警備員は台風の日も仕事?悪天候時の勤務基準と安全確保のポイント3選

となりの警備員

台風が接近している日でも、予定している警備業務は通常どおり行うのでしょうか。

警備員の勤務は、台風が来たからといって一律に中止されるものではありません。一方で、屋外での交通誘導や施設周辺の警戒などでは、強風や大雨によって普段とは異なる危険が生じます。

そのため、悪天候時の勤務では「台風だから中止」「予定どおり勤務」という二択ではなく、気象状況と現場環境を確認し、安全を確保できる状態かを判断することが重要です。

本記事では、悪天候時の勤務に関係する法令を確認したうえで、警備会社が現場の安全確保のために確認しておきたいポイントを解説します。

悪天候時も警備員は勤務する?一律の中止基準があるわけではない

台風や大雨の際、警備員の勤務がすべて自動的に中止されるわけではありません。

警備業務には、施設内で行う施設警備、屋外で車両や歩行者を誘導する交通誘導警備、イベント会場周辺で人の流れを整理する雑踏警備などがあります。同じ「警備業務」でも、勤務場所や作業内容によって悪天候の影響は異なります。

例えば、屋内の施設警備と、工事現場付近で車両を誘導する交通誘導警備では、風雨によって生じる危険の種類が同じとは限りません。交通誘導では視界が悪くなったり、路面状況が変化したりすることで、警備員と通行車両との安全な距離を確保しにくくなることがあります。

また、台風そのものの接近だけを見て判断するのも適切ではありません。気象庁は、台風について強風域や暴風域などを示しており、地域ごとの風雨の状況や今後の予報を確認できます。強風域は平均風速15m/s以上、暴風域は平均風速25m/s以上の風が吹く、または吹く可能性がある範囲として定義されています。

したがって、悪天候時の勤務では「台風が来ているか」だけではなく、実際の気象状況と現場で発生する危険を確認することが基本になります。

悪天候時の安全確保に関係する法令を確認する

悪天候時の勤務を考えるうえでは、労働安全衛生関係の法令を確認しておく必要があります。

特に注意したいのが、労働安全衛生規則第522条です。

労働安全衛生規則第522条は「すべての屋外警備」を対象とした規定ではない

労働安全衛生規則第522条は、悪天候時の作業について次のように定めています。

事業者は、高さが二メートル以上の箇所で作業を行う場合において、強風、大雨、大雪等の悪天候のため、当該作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業を行わせてはならない。

ここで重要なのは、高さ2m以上の箇所で行う作業が対象となっていることです。そのため、この条文を「雨や台風の日は警備員の屋外勤務をすべて中止しなければならない」という意味で捉えるのは適切ではありません。

一方で、高所での警備業務など、第522条の対象となる作業について悪天候による危険が予想される場合には、同条の規定を踏まえて対応する必要があります。

「10m/s・50mm・25cm」は警備員の勤務中止ラインではない

悪天候時の安全基準を調べると、「10m/s」「50mm」「25cm」という数字を目にすることがあります。
厚生労働省・労働局の資料では、労働安全衛生規則でいう悪天候の目安として、「強風」は10分間の平均風速10m/s以上、「大雨」は1回の降雨量50mm以上、「大雪」は1回の降雪量25cm以上とされています。

  • 強風:10分間の平均風速が毎秒10m以上
  • 大雨:1回の降雨量が50mm以上
  • 大雪:1回の降雪量が25cm以上

また、実際に悪天候となった場合だけでなく、気象注意報や気象警報が発表され、悪天候になることが予想される場合も含む趣旨とされています。これらの数値をそのまま「交通誘導警備は風速10m/sで中止」「15m/sなら全面撤退」といった警備業務全般の一律の判断基準として扱うことは適切ではありません。
法令上の対象となる作業と、現場ごとの危険性を分けて考えることが必要です。

急迫した危険がある場合、事業者には作業中止・退避などの措置が求められる

さらに、労働安全衛生法第25条では、労働災害発生の急迫した危険があるとき、事業者は直ちに作業を中止し、労働者を作業場から退避させるなど必要な措置を講じなければならないと定めています。

これは悪天候だけを対象とした条文ではありません。しかし、台風や大雨などによって現労働災害発生の急迫した危険が生じている場合には、事業者は作業を中止し、労働者を作業場から退避させるなど必要な措置を講じる必要があります。

また、労働契約法第5条では、使用者に対して、労働者が生命や身体などの安全を確保しながら働けるよう必要な配慮をすることを求めています。

悪天候時の勤務を考える際には、特定の数値だけで判断するのではなく、こうした法令上の考え方と現場の危険性を合わせて確認することが大切です。

悪天候時の警備現場では「天候」と「現場」の両方を確認する

悪天候時の安全確保では、天気予報の数字だけを見て判断するのではなく、実際の現場で何が起きているかを確認する必要があります。

例えば交通誘導警備では、強い雨によって警備員と運転者の双方の視認性が低下することがあります。雨量が増えれば道路が冠水したり、側溝や段差などが見えにくくなったりする場合もあります。

風が強い場合には、工事現場の資材や看板、仮設物などが飛散・転倒する危険にも注意が必要です。警備員が立っている場所そのものに危険がなくても、周囲の構造物や車両、工事資材などによって危険が生じる可能性があります。

