管制システムは「経営指標」になる~KOMAINU平井社長が語る、警備会社DXの現在地~

インタビュー

警備会社の管制業務では、ホワイトボード、電話、Excel、紙の報告書を組み合わせた管理が今も珍しくありません。人手不足や高齢化が進むなかで、配置管理、上下番確認、請求、給与、労務管理まで、限られた人員で回している会社も多くあります。
そのバックオフィス業務を支えるクラウド管制・業務システムが「KOMAINU」です。公式サイトでは、導入事業所数200社、顧客継続率98%、管制業務70%削減などの実績が紹介されています。

今回登場いただくのは、KOMAINUを提供する株式会社ジャガーノートの代表取締役CEO・平井智仁氏。取材で訪れた移転間もないオフィスには、明るさと活気がありました。
本記事では、警備会社の業務課題、管制データを経営に活かす考え方、DXが定着する会社と定着しない会社の違い、そして今後の警備業界の変化について伺いました。

取材対象者プロフィール

平井 智仁 氏
株式会社ジャガーノート 代表取締役CEO。
システムエンジニアとしての経験を経て、2021年に株式会社ジャガーノートを設立。警備業向けクラウド管制・業務システム「KOMAINU」を展開し、警備会社の管制業務、勤怠管理、請求、給与計算などの効率化を支援している。警備業界に特化したDXソリューションの提供を通じて、警備会社のバックオフィス改革に取り組む。
KOMAINU

「警備業はシンプル。でも管理業務はものすごく複雑です」

――警備会社の管理業務には、どのような難しさがありますか。また、KOMAINUでは、その課題にどう対応しているのでしょうか。

警備業という業態自体は、すごくシンプルなんです。契約を取って、現場に警備員を配置する。構造だけ見ると、それだけなんですよね。ただ、管理業務はものすごく複雑です。

契約ごとに請求金額が違いますし、その中でも日勤、夜勤、資格者配置などで単価が変わります。契約単位でも、勤務形態単位でも、きちんと金額を見ないといけません。

これまで警備業向けのシステムはありましたが、他業種向けのシステムを少し変えたようなものも多く、警備業の業務フローに本当に合っているものは少なかったと感じています。

そこで私たちは、データの上流にある「契約」と「勤務単価」に着目しました。契約管理、勤怠管理、請求、給与までつながるようにしたのがKOMAINUです。

――請求や入金管理も、警備業ならではの難しさがあるのでしょうか。

一般的なシステムでは、請求書ごとに入金を確認して、入金されたらチェックするという管理が多いと思います。でも警備業では、請求書どおりにお金が入ってこないこともあります。

たとえば、顧客側の締め日の都合で一部の稼働が翌月に回ったり、手数料が差し引かれたり、現場で出してもらった水代のようなものが請求から引かれたりすることもあります。

請求書単位で見るだけでは足りないんです。会社ごとに売掛を管理し、どの請求書に対して、いくら入金され、いくら残っているのかを見ていく必要があります。

警備業は、表から見るとシンプルです。でも、人材管理、契約管理、勤怠、請求、給与が絡むと一気に複雑になります。そこに正面から向き合ってきたことが、導入事業所数200社という広がりにつながっていると思います。

80代でも使える操作感と、警備業に詳しいサポート

――警備会社では、高齢の隊員さんが多く、スマホ利用に不安があるという声もあります。導入時には、どのように対応されているのでしょうか。

意識しているのは、主に3つあります。

1つ目に、操作画面はとにかく‟かんたん”にしていることです。KOMAINUは、80代の方でも使えるように、いわゆる”かんたん”携帯に近い操作感を意識しています。ボタンを押せばいい、という設計です。
たとえば、集合場所を押せば地図が開き、Googleマップと連携して経路案内ができます。トイレ、コンビニ、駐車場なども確認できます。画面も、あえて情報を詰め込みすぎず、紙1枚を見れば分かるようなシンプルなデザインにしています。

