福岡空港でAI警備ロボット「ugo Pro」実証|巡回・異常検知への活用を警備会社2社が検証

テクノロジー

空港のような広い施設では、AI警備ロボットをどこまで巡回や異常検知に活用できるのでしょうか。

福岡空港では、国内線・国際線の両旅客ターミナルビルでAIロボット「ugo Pro」を活用した次世代警備システムの実証実験が行われています。国際線では株式会社にしけい、国内線では警備業も手がける株式会社ファビルスが実証に参加し、巡回警備や異常検知への活用などを検証しています。

本記事では、福岡空港での「ugo Pro」の実証内容や警備ロボットの法律上の位置付けを確認したうえで、警備会社が導入を検討する際に押さえておきたいポイントを解説します。

福岡空港でAI警備ロボット「ugo Pro」の実証実験

ugo株式会社は2026年8月25日、福岡国際空港株式会社が管理・運営する福岡空港の国内線・国際線旅客ターミナルビルで、AIロボット「ugo Pro」が次世代警備システムの実証実験に採用されたと発表しました。

実証を行っているのは、次の2社です。

対象実証を行う企業主な内容
国際線旅客ターミナルビル株式会社にしけいAI映像解析システムや警備ロボットを組み合わせた巡回警備・異常検知
国内線旅客ターミナルビル株式会社ファビルスugo Proを活用した巡回警備・異常検知

国際線では、にしけいが2026年6月から実証を開始しています。国内線でもファビルスが同様の実証を行っています。ファビルスは総合ビル管理会社ですが、施設警備や機械警備、交通誘導・雑踏警備などの警備事業も手がけています。国際線で実証が行われる背景の一つが、旅客ターミナルビルの大規模な拡張です。福岡空港の国際線旅客ターミナルビルは2025年3月のグランドオープンに伴い拡張され、延べ床面積は約13万2,000㎡と従来の約2倍になりました。

ugoの発表では、商業エリアの拡大や旅客数の増加を背景として、広い館内での死角への対応や混雑時の安全確保を課題として挙げています。国際線の実証では、警備員による巡回や監視にAI映像解析や複数の警備ロボットを組み合わせ、警備業務をどのように補完できるかが検証されています。国内線でも、ugo Proを活用した巡回警備や異常検知への活用が検証されています。

福岡空港ではAI・警備ロボットをどう活用しているのか

福岡空港国際線の実証では、AI映像解析と複数の警備ロボットを組み合わせ、不審行動などを検知した際の初動対応、自動巡回、混雑時の案内・注意喚起、夜間帯の自動巡回などへの活用が検証されています。

ugo Proは、移動カメラとしての巡回監視や多言語による案内、異常検知時のリアルタイム映像による状況確認などを担います。一方、アジラのAI映像解析システムやSEQSENSEの警備ロボット「SQ-2」も使用されており、それぞれを警備員による監視・現場対応と組み合わせている点が今回の国際線実証の特徴です。

異常を検知し、現場確認につなげる

国際線では、アジラの行動認識AI警備システムがターミナル内の監視カメラ映像を解析し、暴力・転倒・侵入などの異常行動を検知します。

異常を検知すると警備員へ通知するとともに、周辺を巡回しているugo Proとも情報を共有します。ugo Proから送られるリアルタイム映像を確認することで、警備員が現場へ向かう前の状況把握などに活用する仕組みです。AIで異常を検知して終わるのではなく、ロボットから得られる映像と警備員による現場対応を組み合わせています。

ターミナル内を自動巡回する

広いターミナル内では、警備ロボットを巡回させることで、固定された監視カメラだけでは確認しにくい場所の状況把握に活用します。

ugo株式会社は、ugo Proが担う業務として定時・不定期の巡回を挙げています。一方、にしけいが公表した国際線の実証では、SEQSENSEの警備ロボット「SQ-2」が館内を定時・不定期に自動巡回し、監視カメラの死角となりやすいエリアの異変を把握する運用が示されています。固定カメラと複数の警備ロボットを組み合わせ、広いターミナル内をどのように監視できるかを検証しています。

混雑状況に応じて案内・注意喚起を行う

国際線では、AIによる人数カウントや混雑状況の検知も行っています。混雑の兆候を把握した場合には、防災センターが状況を確認し、警備員の配置を調整するほか、ロボットによる案内や注意喚起を行います。
警備ロボットを巡回だけに使用するのではなく、人が多く集まる場所での案内や安全確保にも活用する実証です。

夜間帯の巡回をロボットで補完する

夜間閉館時や警備員による巡回の手が薄くなりやすい時間帯にも、ロボットによる自動巡回を行っています。
国際線では、監視カメラのAI解析とロボットによる巡回を組み合わせ、夜間帯を含めた監視体制を検証しています。

このように福岡空港の実証では、警備員の業務をすべてロボットへ置き換えるのではなく、映像解析や巡回、現場の状況確認などをAI・ロボットで補完し、必要な場面で警備員が判断・対応する運用が試されています。

警備ロボットの法律上の位置付け

警備ロボットを活用する際には、警備業法上の「警備員」や「機械警備業務」との違いを確認しておく必要があります。

警備業法第2条では、施設における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務を警備業務の一つとして定めています。また、同条第4項では、「警備員」を警備業者の使用人その他の従業者で警備業務に従事する者と定義しています。この定義上、ロボットそのものは警備業法上の「警備員」には該当しません。

今回の国際線の実証でも、AI映像解析や警備ロボットだけで警備を完結させるのではなく、現場の警備員と組み合わせた運用が行われています。

警備ロボット=「機械警備業務」とは限らない

警備業法上の「機械警備業務」には固有の定義があります。
警備業法第2条第5項では、警備対象施設に設置した機器が感知した盗難などの事故情報を、その施設以外の施設に設置した機器へ送信する機能を持つ「警備業務用機械装置」を使用して行う1号警備業務を「機械警備業務」と定義しています。

