建設現場で交通誘導警備を行う際、元請会社や関係事業者との安全管理について、2026年に施行された労働安全衛生法の改正内容まで確認できているでしょうか。
2025年5月14日に「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」(令和7年法律第33号)が公布され、同日から2026年以降にかけて改正内容が段階的に施行されています。今回の改正には建設現場などの混在作業場所における安全衛生対策の対象拡大、高年齢労働者の労働災害防止対策など、警備会社にも関係する内容が含まれています。
ただし交通誘導警備を受託していることだけを理由に、警備会社へ建設現場全体を管理する新たな義務が一律に課されるわけではありません。重要なのは、誰にどのような措置が求められるのかを把握し、警備員が働く現場の安全管理や情報共有に反映することです。
本記事では労働安全衛生法改正のうち、建設現場の安全管理に関係する内容を中心に、高年齢労働者対策や今後のストレスチェック制度の変更も整理します。
労働安全衛生法改正は2026年から段階的に施行
今回の労働安全衛生法改正は、すべての制度が一度に変更されるものではありません。
改正法は2025年5月14日に公布され、一部は同日に施行されました。その後、2026年1月1日、4月1日、10月1日、2027年1月1日、4月1日など、内容ごとに施行日が設定されています。主な改正内容には、個人事業者等の安全衛生対策、職場のメンタルヘルス対策、化学物質による健康障害防止、機械等による労働災害防止、高年齢労働者の労働災害防止、治療と仕事の両立支援などがあります。
このうち、警備会社が確認しておきたい主な内容は次のとおりです。
- 2026年4月1日:混在作業場所における元方事業者等の措置対象を、個人事業者等を含む作業従事者へ拡大
- 2026年4月1日:高年齢労働者の労働災害防止に必要な措置を事業者の努力義務化
- 2027年4月1日:一定の「作業場所管理事業者」に連絡調整等の措置を義務付け (※警備会社であることのみをもって「作業場所管理事業者」に該当するものではなく、実際に仕事を行い、その作業場所を管理する立場にあるかなどによって判断されます)
- 2028年4月1日:労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックを義務化
すでに施行された項目と今後施行される項目があるため、自社に関係する改正内容と施行時期を分けて確認しておきましょう。

2026年の労働安全衛生法改正で建設現場の安全管理はどう変わった?
交通誘導警備との関係が深いのが、個人事業者等の安全衛生対策に関する改正です。今回の改正では、労働者と同じ場所で働く個人事業者等を労働安全衛生法による保護の対象や義務の主体として位置付け、注文者や元方事業者などが講じる措置の対象範囲も見直されました。
混在作業場所の安全対策が個人事業者等にも拡大
建設現場では元請会社だけでなく、複数の請負事業者や関係者が同じ場所で作業することがあります。こうした混在作業場所では異なる作業が同時に進むため、車両・重機と人との接触や、別の作業による危険が生じる場合があります。従来から特定元方事業者や元方事業者には、一定の場合に関係請負人への指導や作業間の連絡調整などの措置が求められてきました。
2026年4月1日からはこうした措置の対象が、労働者から個人事業者等を含む「作業従事者」へ拡大されました。今回の変更は、単に「建設現場の安全基準が厳しくなった」というものではありません。同じ場所で作業する人について、雇用されている労働者だけでなく個人事業者等まで対象を広げ、現場全体で労働災害を防ぐ方向に制度が見直された点がポイントです。
警備会社に建設現場全体の管理義務が課されるわけではない
交通誘導警備員が建設現場に配置されているからといって、その警備会社が直ちに元方事業者として建設現場全体の安全管理を担うわけではありません。労働安全衛生法では、元方事業者、特定元方事業者、注文者、作業場所管理事業者など、それぞれの立場に応じて措置が定められています。
一方、警備会社も事業者として、自社が雇用する警備員について労働安全衛生法上の安全衛生管理を行う必要があります。これは、今回の改正によって初めて生じた義務という意味ではありません。そのため交通誘導警備では、「警備会社にどの義務が追加されたか」だけでなく、現場側が持つ作業情報と、警備会社が行う警備計画や配置が適切につながっているかを確認することが実務上のポイントになります。
例えば工事車両の進入経路や重機の作業範囲が変更されたにもかかわらず、その情報が警備員に伝わらなければ、当初の立ち位置や誘導方法では安全を確保できない場合があります。警備開始前だけでなく、工程や車両動線が変更された場合に、誰から警備会社や現場の警備員へ情報を伝えるのかまで決めておくことがポイントです。

