警備業務の受発注をWeb上でつなぐサービスが登場し、利用者を増やしている事例があります。株式会社AIKは2026年9月、警備受発注プラットフォーム「マイガード」の登録数が3,000社(個人を含む)を突破したと発表しました。
警備業界では、人手不足への対応や案件ごとの人員確保など、受発注をめぐる課題が続いています。こうしたなか、案件の募集・応募や見積もり、契約に関するやり取りなどをWeb上で進める仕組みが登場しています。では、なぜ警備業務の受発注をWebでつなぐサービスが利用されるようになったのでしょうか。また、警備会社にとってWeb化は何を変えるのでしょうか。
本記事では「マイガード」を一つの事例として、警備業務の受発注がWeb化する背景と、警備会社が導入を検討する際に確認したい実務上のポイントを解説します。
警備会社の案件獲得もWeb化へ|その背景とは
警備会社の案件獲得では、既存顧客や取引先、協力会社などとの関係を通じて仕事を受注するケースがあります。一方で、警備を必要とする企業側から見ると、必要な人数や資格、日時、場所などの条件に合う警備会社を探し、見積もりや契約に進むまでには一定の手間がかかります。
特に警備業務では、単に人員を確保すればよいわけではありません。警備業務の内容によっては資格者の配置が必要となるほか、契約前後の書面交付など、警備業法に基づく手続きも必要です。こうした警備特有の受発注の煩雑さに対して、Web上で案件情報や契約に関するやり取りをまとめる仕組みが登場しています。
今回取り上げる「マイガード」も、その一例です。AIKによると、同サービスは警備案件の募集・応募、チャット、見積もりから契約までのやり取りなどをWeb上で行える警備受発注プラットフォームです。また、AIKは警備会社側の利用背景として、自社の強みを活かせる案件を選びたいというニーズや、急な増員が必要になった場合に協力会社を探したいというニーズを挙げています。
ただし、こうした内容はAIKがサービス利用の背景として説明しているものです。3,000社という登録数だけをもって、警備業界全体の受発注がWeb化した、あるいはWeb化率が高まったと判断することはできません。それでも、警備業務の受発注をオンラインでつなぐサービスに一定の登録が集まっていることは、警備会社の営業・受発注業務を考えるうえで注目すべき事例といえます。
「マイガード」登録3,000社突破で何が変わるのか

案件情報を探す方法が増える
Web型の受発注サービスでは、案件の場所や警備内容、必要人数、日時などの情報を確認しながら、自社で対応できる案件を探せます。
例えば、交通誘導警備(工事現場などで車両や歩行者を誘導する警備)を中心に請け負っている会社であれば、対応可能な地域や保有資格など、自社の条件に合う案件を探す際の選択肢になります。ただし、Web上で案件を見つけられることと、実際に受注できることは同じではありません。警備員の勤務状況、資格者の配置、現場までの移動時間、利益率などを確認したうえで判断する必要があります。
受発注に関する情報を一元管理しやすくなる
電話やメールなど複数の手段で案件情報をやり取りしている場合、担当者ごとに情報が分散することがあります。Web上で案件情報や連絡履歴を管理できれば、後から内容を確認しやすくなる点がメリットです。
「誰が、いつ、どの条件で依頼したのか」を確認できる状態を作ることは、案件の引き継ぎや社内確認の面でも役立ちます。
一方で、チャットやWeb管理を導入すれば認識違いがなくなるわけではありません。重要な条件については、契約書面などの正式な記録と照合する運用が必要です。
協力会社を探す選択肢にもなる
警備会社では、受注した案件について自社だけでは必要な人員を確保できない場面もあります。AIKは、こうした場合の協力会社・再委託先探しにも「マイガード」を利用できるとしています。
AIKは「マイガード」の機能として、警備会社同士で協力会社や再委託先を探せる仕組みを挙げています。ただし、Web上で協力会社を見つけられることと、再委託に関する実務上の確認が不要になることは別問題です。
再委託先を選定する際は、相手方が必要な警備業の認定を受けているか、担当する警備業務に必要な資格者や警備員を確保できるかなどを確認する必要があります。また、元の契約に再委託に関する条件が定められている場合は、その内容も確認することが重要です。
Web受発注でも警備業法上の手続きはなくならない
警備会社が受発注のWeb化を検討する際、特に注意したいのが「オンラインで契約できること」と「警備業法上の義務を満たすこと」は別である点です。
警備業法第19条では、警備業務の契約を締結しようとするとき、契約締結までに、契約の概要について記載した書面を依頼者に交付することを定めています。また、契約締結後には、契約内容を明らかにする書面を遅滞なく交付することも規定されています。さらに、第19条第3項では、一定の条件のもとで、書面の交付に代えて情報通信技術を利用する方法によって記載事項を提供できるとされています。つまり、警備会社がWeb上で契約手続きを進めること自体が禁止されているわけではありません。
