警備員への巡察記録をAIで活用へ|音声から指導記録・タスクを作成する「スマート巡察」

テクノロジー

警備員への巡察で聞いた現場の声を、その後の指導や対応にどこまで生かせているでしょうか。
株式会社strayaは2026年8月3日、巡察業務をAIで支援する「スマート巡察」の正式提供を開始したと発表しました。
現場で録音した音声をもとにAIが文字起こしを行い、指導記録の下書きや対応事項、警備員ごとの情報を整理します。承認した記録はPDFで出力することも可能です。

導入企業の事例を見ると、利用目的は記録作成の効率化だけではありません。紙での記録管理や、現場で聞き取った情報が特定の担当者だけにとどまることを課題として挙げる企業もあり、記録した情報を管理部門で共有したり、次回の巡察へ引き継いだりする用途にも活用されています。

本記事では、まずstrayaが発表した「スマート巡察」の仕組みと導入企業の事例を整理します。そのうえで、AIや音声データを巡察・指導業務に取り入れる際に、警備会社が確認したいポイントを解説します。

警備員への巡察をAIで記録する「スマート巡察」とは

警備会社では、警備員が契約先や工事現場へ直行直帰する勤務形態もあり、内勤担当者が日常的に一人ひとりの勤務状況を確認できるとは限りません。

そこで実務の一つとして行われているのが、管理者や指導担当者などが警備現場を訪れ、勤務状況を確認したり、警備員への指導や聞き取りを行ったりする巡察です。

警備業法第21条では、警備業者に対して、警備員が警備業務を適正に実施できるよう教育するとともに、必要な指導・監督を行うことを求めています。ただし、同条では「巡察」という方法自体を定めておらず、警備会社では指導・監督などの実務の一つとして巡察が行われています。

一方、巡察には現場を確認する時間だけでなく、その後の記録作成も伴います。実際に今回紹介された導入企業からは、紙での記録管理や、現場で聞き取った情報が特定の担当者だけにとどまることを課題として挙げる声もあります。

strayaが提供を開始した「スマート巡察」は、こうした巡察時の会話と記録作成をデジタル化する仕組みです。現場で録音した音声をアップロードすると、AIが実施者と警備員を話者分離して文字起こしを行い、設定したテンプレートに沿って指導記録の下書きを作成します。

AIが作成した内容は担当者が確認・修正したうえで承認し、承認済みの記録はPDFとして出力できます。

出典|株式会社straya「株式会社straya、音声とAIを活かし警備員とのコミュニケーションを資産に変える『スマート巡察』を正式リリース」

「記録を作る」だけではない スマート巡察の主な機能

スマート巡察では、巡察後の記録作成だけでなく、過去の記録の引き継ぎや対応事項の管理、巡察の実施状況の確認までを想定した機能が用意されています。

巡察後の記録作成をAIが支援

現場で録音した音声をもとに、AIが実施者と警備員を話者分離して文字起こしを行い、指導記録の下書きを作成します。担当者はAIが作成した内容を確認し、必要に応じて修正したうえで承認します。承認済みの記録はPDFで出力・印刷できます。
AIが作成した文章をそのまま正式な記録にするのではなく、人が確認・修正してから反映する仕組みです。

警備員ごとに「次回確認すること」などを整理

承認された記録をもとに、警備員ごとの情報をAIが整理する機能も備えています。
strayaの発表によると、整理されるのは「直近の状況」「次回確認すること」「長期傾向」の3項目です。過去の巡察内容を確認しながら、次回に確認したい事項を把握できる仕組みになっています。

対応事項を担当者・期限付きで管理

巡察時の会話のなかから、対応が必要な事項をAIが抽出する機能もあります。抽出された内容には担当者や期限を設定でき、「配置」「備品手配」「シフト」「教育」「健康」「待遇」の6カテゴリで管理できます。
strayaでは例として、「ヘルメットを交換した方が良い」といった会話から、対応事項を抽出するケースを紹介しています。

また、巡察の予定や実施状況を管理する機能も備えています。ダッシュボードでは、「どの現場を訪問したか」だけでなく、「どの警備員が巡察を受けたか」を基準に実施率を確認できます。

出典|株式会社straya「株式会社straya、音声とAIを活かし警備員とのコミュニケーションを資産に変える『スマート巡察』を正式リリース」

導入企業ではどのように活用されているのか

今回の発表では、グリーン警備保障、ミカドセキュリティー、太平ビルサービス金沢、HOKUBU、男塾など、すでにスマート巡察を利用している警備会社の事例も紹介されています。
各社が挙げている課題や活用方法は異なります。

太平ビルサービス金沢|記録負担と情報共有を課題に

太平ビルサービス株式会社金沢では、在籍する警備員に対して毎月実地指導を実施しています。

同社では、管理部門の人数が限られるなかで巡察時間を確保することに加え、現場で把握した警備員の不満や人間関係などの情報が、特定の担当者のなかだけにとどまることを課題としていました。