2027年4月からは「作業場所管理事業者」にも新たな義務
2027年4月1日からは、一定の場合に「作業場所管理事業者」に対して新たな連絡調整等の措置が義務付けられます。
作業場所管理事業者とは仕事を自ら行う事業者であって、当該仕事を行う場所を管理するものを指します。2027年4月1日からは業種を問わず、一定の混在作業場所において、自社または請負人の作業従事者のいずれかが危険性または有害性等を勘案して厚生労働省令で定める業務に係る作業を行う場合、作業場所管理事業者に対し、作業間の連絡調整など必要な措置を講じることが求められます。
ただし「現場にいる」「警備を請け負っている」というだけで警備会社が作業場所管理事業者に該当するわけではありません。該当するかどうかは、契約上の地位や名称だけでなく、その現場における実際の管理状況などを踏まえて判断する必要があります。警備会社側では現場の安全衛生管理を誰が担当しているのか、作業変更時の連絡を誰から受けるのかを把握しておくことが事故防止につながります。
労働安全衛生法改正で警備会社が確認したい高年齢労働者対策とストレスチェック
今回の労働安全衛生法改正には、建設現場の安全管理とは別に、警備会社自身の安全衛生管理に関係する変更もあります。なかでも確認しておきたいのが、高年齢労働者の労働災害防止とストレスチェック制度です。
高年齢労働者の労働災害防止対策が努力義務に
2026年4月1日から、事業者には、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善や作業管理など、労働災害を防止するために必要な措置を講じることが努力義務となりました。厚生労働省は改正労働安全衛生法第62条の2第2項に基づき、2026年2月10日に「高年齢者の労働災害防止のための指針」を公表し、同年4月1日から適用しています。
警備業務では、同じ警備員でも現場によって身体的な負担や危険要因が異なります。交通誘導警備では、長時間の立哨、暑熱環境、段差のある場所での移動、車両や重機を確認しながらの誘導などがあります。施設警備でも、長い巡回経路、階段の昇降、夜間勤務など、配置先によって勤務条件は変わります。
警備業では高年齢労働者の労働災害を防止するためにも、年齢だけで配置の可否を決めるのではなく、実際の作業内容や作業環境を確認し、高年齢者の特性を踏まえて安全に勤務できる条件を整えることが必要です。

50人未満の事業場も2028年からストレスチェックが義務化
2026年8月時点ではストレスチェックは、労働者数50人以上の事業場で事業者に実施が義務付けられています。50人未満の事業場については努力義務ですが、2025年の労働安全衛生法改正によって対象が拡大されます。労働者数50人未満の事業場への義務化は、2028年4月1日からです。
したがって2026年8月時点で「50人未満の事業場でもすでにストレスチェックが義務化されている」とするのは正確ではありません。また対象を確認する単位は単純な会社全体の従業員数ではなく「事業場」です。複数の支店や営業所を持つ警備会社では、それぞれについて制度上の対象や実施体制を整理しておきます。
警備業では、警備員が本社や営業所ではなく契約先へ直行・直帰する勤務形態もあります。義務化に備え、対象者への案内や受検できる環境をどのように整えるかも検討しておく必要があります。
警備会社が確認したい5つの安全管理ポイント
法改正の内容を把握したら、自社の現場運用と照らし合わせます。交通誘導警備における労働災害を防止するためにも、次の5項目を確認すると整理しやすくなります。
1.現場の安全衛生管理体制を確認する
まず、その現場で安全衛生上の連絡調整を担う担当者を特定します。元請会社や関係事業者の窓口を把握し、作業情報や変更情報が誰から警備会社へ伝えられるのか、連絡経路を明確にしておきましょう。
2.警備員の配置と車両・重機の動線を事前にすり合わせる
交通誘導警備員の立ち位置に加え、工事車両の進入・退出経路、重機の作業範囲、一般車両や歩行者の通行経路を事前にすり合わせます。工事の進行によって動線が変わる場合は、変更後の配置や誘導方法についてもあらかじめ想定しておくことが重要です。
3.作業変更時の連絡ルールを決める
工事現場では、工程や作業内容、使用する車両などが予定から変わることがあります。変更が生じた場合に誰が警備会社へ連絡するのか、現場の警備員へ誰が伝えるのか、誘導方法を変更する際に誰が判断するのかなど、情報伝達の流れをあらかじめ決めておきます。
4.高年齢警備員が勤務する現場の負担を確認する
長時間の立哨、巡回距離、階段や段差、照度、暑熱環境、勤務時間などを確認し、その現場で安全に勤務するために必要な作業環境や作業方法を検討します。一律に年齢だけで判断するのではなく、現場のリスクと実際の勤務条件を確認することが基本です。
5.今後施行される制度の準備時期を整理する
2027年4月1日には作業場所管理事業者への連絡調整措置が義務付けられ、2028年4月1日には労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。自社に関係する制度について、対象となる現場や事業場、現在の運用との差をあらかじめ整理しておきます。
まとめ|法改正を機に建設現場の情報共有を確認する
2025年に公布された労働安全衛生法改正は、2026年以降、段階的に施行されています。
2026年の改正では、混在作業場所における安全衛生対策の対象拡大や、高年齢労働者の労働災害防止対策など、警備会社にも関係する制度変更が行われました。さらに2027年には作業場所管理事業者に関する措置、2028年には50人未満の事業場へのストレスチェック義務化も控えています。
ただし交通誘導警備を受託していることだけを理由に、警備会社が建設現場全体の安全管理を担うわけではありません。重要なのは元請会社など現場側との役割分担を把握し、工事内容や車両・重機の動線、作業変更などの情報が警備員まで確実に届く体制を整えることです。
法改正への対応を制度の確認だけで終わらせず、現在受託している現場の「安全管理の担当者」「警備員の配置」「車両・重機の動線」「作業変更時の連絡方法」を改めて見直してみてください。
警備NEXT(警備ネクスト)では、業界の法令動向や事案を継続的にウォッチし、現場に役立つ視点でお届けしています。
※本記事は2026年8月18日時点の厚生労働省公表資料などの公開情報をもとに編集部が作成したものです。個別の現場や契約関係における法令の適用については、所轄の労働基準監督署や専門家等へご確認ください。特定の企業の法的判断を示すものではありません。