警備ロボット×サーマルカメラ|温度異常検知で巡回業務にどう活用できる?

テクノロジー

警備ロボットが通常の映像だけでなく「温度情報」も取得できるようになると、巡回業務で確認できる範囲はどのように変わるのでしょうか。

株式会社アトラックラボは2026年7月22日、ROS 2に対応したAIロボット向けVGAサーマルカメラモジュールを開発したと発表しました。ロボットへの組み込みを前提とした小型・軽量設計で、温度画像の取得やAI画像認識との連携に対応しています。想定用途には設備点検や異常検知、警備・監視ロボットなどが挙げられています。

サーマルカメラを警備ロボットに搭載することで、可視カメラだけでは捉えにくい設備表面の温度分布や局所的な温度変化も、巡回時の確認情報に加えられます。

本記事では発表されたサーマルカメラモジュールの特徴を整理したうえで、温度異常検知や設備点検、夜間巡回などに警備ロボットをどう活用できるのか、警備NEXT編集部の視点から考えます。

警備ロボットに「温度情報」を加えるサーマルカメラ

警備ロボットは施設内を移動しながら、搭載したカメラやセンサーで周囲の状況を確認します。

可視カメラでは人や物の形、放置物、扉の状態など、映像として現れる変化を確認できます。一方、設備表面の温度分布や局所的な温度変化は、通常の映像だけでは把握しにくい情報です。

サーマルカメラは対象物から放射される赤外線を捉え、表面の温度分布を画像として可視化します。移動機能を備えたロボットと組み合わせることで、ロボットが施設内を移動する際に温度情報を取得できます。

アトラックラボは開発背景として、AIロボットや自律移動ロボットの普及に伴い、可視カメラでは検出が難しい温度情報を活用した点検・監視へのニーズが高まっていると説明しています。

今回発表された製品は警備ロボット専用ではなく、インフラ設備点検、工場設備の予知保全、電力設備・配電盤の異常監視、ドローンによる設備点検、UGVや自律移動ロボット、アバターロボットによる遠隔監視など、幅広い用途が想定されています。その一つとして警備・監視ロボットも挙げられています。

警備業務の視点で注目したいのは、ロボットが取得する情報に「温度」という新たな要素を加えられる点です。

AIロボット向けサーマルカメラモジュールの特徴

今回開発されたサーマルカメラモジュールには、ロボットで温度情報を利用するための機能が搭載されています。

出典 | 小型サーマルカメラ(株式会社アトラックラボ_プレスリリース)

出典 | 専用ユーザーインターフェース(株式会社アトラックラボ_プレスリリース)

ROS 2対応でロボットシステムと連携

ROS 2は、ロボットのセンサーや制御装置、ソフトウェアなどを連携させるための基盤です。
同社によると、市販のサーマルカメラをロボットで利用する場合、ROS 2との連携などに追加開発が必要となり、AIシステムへの実装に時間やコストがかかるケースがあります。

今回の製品は独自開発したROS 2対応ドライバーを搭載し、複雑なドライバー開発を行わずに温度画像データを利用できるとしています。

警備ロボットのメーカーやシステム事業者にとっては、温度情報を利用した機能を追加する際の選択肢の一つになります。

用途に応じて温度レンジを設定できる

同モジュールでは、監視対象や用途に合わせて温度レンジを設定できます。
同社は、低温域の細かな変化から高温設備の監視まで幅広い用途に対応できると解説しています。

警備や設備点検の現場でも、確認する対象によって注目すべき温度帯は異なります。対象設備や利用目的に合わせて設定できることは、複数の用途を想定したロボットへの組み込みを検討するうえで重要なポイントです。

VGA解像度で温度分布を可視化

同モジュールは、VGA解像度の温度画像を取得できます。
同社は細かな温度分布を可視化することで、異常箇所の検出精度向上に貢献するとしています。
一点の温度だけを確認するのではなく、設備表面の温度分布を画像として捉えられるため、通常とは異なる状態を確認するための情報として利用できます。

AI画像認識との連携を想定

温度画像を活用した異常検知、人物検知、設備診断などのAIアプリケーションを構築しやすいことも特徴として挙げられています。
自律巡回機能を備えた警備ロボットと組み合わせた場合、ロボットが巡回する際に温度画像を取得し、そのデータをAIで解析するといったシステムが考えられます。

ただし、何を「異常」と判断するかは施設や設備、業務目的によって異なります。サーマルカメラを搭載するだけで温度異常検知が完成するわけではなく、監視対象や判定基準、異常検知後の対応まで含めたシステム設計が必要です。

サーマルカメラで警備ロボットの巡回はどう変わる?

ここからは発表された製品の特徴をもとに、警備ロボットへの活用可能性を警備NEXT編集部の視点から整理します。以下は製品自体の導入事例や実証結果を示すものではなく、警備業務への応用として考えられる活用例です。

設備点検に温度情報を加えられる

施設警備の巡回では、契約内容や巡回要領に応じて、扉や窓の状態、設備の外観、表示灯、放置物の有無、異音や異臭などを確認する場合があります。
警備ロボットにサーマルカメラを搭載することで、こうした確認情報に設備表面の温度分布を加えられる可能性があります。

例えば、今回の製品で想定されている電力設備や配電盤の異常監視などは、警備と設備管理が連携する施設で参考になる用途です。

ただし警備ロボットが取得した温度画像だけで、設備の故障を判断するわけではありません。ロボットが情報を取得し、必要に応じて設備管理担当者や保守会社につなぐといった運用が考えられます。

