施設内の巡回、異常の検知、施錠の確認といった警備業務を、1台のロボットだけで担うことはできるのでしょうか。
警備ロボットの活用が広がる一方、現場ごとに建物の構造や警備計画が異なるため、特定の機種だけでは対応できる業務に限界があります。また複数の警備ロボットやセンサーを導入すると、それぞれを個別に操作・管理しなければならず、かえって運用が複雑になる可能性もあります。
こうした課題に対して一例として、株式会社ROBOTSはメーカーや種類の異なるロボットを一つの仕組みで動かす「ロボット統合制御基盤」の開発を進めています。同社はNTTドコモの新規事業創出プログラムから独立し、警備分野を最初の社会実装領域に位置付けました。
本記事では、ROBOTSが開発するロボット統合制御基盤の仕組みと、複数の警備ロボットを組み合わせた施設警備、さらにフィジカルAIがもたらす可能性を解説します。あわせて、警備会社が将来の導入に向けて整理しておきたい観点も紹介します。
警備ロボットの活用が求められる背景
警備業界では、採用活動だけで人手不足を解消することが難しくなっています。
警察庁が2025年12月22日に公表した「省力化投資促進プラン―警備業―」によると、2025年9月時点の警備業の有効求人倍率は6.70倍でした。全職業平均の1.10倍を大きく上回っています。
また2024年における65歳以上の労働者の割合は全職業では13.6%であるのに対し、警備業では34.3%でした。警備員の確保が難しいだけでなく、現在働いている人の負担を抑えながら、警備品質を維持する仕組みが求められています。
警察庁も警備ロボットやバーチャル警備システム、警備ドローンなどを活用した施設警備業務の省力化を推進策として挙げています。警備業の労働生産性を、2024年度比で2029年度までに25%向上させる目標も示しました。
もっとも警備ロボットだけで警備員の業務をすべて代替することは困難です。施設ごとに環境や必要な警備内容が異なるため、一つの機種だけでは対応できない場合があります。そのため現場の課題に応じて、複数のロボットやセンサーなどを組み合わせる方法が考えられます。
ROBOTSが開発するロボット統合制御基盤とは
株式会社ROBOTSは、2026年5月に設立されたスタートアップです。NTTドコモグループの新規事業創出プログラム「docomo STARTUP」を通じて生まれた事業構想をもとに、2026年7月15日にNTTドコモからスピンアウトして事業を開始しました。
同社が開発しているのは、警備ロボットそのものではありません。四足歩行ロボット、ロボットアーム、カメラ、各種センサーなど、メーカーや種類の異なる機器を一つの基盤に接続し、連携して動かす「ロボット統合制御基盤」です。
異なるメーカーのロボットを個別に導入すると、操作や管理が分散し、運用が複雑になります。
統合制御基盤では、複数の機器を別々に動かすだけでなく、それぞれの動作を組み合わせます。たとえば四足歩行ロボットが施設内を移動し、目的地に到着した後、ロボットアームを使って対象物を操作するといった連携です。ROBOTSはこの仕組みによって、従来の警備ロボットでは対応が難しかった階段や段差の移動、施錠確認などの実現を目指しています。

複数ロボットを組み合わせた警備は何が変わるのか
施設ごとに必要な機器を組み合わせやすくなる
警備対象施設によって、必要な機能は異なります。
広い物流施設では長距離を巡回できる移動性能が必要です。一方、オフィスビルでは、エレベーターや自動ドアとの連携、施錠状況の確認などが求められる場合があります。
一つの専用ロボットにすべての機能を持たせようとすると、開発期間や費用が大きくなる可能性があります。既存のロボットやセンサーを現場に応じて組み合わせられれば、必要な機能を段階的に追加する運用も可能です。
ROBOTSは既製の高性能ロボットを適材適所で組み合わせることで、専用機をゼロから開発する場合と比べ、短期間・低コストで幅広い現場課題に対応できると説明しています。
