大規模な地震が発生し、住民が避難した後、無人となった住宅や店舗の防犯をどのように確保するのでしょうか。
2026年7月28日に発生した「令和8年熊本地震」の被災地では、空き巣や詐欺などの犯罪を防ぐため、九州各県から応援に入った警察官ら約100人による「特別警備部隊」が編成され、8月20日時点で被災地のパトロールなどを行っていました。
災害時には、避難による住宅や施設の無人化や建物の損壊に加え、停電や通信障害などによって防犯設備が通常どおり機能しなくなる可能性があります。警備会社でも、契約施設の警戒をどのように続けるのか、警備員自身の安全をどう確保するのかを事前に整理しておく必要があります。
本記事では、令和8年熊本地震における警察の特別警備をもとに、災害時に防犯対策が必要となる背景と、警備会社が備えておきたい対応を解説します。
2026年熊本地震の被災地で警察官約100人が特別警備
2026年7月28日16時27分、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。気象庁によると、熊本県宇城市と氷川町で最大震度7を観測し、その後も熊本県熊本地方や天草・芦北地方を中心に地震活動が続きました。気象庁は、この地震とそれ以降の一連の地震活動を「令和8年熊本地震」と命名しています。
熊本朝日放送(KAB)の2026年8月20日の報道によると、熊本県警は九州各県から応援に入った警察官ら約100人で「特別警備部隊」を編成し、8月3日から被災地でパトロールを続けていました。
活動の目的は、災害に乗じた空き巣や、住宅の修理・修繕を装った詐欺などの防止です。8月19日には八代市などを巡回し、住民への声かけや注意喚起のチラシ配布を行いました。
KABは、同日時点までに、被災地で窃盗や住居侵入など災害に関連する被害届が8件出ていると報じています。

災害時に防犯対策が必要になる背景
災害時には、避難によって住宅や店舗、事業所が無人になることがあります。さらに、地震や風水害によって窓や出入口が損壊すると、平常時よりも侵入しやすい状態になる場合があります。
実際に、過去の大規模災害では、被災地域で侵入窃盗などが発生しています。警察庁は東日本大震災について、多くの住民が避難した地域では民家や店舗などへの侵入が容易となり、発災当初に窃盗事件が多発したとしています。
また、停電や通信障害によって、防犯カメラやセンサーなどの設備が通常どおり機能しない場合もあります。人の目が減り、防犯設備も十分に使えない状況が重なることで、平常時とは異なる防犯対策が必要になります。
そのため、住宅や施設が無人となるなど防犯上のリスクが高まった場合には、被災状況に応じた警戒や防犯対策が必要になります。
災害時に民間の警備会社が担えること
今回の令和8年熊本地震で、特別警備部隊として活動していたのは警察官です。民間の警備会社とは、権限や業務の範囲が異なります。
警備業法第2条では、警備業務を4種類に分類しています。このうち第1号では、事務所、住宅、駐車場などの警備業務対象施設における盗難等の事故を警戒し、防止する業務が規定されています。施設警備や機械警備は、この1号警備に該当します。そのため、災害後に契約先のオフィス、工場、商業施設、倉庫などで侵入や盗難を警戒することは、警備会社が担う業務の範囲に含まれます。
ただし、警備員に警察官と同じ権限が与えられるわけではありません。警備業法第15条では、警備業者や警備員について、警備業法によって特別な権限を与えられているものではないことに留意し、他人の権利や自由を侵害してはならないと定めています。
災害時であっても、警備会社が被災地域全体の治安維持を担うわけではありません。基本となるのは、契約内容に基づき、担当する施設や区域で盗難などの事故を警戒・防止することです。
過去には、民間警備会社が被災地の防犯活動に協力した事例もあります。警察庁によると、東日本大震災では、全国警備業協会や都道府県警備業協会の呼びかけに応じた警備業者が警備員をボランティアとして動員し、警察と連携して防犯パトロールなどを行いました。
災害時の警備で警備会社が確認したい5つのポイント

全国警備業協会が公表する警備員の安全確保に関するガイドラインや警備業者向けBCPなどを踏まえると、警備会社では災害発生後の対応だけでなく、警備の継続条件や安全確保の方法を平常時から整理しておくことが重要です。ここでは、警備会社が事前に確認しておきたいポイントを5つに整理します。