自律巡回と組み合わせて複数地点を確認

固定式のサーマルカメラは、設置した場所を継続的に監視する用途に適しています。一方、自律巡回機能を備えた警備ロボットとサーマルカメラを組み合わせれば、設定されたルートを移動しながら複数地点の温度情報を取得する運用が考えられます。

例としては、巡回のルート上に配電盤や機械設備などの確認地点を設定し、可視映像と温度画像を定期的に取得するといった活用です。
一方で、対象設備との距離や角度、障害物、ロボットが走行できる経路などを考慮した巡回ルートの設計が必要になります。

設備の温度異常把握への活用可能性

今回の製品では、工場設備の予知保全や電力設備・配電盤の異常監視が想定用途として挙げられています。警備業務へ応用する場合は、温度情報を取得するだけでなく、どの状態を異常の可能性として扱うかをあらかじめ設計する必要があります。

例えばあらかじめ確認対象とする設備や温度条件を設定し、通常とは異なる温度情報を取得した場合に警備員や設備管理担当者へ通知するといった運用が考えられます。

ただし、温度画像からどのような状態を「異常」と判断するかは、対象設備や設置環境などによって異なります。実際に温度異常検知へ活用するには、正常時の温度範囲や判定基準、AIなどによる解析方法、検知後の確認・連絡フローまで含めたシステム設計が必要です。

夜間巡回で考えられる活用例

警備NEXT編集部として考えられる活用例の一つが、夜間巡回における温度情報の利用です。

サーマルカメラは可視カメラとは異なり、対象物から放射される赤外線を捉えて温度分布を可視化します。そのため夜間の巡回ルート上にある設備などについて、可視映像に加えて温度情報を取得し、状態を確認するための補助情報として活用することが考えられます。

例えば自律巡回機能を備えた警備ロボットと組み合わせ、夜間に設定されたルートを巡回しながら、特定設備の可視映像と温度画像を取得するといった運用です。

ただし、これは今回発表された製品について夜間巡回での実証や導入効果が示されたものではなく、製品の特徴を踏まえて考えられる活用例です。また、サーマルカメラがあれば夜間巡回をすべて無人化できるわけではありません。

警備員は異音や異臭、漏水、利用者の様子など、複数の情報を組み合わせて状況を判断します。また、異常発生時には現場確認や関係者への連絡なども必要です。

ロボットが「一定条件で繰り返し情報を取得する業務」を担い、人が「状況判断や現場対応」を担うなど、それぞれの特性を踏まえた役割分担が重要です。

警備会社が活用を検討する際の5つの確認点

警備ロボットとサーマルカメラを業務に生かすには、機能だけでなく運用方法まで整理する必要があります。

1.温度情報を取得する目的を決める

まず「何を見るためのサーマルカメラなのか」を明確にします。
設備点検なのか、特定区域の監視なのか、温度異常検知なのかによって、確認対象や必要なシステムは異なります。

2.ロボットと警備員の確認範囲を分ける

温度画像で確認する項目、可視カメラで確認する項目、警備員が現場で確認する項目を整理します。
ロボットに適した業務を切り分けることで、人は状況判断や現場対応などの業務に集中しやすくなります。

3.取得した情報を誰が確認するか決める

温度画像やAIによる検出結果を警備員が一次確認するのか、設備管理担当者が確認するのかを決めます。
警備会社、施設管理会社、保守会社など複数の事業者が関係する場合は、情報共有と連絡の流れも整理しておく必要があります。

4.異常の可能性を検知した後の対応を決める

通常とは異なる温度情報を取得した場合、誰が現場を確認し、どこへ連絡するのかを事前に決めます。
「検知すること」だけでなく、その後の確認や対応まで一つの業務フローとして設計することが重要です。

5.実際の巡回ルートで検証する

サーマルカメラによる温度情報は、対象物の材質や表面状態、撮影距離・角度、周囲の環境などの影響を受ける場合があります。実際の運用では、対象設備ごとに適切な撮影条件や判定方法を確認することも必要です。

まとめ|警備ロボットとサーマルカメラで巡回情報を広げる

株式会社アトラックラボが開発したAIロボット向けVGAサーマルカメラモジュールは、ROS 2への対応、温度レンジの設定、VGA解像度の温度画像、AI画像認識との連携などを特徴としています。

警備ロボットにサーマルカメラを搭載することで、可視映像だけでなく、設備表面の温度分布を巡回時の確認情報に加えられる可能性があります。

設備点検や温度異常検知などへの活用が想定されており、自律巡回機能を備えた警備ロボットと組み合わせることで、複数地点の温度情報を巡回しながら取得する運用も考えられます。また警備業務への応用としては、夜間巡回時に設備の状態を確認するための補助情報として温度画像を利用することも一つの活用例として考えられます。

一方、サーマルカメラの搭載だけで設備の異常を自動的に判断できるわけではありません。

重要なのは「何を確認するのか」「誰が情報を見るのか」「異常の可能性を検知した後にどう対応するのか」を明確にすることです。

まずは現在の巡回項目を整理し、目視や可視カメラだけでは確認しにくい情報がどこにあるのかを洗い出すことが、警備ロボットとサーマルカメラの活用を検討する第一歩となります。

警備NEXT(警備ネクスト)では、警備業界の最新動向と実務に役立つ情報を継続的に発信しています。

※本記事は公開情報をもとに、警備NEXT編集部が警備業務への活用可能性を整理したものです。記事内で紹介した警備業務への応用例には、メーカーが公表した用途・実証事例ではなく、製品の特徴をもとに警備NEXT編集部が考察した内容が含まれます。製品の性能や異常検知精度、個別の警備業務における効果を保証するものではありません。

参考文献

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