ただし、電磁的方法によって書面の記載事項を提供する場合には、警備業法施行令第1条に基づき、あらかじめ使用する方法の種類・内容を示したうえで、依頼者から書面または電磁的方法による承諾を得る必要があります。また、承諾後に依頼者から電磁的方法による提供を受けない旨の申し出があった場合は、改めて承諾を得るまで電磁的方法で提供することはできません。
警備業法施行規則にも、電磁的方法による提供について、ファイルに記録された内容を依頼者が出力して書面を作成できることなど、具体的な要件が定められています。そのため、受発注システムを導入する場合には、「電子契約に対応している」という説明だけで判断するのではなく、警備業法第19条に基づく書面交付の要件をどのような方法で満たしているのかを確認することが重要です。
警備会社がWeb受発注を検討するときの4つの確認ポイント
Web型の受発注サービスは、導入すれば自動的に案件が増えるものではありません。警備会社が導入を検討する際は、自社の営業・受発注業務のどこに課題があるのかを整理することから始める必要があります。
1.現在の受発注業務にどれだけ時間がかかっているか
まず確認したいのが、案件を受けてから警備員を配置するまでの業務です。例えば、
- 案件情報の確認
- 見積もり作成
- 発注者との連絡
- 契約書面の作成・交付
- 警備員の確保
- 協力会社への依頼
- 日報などの管理
といった業務を洗い出します。
電話やメール、紙の書類など複数の方法に分散している業務があれば、Web化によって効率化できる部分がないか検討できます。
2.自社が受注したい案件を明確にする
Webで案件を探せるようになっても、自社の対応条件が整理されていなければ適切な案件を選ぶことはできません。対応可能な地域、警備種別、保有資格、対応可能な人数、勤務可能な時間帯などを整理しておくと、案件を選ぶ際の判断基準を作りやすくなります。
特に、資格者の配置が必要な業務では、単純な人数だけで受注可否を判断しないことが重要です。
3.受注後の配置まで考えて採算を確認する
案件を獲得できることと、利益が確保できることは同じではありません。現場までの移動時間や交通費、必要な警備員数、資格者の配置、勤務時間などを含めて採算を確認する必要があります。
Web上で近隣の案件を探せる場合でも、「近いから受注する」のではなく、自社の人員体制や利益率まで含めて判断することが重要です。
また、Web受発注サービスを利用する場合は、サービス利用に伴う費用も確認が必要です。「マイガード」はプラットフォーム利用料金を無料としていますが、警備会社には別途成約手数料がかかります。受注金額だけでなく、こうした費用も含めて採算を判断することが重要です。
4.Web化する業務と残す業務を分ける
受発注をWeb化する場合でも、すべての業務をシステムに任せる必要はありません。案件情報の共有や連絡履歴の管理など、Web化による効果が見込める業務と、担当者による確認・判断が必要な業務を分けることがポイントです。
特に契約内容や警備員の配置など、法令や現場条件に関係する事項は、システム上で処理できることだけを理由に確認を省略しないようにします。
警備会社にとってWeb化は「営業手段の一つ」として考える
警備会社の案件獲得もWeb上で行うサービスが登場するなか、「マイガード」の登録数3,000社突破は、警備業務の受発注をWeb上でつなぐサービスが一定の利用規模に達していることを示す一つの事例です。ただし、この数字だけで警備業界全体の受発注がWeb化したと判断することはできません。
重要なのは、Webサービスを導入することそのものではなく、自社の営業・受発注業務のどこを効率化したいのかを明確にすることです。
例えば、新規案件を探す手段を増やしたい会社と、協力会社を探す業務を効率化したい会社では、必要なサービスや使い方が異なります。
また、Web上で案件を獲得できても、警備業法上の書面交付や資格者の配置など、従来から必要な確認がなくなるわけではありません。
今後、警備会社がWeb受発注を取り入れる場合は、「案件を増やせるか」だけでなく、「自社の人員・資格・対応地域と合っているか」「法令に沿った受発注ができるか」「導入によってどの業務を削減できるか」という視点でサービスを比較することが大切です。まずは現在の受発注業務を洗い出し、電話・メール・紙・Excelなどで行っている作業のうち、Web化することで効率化できる部分を整理してみましょう。
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※本記事は公開情報をもとに編集部が作成したものです。特定の企業の法的判断を示すものではありません。