ただし具体的な導入費用や導入期間は、2026年7月27日時点では公表されていません。
複数のロボットを連携して動かす仕組み
ROBOTSの発表では、1台のロボットですべての作業に対応することは難しく、作業ごとに専用機を開発する方法にも課題があるとしています。統合制御基盤ではロボットによる移動と、アームによる物体操作などを組み合わせた動作を想定しています。
一方、実際の警備現場でロボットに任せられる範囲は、機器の性能だけでは決まらないものです。警備計画、施設管理者との契約内容、事故発生時の責任分担、通信障害時の対応などを踏まえ、人が行う業務とロボットに任せる業務を明確に分ける必要があります。
複数機器をまとめて管理しやすくなる
異なるメーカーのロボットを個別に導入すると、操作方法や保守窓口、更新時期が機器ごとに異なることがあります。
統合制御基盤によって操作やデータをまとめられれば、監視担当者が複数の画面を確認する負担や、機器ごとに指示を出す手間の軽減が期待されます。
その反面、統合基盤に障害が発生すると、接続する複数のロボットへ影響が広がるおそれがあります。通信が途切れた際に各ロボットが停止するのか、安全な場所へ戻るのかなど、障害時の動作を事前に確認するようにします。
こうした統合制御技術の普及を見据え、警備業界ではロボット導入を前提とした運用体制の見直しも課題になっています。
フィジカルAIは警備業務をどう変えるのか
ROBOTSが研究開発を進めるもう一つの要素が「フィジカルAI」です。フィジカルAIとは、カメラやセンサーなどを通じて現実世界の状況を認識し、判断した結果をロボットの移動や操作といった物理的な動作につなげるAIを指します。
フィジカルAIは現実空間で動作するため、安全性の確保が重要になります。
警備現場での実用化に向けては、AIの性能だけでなく、少なくとも次のような安全面の確認が必要になるでしょう。
・人や障害物を検知した際に安全に停止できるか
・立入禁止区域や運行範囲を設定できるか
・通信障害時にどのような動作をするか
・AIの判断結果や操作履歴を確認できるか
・異常時に警備員が遠隔操作へ切り替えられるか
ROBOTSは現場での運用を通じて得られるデータを活用し、「現場で働くほど賢くなる」基盤として技術を高度化する方針です。
一方で運用データを学習に活用する仕組みと、安全性の確保は分けて考える必要があります。学習に使用するデータの範囲や、更新後の動作確認、想定と異なる判断をした場合の対応方法なども、今後確認したい点です。
ROBOTSは2027年度中の商用化を目指す
NTTドコモの発表によると、ROBOTSは2026年度にパートナー企業との実証実験を行い、その結果を検証したうえで2027年度中の商用化を目指しています。
そのため現時点では、完成した警備ロボットサービスが一般販売されている段階ではありません。今後の実証実験では技術面だけでなく、省力化や警備品質、継続運用の効果が検証の焦点になります。
警備会社が将来の活用可能性を判断するうえでは、実証実験で次のような項目がどこまで検証されるかがテーマになります。
・巡回や監視に必要な人数・時間の変化
・異常の検知率や見落としの発生状況
・警備員による遠隔対応の回数
・機器の停止や通信障害の発生頻度
・保守、充電、設定変更に必要な作業時間
・警備員とロボットを合わせた運用コスト
「ロボットが何をできるか」だけでなく、「人を含めた警備体制全体がどう変わるか」を確認する必要があります。
警備ロボットの活用に向けて整理したい5つのポイント
ROBOTSのロボット統合制御基盤は、今後の実証実験と検証を経て商用化を目指す段階にあります。
現時点では商用化前ですが、将来に備えて自社の業務や施設環境を整理しておくことはできます。
ここでは複数のロボットを組み合わせた警備の活用可能性を検討するために、警備会社が整理しておきたい5つの観点を紹介します。
1.現在の警備業務を作業単位で整理する
将来の活用可能性を検討するためには、警備員が現在行っている業務を作業単位で整理しましょう。