そのため、警備ロボットを使用していることだけをもって、その業務が警備業法上の「機械警備業務」に該当するとは判断できません。実際の位置付けは、システム構成や情報の送受信方法、運用形態などを踏まえて確認する必要があります。

福岡空港の実証から警備会社が確認したい5つのポイント

AI警備ロボットを導入するとき、製品の性能だけを比較しても実際の警備体制は決まりません。

福岡空港の事例から警備会社が参考にしたいのは、ロボット単体ではなく「警備業務の中にどう組み込むか」という考え方です。

ロボットに任せる業務を具体的に決める

まず、現在警備員が担当している定時・不定期の巡回や映像確認、混雑状況の確認、案内・注意喚起、夜間巡回などの業務を整理します。そのうえで、ロボットに任せられる業務と、警備員による判断や現場対応が必要な業務を分けていきます。
ロボットを導入すること自体を目的にするのではなく、現在の警備計画のどこを補完するのかを先に決めることが必要です。

異常検知後の対応フローを決める

AIが異常を検知した後は、監視担当者への通知、映像確認、必要に応じた警備員への指示、現場確認、施設管理者への報告など、一連の対応手順をあらかじめ整理しておく必要があります。
特に確認したいのは、「AIの検知を受けてすぐ警備員を向かわせるのか」「人が映像を確認してから現場対応するのか」といった判断基準です。検知から現場対応までの役割と判断者を明確にしておくことで、AIやロボットから得た情報を実際の警備対応につなげやすくなります。

ロボットが巡回できない場所を把握する

施設警備では、ロボットの導入によって巡回範囲が広がっても、ロボットが通行できない場所や撮影しにくい場所が残れば、有人巡回との分担が必要です。
導入や実証の際には、例えば階段や段差、狭い通路、混雑しやすい場所のほか、エレベーターや自動ドア、通信が不安定な場所など、ロボットが安定して巡回・撮影できるかを確認しておく必要があります。
自動化できた巡回範囲だけでなく、ロボットでは確認できなかった場所や、有人巡回が必要だった場面も記録することで、有人警備との役割分担を具体化しやすくなります。

カメラ映像の取り扱いを確認する

警備ロボットがカメラで施設利用者を撮影する場合には、個人情報保護法との関係も確認する必要があります。
個人情報保護委員会は、駅や空港などに設置したカメラで特定の個人を識別できる画像を取得する場合、個人情報を取り扱うことになるため、利用目的をできる限り特定し、その範囲内で利用する必要があるとしています。

従来型の防犯カメラでは、設置状況などから利用目的が防犯目的であることが明らかな場合、利用目的の通知・公表は不要とされています。一方、カメラで撮影されていることを本人が容易に認識できない場合には、カメラ作動中であることを掲示するなど、撮影を容易に認識できるようにする措置が必要です。

さらに、取得したカメラ画像などが個人データに該当する場合には、個人情報保護法第23条に基づく安全管理措置も必要です。個人情報保護委員会は、システムを利用できる従業者の限定や責任者の設定、取扱規程の整備などを例示しています。保存期間についても、個人情報保護法第22条に基づき、利用の必要性を考慮して設定し、利用する必要がなくなった場合には遅滞なく消去するよう努めることが求められています。

警備会社だけでなく施設側やシステム事業者も映像を取り扱う場合には、安全管理の観点から、映像の管理主体や閲覧できる範囲についても整理しておくことが重要です。

人員削減だけで導入効果を判断しない

警備ロボットの導入効果は、人員削減だけで判断するのではなく、巡回にかかる時間や異常発見・確認までの時間、警備員の移動負担、夜間巡回の負担なども含めて確認する必要があります。あわせて、誤検知の発生状況やロボット停止時の対応、保守・運用に必要な時間も評価しておくと、実際にどの程度業務効率化につながったのかを判断しやすくなります。

例えば巡回時間を削減できても、ロボットの監視や復旧対応に多くの時間が必要になれば、期待した省力化につながらない可能性があります。

まとめ|AI警備ロボットは「人との役割分担」まで設計する

福岡空港では、AI警備ロボット「ugo Pro」を使い、国内線・国際線の両旅客ターミナルビルで巡回警備や異常検知の実証実験が行われています。今回の事例で注目したいのは、ロボットが警備員をそのまま置き換えるのではなく、自動巡回や異常検知後の初動支援などをAI・ロボットが担い、人による判断や現場対応と組み合わせる形が検証されている点です。

警備会社が導入を検討する際は、現在の警備業務を整理し、どの巡回や確認作業をロボットに任せるのか、異常を検知した後に誰が判断し、どのように現場対応へつなげるのかを具体的に決める必要があります。また、導入効果を見る際も、人員を何人削減できるかだけでなく、巡回時間や警備員の移動負担、異常発見から対応までの時間、誤検知の発生状況、ロボットの運用や保守にかかる負担まで含めて確認することが必要です。

福岡空港での実証結果が今後公表されれば、空港以外の大型商業施設やオフィスビルなどで警備ロボットの導入を検討する際にも、運用設計や役割分担を考える参考になる可能性があります。まずは自社の警備業務を「人が判断すべき業務」と「機械で補完できる業務」に分けて整理することが、導入検討の第一歩になります。

警備NEXT(警備ネクスト)では、業界の法令動向や事案を継続的にウォッチし、現場に役立つ視点でお届けしています。
※本記事は公開情報をもとに編集部が作成したものです。特定の企業の法的判断を示すものではありません。

参考・出典

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