へ出てしまうケースもあります。

交通誘導警備では、「歩行者優先」と理解していても、実際の現場では工事車両への意識が強くなり、歩行者確認が遅れることがあります。

理解度確認として、小テストやロールプレイを取り入れるケースもあります。

例えば、「この状況ならどちらを先に誘導するか」「熱中症が疑われる隊員が出た場合、誰へ何を報告するか」など、現場を想定した確認を行うことで、理解度を把握しやすくなります。

また、ベテラン隊員ほど「自己流」になりやすい点も注意が必要です。経験年数が長い隊員でも、現場ルール変更や新しい安全対策を十分理解できていないケースはあります。

現任教育では、経験年数に関係なく認識をそろえていくことも必要です。

警備員研修でよくある課題

教育記録が形骸化している

警備会社では、教育を実施することだけでなく、「どのような教育を行ったか」を記録として残しておくことも重要です。

警備業法に基づく都道府県公安委員会による立入検査では、教育実施状況の確認が行われます。具体的には、実施日時や受講者、教育内容、教育担当者などが確認されるため、「教育はやっているが記録が整理されていない」という状態は避けなければなりません。

実際の現場では、出席表のみ保管しているケースや、数年前から同じ教材を使い続けているケースもあります。

しかし近年は、警備現場を取り巻くリスクも変化しています。現任教育でも、教育時間を満たすだけでなく、現在の現場課題に合った内容になっているかを見直す必要があります。

交通誘導警備でも、従来とは異なる対応が求められる場面が出てきています。教育内容を更新した際は、実施記録や教材も合わせて整理しておく必要があります。

高齢隊員・未経験者へ伝わりにくい

警備業界では、高齢隊員の割合が高くなっています。警察庁「令和6年における警備業の概況」によると、令和6年12月末時点の警備員数は58万7,848人で、60歳以上は47.0%、70歳以上は20.9%を占めています。

一方で現場では、「専門用語だけでは伝わりにくい」「紙資料だけでは理解が難しい」といった課題も少なくありません。“現場をイメージできていない”ことが原因で理解が定着しないケースもあるため、写真や動画を活用しながら教育を行うなどの工夫も必要です。

現任教育では、一度の研修で終わらせず、朝礼や現場共有の中でも継続的に伝えていく必要があります。

eラーニングが“受講だけ”になりやすい

近年は、警備業界でもeラーニングを導入する警備会社が増えています。背景にあるのが、人手不足や多拠点化です。複数現場を抱える警備会社では、「全隊員を一か所へ集めて教育すること」が難しくなっているため、動画教育やオンライン研修を活用し、場所を問わず教育できる体制を整える会社も増えています。

一方で、eラーニングは導入しただけで効果が出るわけではありません。「動画を流したまま別作業をしている」「本人以外が受講している」といった問題が起きるケースもあります。また、高齢隊員の場合は、スマートフォン操作そのものが負担になることもあります。

受講履歴だけでなく、内容を理解できているかまで確認することが大切です。確認テストや受講履歴管理を組み合わせ、理解度を確認する方法もあります。eラーニングは、教育を効率化する手段の一つとして運用していく必要があります。

新任教育・現任教育は“現場で活きる研修”が重要

警備員研修では、「新任教育」と「現任教育」の違いを理解し、それぞれの目的に合わせて実施することが重要です。

新任教育は、警備員として現場へ出るための基礎を身につける教育です。一方、現任教育は、現場品質や安全意識を維持し、変化する現場リスクへ対応していくための教育になります。

未経験者採用の増加や高齢化に加え、警備現場を取り巻く環境も変化しています。そのため法定教育を実施するだけでなく、実際の現場リスクへ対応できる教育体制も求められています。現場を想定した内容か、教材は更新されているか、理解度確認まで行えているかを確認しながら、教育内容を見直していきましょう。

まずは、自社の新任教育・現任教育が、現場実態に合った内容になっているか確認してみてはいかがでしょうか。

警備NEXT(警備ネクスト)では、警備業界の最新動向と実務に役立つ情報を継続的に発信しています。

参考文献

関連記事

TOP
CLOSE