「巡回警備」と大きくまとめるのではなく、移動、目視確認、施錠確認、記録、報告、異常発生時の連絡など、具体的な作業に分けて確認します。
そのうえでロボットに任せられる作業、人による判断が必要な作業、人とロボットが連携して行う作業を整理します。
2.人とロボットの役割分担を考える
警備ロボットの活用を人員削減だけを目的として考えると、人が担うべき業務との整理が不十分になるおそれがあります。
定型的な巡回や連続監視をロボットが担い、警備員は異常時の判断、来訪者対応、緊急対応など、人による対応が必須な業務を担当する形が考えられます。
自社の警備業務のうちロボットに任せられる可能性がある作業と、引き続き人が担うべき作業を整理しておきます。
3.施設設備との連携条件を把握する
警備ロボットを施設内で運用する場合、エレベーター、自動ドア、入退室管理、監視カメラなどとの連携が必要になることがあります。
自社が警備を担当する施設について、ロボットが移動しにくい段差や狭い通路がないか、既存設備との連携をしなければならないかを整理しておくと、将来の導入可能性を判断しやすくなります。
実際に導入を検討する段階ではロボット本体だけでなく、通信環境、施設改修、システム接続などにかかる費用も確認しておきます。
4.機器が停止した場合の対応を想定する
ロボットや統合制御基盤を運用する場合、故障、充電切れ、通信障害、ソフトウェア更新などによる停止を想定する必要があります。
将来導入する場合には、ロボットが停止した際に警備員が巡回を代行するのか、遠隔操作で対応するのかなど、代替手段を用意しないといけません。
ロボットを活用する場合でも、契約上必要な警備業務を継続できる体制が前提となります。
5.活用効果を測る指標を整理する
警備ロボットの活用を検討する際は、どのような効果を期待するのかを明確にしておくべきです。
巡回にかかる時間、異常検知の状況、警備員の業務負担、機器の停止時間など、将来の実証実験や導入時に確認する指標を整理しておくと、活用効果を判断しやすくなります。
実際に実証実験や導入を行う段階では、施設管理者や警備業務の発注者とも評価方法を共有しておきます。

まとめ|警備ロボットは「単体」から「組み合わせて運用する仕組み」へ
ROBOTSが開発するロボット統合制御基盤のポイントは、次の3点です。
・メーカーや種類の異なるロボット、アーム、センサーを一つの基盤で制御する
・移動と物体操作など、複数の機器の動作を組み合わせる
・警備現場の運用データを活用し、フィジカルAIの高度化を目指す
同社は2026年度に実証実験を行い、2027年度中の商用化を目指しています。現時点では導入費用や具体的な提供形態、実証先などは公表されておらず、今後の検証結果を確認する必要があります。
そのため今は自社業務を作業単位で整理し、人とロボットの役割分担を検討しておくことが、将来の導入判断につながります。
警備ロボットの活用を考える際は、機械に警備業務を任せるだけでなく、人との役割分担を考えていきましょう。警備員、ロボット、管制担当者がそれぞれの役割を担い、安全性と警備品質を維持できる運用体制を設計することが重要です。
警備NEXTでは、警備業界の最新動向と実務に役立つ情報を継続的に発信しています。
※本記事は2026年7月27日時点の公開情報をもとに編集部が作成したものです。開発中の技術や今後の計画は変更される可能性があります。特定の製品・サービスの導入または法的判断を推奨するものではありません。
参考・出典
- プレスリリース「株式会社ROBOTS「現場で働くほど賢くなるロボット統合制御基盤のROBOTS、インキュベイトファンド・NTTドコモを引受先にシードラウンドの資金調達を実施」」(2026年7月15日公表)
- プレスリリース「 株式会社NTTドコモ「ロボット統合制御技術の社会実装をめざすスタートアップ『ROBOTS』をスピンアウト」」(2026年7月15日公表)
- 警察庁「省力化投資促進プラン―警備業―」