そして2つ目にサポートも重視しています。私たちは、警備業に詳しいITコンサルタントチームだと自負しています。単に操作方法を案内するコールセンターではなく、警備会社の実務を理解したうえで、機能の使い方や運用の仕方まで一緒に考えます。
必要があれば、機能開発にもつなげます。警備業に従事していたメンバーや、警備業務に詳しい開発メンバーもいるので、現場の実態に即した支援ができます。

最後3つ目は、経営者側の見方を変えることです。経営者の方から「うちは高齢の隊員が多いからスマホは難しい」と言われることがあります。でも実際には、スマホを使っている隊員さんは多いです。LINEも使いますし、ソーシャルゲームをしている方も多くいて、むしろスマホを使いこなしているかもしれません。「高齢だから使えない」と決めつけないことが大切かもしれませんね。

管制データは、売上と粗利を見える化する経営指標になる

――管制システムのデータは警備会社にとって重要な経営指標になるということですが、具体的には、どのようなデータが経営判断に役立つのでしょうか。

まず見やすいのは、売上の見込みです。
警備業では、契約ごとに請求金額が違います。さらに、日勤、夜勤、資格者配置など、勤務形態によって単価も変わります。「どの契約の、どの勤務形態に、何人が、何日入ったのか」。ここが分からないと、売上を正確につかみにくいんです。

KOMAINUでは、その情報がデータベースに入るので、どの現場で何人が稼働し、売上がいくら立っているのかを自動で計算できます。これまでExcelなどで集計していた作業が、大きく削減できます。

あとは、現場ごとの粗利です。ここもかなり重要です。警備業では、給与の高い隊員さんを、請求単価の低い現場に多く配置すると、粗利が下がります。遠方の現場で交通費が多く発生しているのに、交通費を十分にもらえていない場合もあります。

この情報が見えると、「この現場は粗利が低いから価格交渉しよう」「交通費をきちんと請求しよう」「この顧客との契約は見直そう」といった判断がしやすくなります。

――管制データが見えると、価格交渉や顧客の見直しにもつながるということですね。

そうです。
警備業には「労務単価」という考え方があります。顧客から1人あたりいくらいただくかによって、会社の利益率も変わりますし、隊員さんの給与にも影響します。

現場ごとの粗利が分かれば、単価交渉もしやすくなります。得意先のランク付けや、優先顧客の判断もできるようになります。反対に、管制データが見えていないと、付き合いでずるずる続けている現場が残ってしまうこともあります。

警備業は、本来は単価を上げやすい業界でもあります。仕事は多いですし、人手不足もあります。ただ、経営者のスキルや考え方によって、利益率や隊員さんの待遇に差が出てしまっている面もあると思います。

データを見える化することで、経営者の意識も変わっていくと思っています。

工数削減の先に、採用・定着・教育へ投資する余力が生まれる

――KOMAINUの最大のメリットとして、工数削減を挙げられていました。現在、導入企業で見えている効果は、工数削減以外にも広がっていますか。

はい。システムを入れると、最初に見えやすいのは工数削減です。管制担当者や内勤者が楽になる。そこは分かりやすい効果です。ただ、効果はそこだけではありません。

たとえば、ある会社では、休暇申請をスマートフォンからできるようにし、有給休暇を誰がどれくらい取得しているかもすぐ分かるようにしました。その結果、離職率が大きく下がった会社があります。

警備業で「辞めない会社」をつくるのは簡単ではありません。休みや働き方が見えるだけでも、隊員さんにとっては安心につながります。

工数が減ることで、採用やマーケティングに時間とお金を回せるようになった会社もあります。無駄な事務作業を減らし、その分を採用活動に使う。TikTokなどを活用して人を集め、3年で100人規模まで成長した会社もあります。