さらに、大雨の際には、現場までの移動経路や周辺道路の状況も確認しなければなりません。勤務場所だけでなく、警備員が現場へ向かうまでの経路や、緊急時に退避する場所についても事前に確認しておくと、状況が変化した際に対応しやすくなります。

つまり、悪天候時の勤務判断では「風速が何m/sなら勤務する」という単一の基準だけではなく、その気象条件によって現場でどのような危険が発生しているかを見ることが重要です。

悪天候時の安全確保で警備会社が行いたい3つの実務対応

では、警備会社は台風や大雨などの悪天候に備えて、何を準備しておけばよいのでしょうか。
ポイントは、事前の判断基準、発注者との連絡、現場での退避対応の3つです。

1.悪天候時の勤務判断と連絡方法を決めておく

まず必要なのは、悪天候になった際に誰が状況を確認し、どのような手順で勤務継続や中止などを判断するのかを明確にしておくことです。

「現場が危険になったら判断する」というだけでは、実際に危険が迫った際に連絡や判断が遅れる可能性があります。

そのため、気象庁の警報・注意報や台風情報などを確認する担当者を決め、必要に応じて現場責任者や警備員へ情報を共有できる体制を整えておきます。気象庁では台風の位置や強風域、暴風域などの情報を提供しているため、こうした公的な情報を判断材料の一つとして活用できます。

ただし、気象情報だけで勤務継続を決めるのではなく、現場の状況と組み合わせて判断することが重要です。

2.発注者と「中止・待機・退避」の扱いを事前に確認する

特に交通誘導や工事現場などでは、工事そのものが継続されるのか、作業が一時中断されるのかによって、警備業務の必要性も変わります。

そのため、契約時や業務開始前の段階で、悪天候によって現場作業が中止・延期された場合の警備業務の扱いや、待機が必要になった場合の連絡方法などを発注者と確認しておくことが重要です。

ただし、発注者側が作業を継続する場合でも、警備会社は自社の警備員が安全に勤務できる状況かを確認する必要があります。警備員個人の判断だけに危険時の対応を委ねず、現場責任者や会社との連絡ルートを明確にし、危険が生じた場合には安全な場所へ退避できるよう、会社として判断できる体制を整えておきます。

3.現場ごとの危険箇所と退避場所を確認する

悪天候時の安全確保では、装備だけを整えても十分ではありません。勤務場所の近くに安全に退避できる場所があるか、そこまで移動する経路に危険がないかを事前に確認しておく必要があります。

特に交通誘導では、道路上や工事現場周辺など、通常時から車両との接触リスクがある場所で勤務することがあります。そこに大雨による視界不良や冠水、強風による飛散物などが加われば、通常とは異なる危険が発生します。

そのため、現場ごとに「危険が高まった場合、どこへ移動するのか」「誰に連絡するのか」をあらかじめ確認しておくことが、悪天候時の安全確保につながります。

警備員が台風の日に勤務するとき、確認したいこと

例えば、次のような項目を確認しておくと、勤務判断を整理しやすくなります。

確認項目確認する内容
気象状況気象警報・注意報、台風の進路、風雨の状況
現場の状況視界、道路状況、冠水、飛散・転倒のおそれがある物
作業内容屋外・屋内、高所作業の有無、車両との接触リスク
連絡体制現場責任者、警備会社、発注者への連絡方法
退避方法危険が高まった場合の退避場所と移動経路
記録判断した時刻、気象状況、現場状況、連絡内容

この確認を勤務開始前だけで終わらせず、天候が変化した場合にも再確認できるようにしておくと、現場の状況に応じた判断につなげやすくなります。

特に台風の場合は、接近前と通過時で風雨の状況が変わるため、「朝に問題がなかったから、そのまま勤務を続ける」と固定的に考えないことが重要です。

まとめ|悪天候時の勤務は「数値」だけでなく現場の危険を確認する

警備員は台風の日だからといって、すべての業務が自動的に中止されるわけではありません。一方で、悪天候によって通常とは異なる危険が生じた場合には、安全確保を優先して勤務継続の可否を判断する必要があります。

労働安全衛生規則第522条は、高さ2m以上の箇所での作業について、強風・大雨・大雪などによって危険が予想される場合の作業禁止を定めています。また、厚生労働省の通知では、これらの「強風」「大雨」「大雪」の解釈として10m/s、50mm、25cmという数値が示されています。これらを警備業務全般の一律の勤務中止基準として扱わないことがポイントです。

さらに、労働災害発生の急迫した危険がある場合には、労働安全衛生法第25条に基づき、作業の中止や退避などの必要な措置が求められます。

警備会社としてまず取り組みたいのは、①悪天候時の判断・連絡体制を決める、②発注者と中止・待機・退避時の扱いを確認する、③現場ごとの危険箇所と退避場所を確認するという3点です。

台風が接近してから判断するのではなく、平常時から現場ごとの対応を整理しておくことが、警備員の安全を守るための具体的な備えになります。

警備NEXT(警備ネクスト)では、業界の法令動向や事案を継続的にウォッチし、現場に役立つ視点でお届けしています。

※本記事は公開情報をもとに編集部が作成したものです。特定の企業の法的判断を示すものではありません。

参考・出典

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