同社は、指導事項や会話の内容をスマホやPCで記録し、管理部門内で共有できる点などをスマート巡察の導入理由として挙げています。

導入後については、音声入力やAI文字起こしによって実地指導の記録負担が軽減したほか、現場で把握した不満や人間関係の悪化などを管理部門で早期に共有できるようになったと説明しています。

グリーン警備保障|現場へ足を運ぶ機会が増加

グリーン警備保障株式会社では、警備員が直行直帰するため、もともと内勤者と顔を合わせる機会が多くなかったとしています。

さらにDXが進むなかで、警備員と内勤者が直接会話する機会が減ってきたことも課題として挙げています。

同社によると、スマート巡察の導入後は、内勤者が自ら現場へ行こうとする意識が生まれ、巡察を含めた現場訪問の回数が増えたとしています。

一方、2026年8月3日の発表時点では導入から約2か月で、蓄積したデータの活用については「これから」としています。離職減少についても今後への期待として述べており、現時点で定量的な効果が示されたものではありません。

ミカドセキュリティー|管理職全員で情報を共有

ミカドセキュリティー株式会社では、警備員と管制担当者とのコミュニケーションや指導方法を課題としていました。

導入後は、日々の指導内容などが蓄積され、警備員の状況を管理職が把握しやすくなったほか、管理職全員で情報や課題を共有できるようになったとしています。

スマート巡察の導入前に確認したい3つのポイント

ここからは、スマート巡察のように音声や警備員ごとの情報を扱うサービスを導入する際に、あらかじめ確認しておきたい実務上のポイントを整理します。

AIが作成した記録を誰が確認するのか

スマート巡察では、AIが記録の下書きを作成し、人が確認・修正したうえで承認します。
そのため、実際に導入する場合は、誰がAIの下書きを確認し、誰が正式な記録として承認するのかを社内で決めておく必要があります。

警備員への指導内容は、その後の教育や配置などを検討する際に参照する可能性があります。発言内容と記録が一致しているか、指導事項に誤りがないかを確認する運用まで含めて決めておくことが必要です。

録音データの利用目的と管理方法を決めておく

巡察時の会話には、勤務上の相談や健康状態、人間関係など、個人に関する情報が含まれる場合があります。
録音内容から特定の個人を識別できる場合、その音声データは個人情報に該当します。個人情報に該当する場合、個人情報取扱事業者には、利用目的を本人に通知または公表することが求められます。

また、録音内容に病歴などの要配慮個人情報が含まれる場合には、取得にあたって原則として本人の同意が必要になるなど、より慎重な取扱いが求められます。法令上の例外もあるため、記録する情報の内容に応じて、個人情報保護法や関連ガイドラインを確認することが必要です。

実際の運用では、録音データを何のために利用するのか、誰が閲覧できるのか、どのように保存・管理するのかをあらかじめ整理しておく必要があります。

警備員との信頼関係にも関わるため、録音を行うことや利用目的についてどのように説明するかも含め、社内で運用方針を決めておくとよいでしょう。

記録する情報の範囲を決める

音声をデータ化すれば、巡察時の情報を共有しやすくなります。一方で、記録できる情報と、業務上記録する必要がある情報は同じではありません。

特に健康状態や人間関係など、個人に関する情報を記録する場合は、業務上どこまで残すのか、誰が閲覧するのかをあらかじめ整理しておくことが望まれます。
管理者、管制担当者、指導担当者など、それぞれの役割に応じて閲覧範囲を検討することも必要です。

AIで記録しやすくなったからこそ、会話のすべてを残すのではなく、業務上必要な情報をどのように扱うのか、社内で基準を設けることが求められます。

まとめ|巡察DXは記録した情報をどう生かすかがポイント

警備業法第21条では、警備業者に対して、警備員への教育と必要な指導・監督を求めています。その実務の一つとして行われている巡察では、現場で警備員の状況を確認するだけでなく、その内容を記録し、必要な対応へつなげることもあります。

strayaが2026年8月3日に正式提供を発表した「スマート巡察」は、現場で録音した音声をもとに、AIが指導記録の下書きを作成するほか、警備員ごとの情報整理や対応事項の管理、巡察実施状況の確認などを支援する仕組みです。

今回のプレスリリースでは、導入企業から記録作成の負担軽減、管理部門での情報共有、現場訪問の増加といった変化が紹介されています。一方、グリーン警備保障のように、蓄積データの活用はこれからとしている企業もあります。導入による効果は、企業ごとの運用や導入期間も踏まえて見る必要があります。

こうしたサービスを導入する際には、機能だけでなく、AIが作成した記録の確認体制、録音データの利用目的や管理方法、記録・閲覧する情報の範囲まであわせて検討する必要があります。

まずは自社の巡察について、記録作成にどの程度の負担が生じているのか、現場で把握した情報がどこまで共有されているのか、前回の内容を次の指導へ引き継げているのかを確認することが、DXを検討する第一歩になります。

警備NEXT(警備ネクスト)では、業界の法令動向や事案を継続的にウォッチし、現場に役立つ視点でお届けしています。
※本記事は公開情報をもとに編集部が作成したものです。特定の企業の法的判断を示すものではありません。

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