警備を継続・停止する基準を決めておく
災害時には契約施設の警備が必要になる一方で、建物の倒壊、津波、土砂災害、火災などによって、警備員自身の生命や身体に危険が及ぶ場合があります。
全国警備業協会は「自然災害発生時における警備員の安全確保のためのガイドライン」を公表し、自然災害発生時に警備員が主体的に避難できるよう、対応方法を示しています。
また、同ガイドラインでは、自然災害によって警備員の生命・身体に危険が生じる状況では、一時的に警備業務を停止できる旨や、警備業務を停止した場合の免責について、あらかじめ顧客との契約条項に盛り込むよう努めることが示されています。どのような状況で警備業務を停止するのか、誰が中止を決定して現場へ指示するのかを事前に決めておく必要があります。一方、警備員自身に被災の危険が切迫している場合には、顧客や責任者からの指示を待つことを前提とせず、安全確保を優先できる運用にしておくことも重要です。
被災後の警戒方法を想定しておく
建物が損壊すると、平常時に設定していた警戒ポイントが変わることがあります。出入口や窓が破損すれば新たな侵入経路が生じ、防犯カメラやセンサーが停止すれば、設備による監視を前提とした警備方法も見直す必要があります。そのため、契約施設が被災した場合には、建物や設備の状況を確認し、必要に応じて警戒場所や巡回方法を変更することになります。
ただし、建物自体に倒壊や落下物などの危険がある場合には、警備員を安易に立ち入らせるべきではありません。施設管理者や発注者から被災状況に関する情報を確認するとともに、現場や周辺の危険性を踏まえて、安全に対応できる範囲を判断する必要があります。
通信障害時の連絡方法を決めておく
大規模災害では、携帯電話やインターネットなどが一時的に利用しにくくなることがあります。警備員と管制、管制と発注者との連絡が取れなくなれば、現場の被害状況や警備の継続可否を共有できません。
通常の通信手段が使えない場合の代替手段や、一定時間連絡が取れない場合の対応、管制拠点が被災した場合の引き継ぎ方法などを事前に決めておく必要があります。
必要な人員と交代体制を確認する
災害後に警戒を長時間続ける場合、交代要員の確保が必要になります。一方で、警備員自身やその家族も被災する可能性があるため、通常どおり出勤できるとは限りません。
発災後に出勤可能な警備員をどのように把握するのか、誰が配置を決めるのか、交通機関が停止した場合にどう対応するのかなどを、BCP(事業継続計画)や災害対応マニュアルの中で整理しておく必要があります。
発注者と災害時の対応を共有する
災害時の警備では、施設の閉鎖、警備停止、巡回範囲の変更、警備再開などについて発注者との調整が必要になります。発注者側が「災害時でも通常どおり警備が続く」と認識していると、発災後に警備会社との間で認識のずれが生じる可能性があります。
契約締結時や更新時には、災害発生時にどこまで警備を継続するのか、どのような状況で停止するのかを確認しておくことが重要です。あわせて、警備再開時の判断や発注者との連絡手順についても、自社の災害対応として整理しておくとよいでしょう。
災害時の警備は平常時の備えから始まる
令和8年熊本地震では、被災地での空き巣や詐欺などを防ぐため、約100人の警察官による特別警備部隊が編成され、8月20日時点でパトロールなどを行っていました。災害時には、避難による無人化や建物の損壊、防犯設備が通常どおり機能しなくなる可能性など、平常時とは異なる防犯上の課題が生じます。
警備会社でも、契約施設が被災した場合の警戒方法だけでなく、警備を停止する基準、通信障害時の連絡方法、人員体制、発注者との取り決めまで事前に確認しておく必要があります。
特に、災害時には警備員自身も被災者になる可能性があります。施設の安全確保と警備員の安全確保を両立できるよう、自社のBCPや災害対応マニュアル、警備契約の内容を平常時のうちに見直しておくことが、災害時の警備への備えになります。
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※本記事は公開情報をもとに編集部が作成したものです。特定の企業の法的判断を示すものではありません。