――単に事務作業が減るだけではなく、会社の成長戦略にもつながるということですね。

そうです。ある程度の規模になると、工数削減で浮いた時間を、隊員さんの希望を聞くことや、働きやすい現場を考えること、教育の質を上げることに使えるようになります。

隊員さんは、警備会社にとって働いてもらう大切な存在です。「隊員さんファースト」で働きやすい環境をつくる。教育して品質を高める。その積み重ねが、採用や定着、離職率の低下にもつながっていきます。

私は、そこまで含めてKOMAINU導入の効果だと思っています。

月40回のアップデート。現場の声を内製開発で反映する

――公式サイトでは、月間アップデート数40回と記載されています。現場の要望を、どのような体制で開発や改善に反映しているのでしょうか。

私たちは、お客様からの要望を聞いて、月に40個ぐらいアップデートしています。月によっては100個近く対応することもあります。

開発は基本的に内製です。私自身もエンジニアですし、副社長もエンジニアです。今でも、画面デザインは私がレビューしたものしかリリースしないようにしています。

サポートの中でも、導入企業がどう使っているのか、どこで困っているのかは見ています。そこで見えたことを、開発に戻していく形です。

――個別要望にも対応されるのでしょうか。

はい。個別開発もありますし、他の会社でも使える機能については、全体に公開していきます。たとえば「この条件で検索したい」「有給を5日以上取得した人のリストがほしい」といった要望があれば、機能として反映し、他社でも使えるようにすることがあります。

警備業に詳しい開発チームが社内にあることは、かなり大きな強みだと思います。
大規模な警備会社でも使えるようにするには、単に機能があるだけでは足りません。3,000人規模、1,000人規模の会社でも使えるように、ベースのシステムを強くしておく必要があります。

KOMAINUは、そのベースを持ったうえで、必要に応じてカスタマイズできるところが特徴です。

金髪ギャル風の警備員を起用した理由。「警備業の未来は明るい」と伝えたい

――KOMAINUでは、金髪の若い女性イメージキャラクターも印象的です。起用にはどのような背景があるのでしょうか。

通常、警備業に限らず、サービスサイトのファーストビューでは清楚系のタレントさんやお笑い芸人さんを起用する企業も多いと思います。その中で、私たちはあえて、金髪ギャル風の警備員に扮したモデルさんを起用しました。

きっかけは、東京都警備業協会さんが会員向けに発行している冊子でした。そこにAIで作成された金髪の少女の写真が表紙として使われていたんです。それを見て、「この少女が成長したら……」というアイデアが浮かびました。警備業界のイメージチェンジや、新しい風向きをつくる動きだとも感じました。

警備業では、若い女性も活躍しています。警備業の未来は明るい。その未来を支えていくのが私たちだ、という思いも込めています。

出典|KOMAINU公式サイト

成果が出る会社と定着しない会社の違いは「社長のコントロール」

――システム導入で成果が出る会社と、なかなか定着しない会社の違いはどこにあると思いますか。

はっきり言うと、社長がどこまでコントロールできているかだと思います。よくあるのは、担当者さんが「今のやり方を変えたくない」と抵抗するケースです。総務や管制を長く担当している方ほど、これまでのやり方に慣れていて、システム導入に抵抗することがあります。

もちろん、その気持ちも分かります。ただ、KOMAINUは本来、そういう担当者さんを楽にするためのシステムです。実際に話を聞いていただくと、「こんなにかんたんにできるなら早く使いたい」と言っていただけることも多いです。

――導入を定着させるには、経営者自身が関わることが重要なのですね。

そうです。システム導入は、担当者任せでは進まないことがあります。社長が「会社として変える」と決めて、担当者と向き合う必要があります。私たちも、そこはしっかりと伴走します。契約後も電話をしたり、何度も訪問したり、社内の事情を聞いたうえで段階的な進め方を一緒に考えます。

実際に、半年ぐらいかけて何度も訪問し、担当者さんに気に入ってもらって、ようやく運用が始まった会社もあります。現場の抵抗があるから無理、ということではありません。ただ、社長が本気で動かないと、DXは定着しにくいと思います。

アースセキュリティ社との取り組みで印象的だったのは「中西さんの伝える力」

――先日、KOMAINUを導入するアースセキュリティ株式会社の中西様にも取材を行いました。同社の取り組みで、特に印象的だった点はありますか。

中西さんは、本当にすごい方だと思います。今まで見た中でも、かなりプレゼンが上手いです。私はベンチャーのピッチもたくさん見ていますが、あれだけ分かりやすく話せる方はなかなかいませんね。

そしてKOMAINUを導入して終わりではなく、隊員さんにどう説明するか、どう定着させるかまで考えて取り組まれている。そこが印象に残っています。
KOMAINUとキントーンを組み合わせたKOMAtoneのサポートも我々でしっかり行っていますのでご安心ください。

M&Aと集中管制。これからの警備会社に求められる管理体制

――今後、警備会社の管制業務や配置管理はどのように変わっていくと考えていますか。

今後大きくなるのは、M&Aだと思います。
事業承継が難しい地方の警備会社を、大きな会社が買っていく流れはすでにあります。その中で、人材管理をどうしていくかが課題になります。

たとえば、関東エリアの5つの拠点を、東京の1拠点で配置するようなことは、今後増えていくと思います。小さな営業所ごとに支店長がいて、事務担当者がいる。そういう形から、現場側にはリーダー格の人がいて、管理部門は集中センターで担う。そんな流れが出てくるのではないでしょうか。

――集中管制が進むと、システムは必須になりますね。

そうですね。
KOMAINUにはAI配置の機能もあります。6カ月ぐらい配置傾向を取ると、これまでの配置の傾向をもとに、かなりの精度で配置案を出せるようになります。

ただ、やりすぎると人と人との関係が薄れて、離職率が上がる可能性もあります。システムで浮いた時間をどう使うかが大事です。
若い人を採用しても、すぐに辞めてしまうことがあります。一方で、60代以上の方に長く働いてもらうには、人と人とのつながりも必要です。

警備業は、ある意味で高齢者の見守りや、シルバー人材のマネジメントに近い側面もあると思います。これから高齢の方が増えていく中で、警備会社にはそうした視点も求められていくのではないでしょうか。

ホワイトボード、電話、Excel管理に課題を感じる警備会社へ

――最後に、ホワイトボード、電話、Excel中心の管理に課題を感じている警備会社へ、メッセージをお願いします。

まず、今の業務が本当に会社の成長につながっているのかを見てほしいです。ホワイトボードに書く。電話をかける。Excelに転記する。その作業自体が悪いわけではありません。

ただ、その作業に時間を使いすぎて、採用、営業、隊員さんの教育、働きやすい環境づくりに時間を使えていないなら、見直すべきだと思います。

警備業は、人手不足の業界です。内勤者が本来やるべき仕事に時間を使えるようにする必要があります。システムを入れる目的は、人を減らすことだけではありません。現場や隊員さんに向き合う時間をつくることです。管制データを見える化すれば、売上も粗利も見えます。どの現場が利益を生んでいるのか、どの顧客と向き合うべきなのかも判断できます。

警備会社がもっと強くなるために、管制システムは単なる便利ツールではなく、経営のための基盤になると思っています。

まとめ

KOMAINUが目指しているのは、管制業務を楽にすることだけではありません。
契約、勤怠、請求、給与、売掛、粗利。
警備会社の経営判断に必要な情報を見える化し、経営者が次の一手を打てる状態をつくる
ことです。
また、システム導入は、担当者任せでは進みません。
社長が会社として変える意思を持ち、現場や内勤者と向き合うことが欠かせません。
浮いた時間を、採用、教育、隊員さんの定着に使えるか。
顧客とどう向き合うかを考える時間に変えられるか。
それらが、これからの警備会社の差になっていくのかもしれません。

関連記事

TOP
CLOSE