警備業界でも始まるAI活用|経営者が知っておきたい実践例

テクノロジー

警備業界でも、少しずつ「AI」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
以前は、“AI活用”というと大手企業やIT業界の話という印象が強く、警備会社とは距離のあるテーマに感じられていたかもしれません。しかし現在は、人手不足や管理業務の増加を背景に、警備業界でもAIを活用した業務改善が始まりつつあります。
特に近年は、

  • 隊員配置やシフト調整に時間がかかる
  • 応募対応や採用活動の負担が大きい
  • ベテラン社員のノウハウ継承が難しい
  • 日報や提案書など書類作成業務が増えている

といった課題を抱える警備会社も少なくありません。

そうした中で注目されているのが、“人を減らすため”ではなく、“限られた人数で現場を回すため”のAI活用です。AIが警備員そのものを置き換える時代は、まだ現実的ではありません。しかし今後は、「AIをどう使うか」によって、業務効率や採用力に差が生まれる可能性があります。

本記事では、警備業界で始まりつつあるAI活用の実践例や、経営者が今知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。

なぜ今、警備業界でAI活用が注目されているのか

以前は、警備業界とAIは“遠い存在”という印象がありました。
警備業務は現場対応が中心であり、人による判断やコミュニケーションが重要な仕事です。そのため、「AIでは代替できない」という見方も多くありました。しかし近年、その考え方に少しずつ変化が起きています。背景にあるのは、深刻な人手不足です。警備業界では高齢化が進む一方で、若年層採用は難しさを増しています。さらに近年は、人手不足や管理業務の複雑化によって、管制担当者や現場責任者への負担も大きくなっています。
例えば、

  • 隊員配置やシフト調整に時間がかかる
  • 応募者対応や採用活動の負担が大きい
  • 教育やノウハウが属人化している
  • 日報や報告書など事務作業が増えている

など、多くの業務を少人数で回しているケースも少なくありません。

特に中小警備会社では、「管制担当が採用も総務も兼務している」という状況も珍しくありません。つまり現在の警備業界では、“人が足りない”だけではなく、“管理業務が増えすぎている”ことも大きな課題になっているのです。

こうした管理業務の負担軽減策の一つとして、注目され始めているのがAIによる業務支援です。AIは、現場警備そのものを代替するというより、“人が行っていた事務・確認・整理業務を補助する存在”として導入が進み始めています。

管制・シフト調整業務で期待されるAI活用

管制・シフト調整業務の補助

警備会社の運営において、最も負担が集中しやすい業務のひとつが管制業務です。

特に交通誘導警備では、毎日のように現場数や必要人数が変動します。さらに、有資格者配置、隊員ごとの経験差、移動距離、連勤状況など、多くの条件を考慮しながら配置を調整する必要があります。そのため、ベテラン管制担当者の経験や判断に依存している企業も少なくありません。こうした課題に対し、近年はさまざまな業界でAIや最適化技術を活用したシフト作成支援が進んでいます。警備業界においても、資格情報や勤務実績、移動距離などのデータを活用し、配置計画を支援する仕組みへの期待が高まっています。

例えば、必要資格を満たす隊員の抽出や、連勤状況の確認、移動負担を考慮した配置候補の作成などは、AIやデータ活用によって効率化できる可能性があります。もちろん、現場特性や顧客との関係性、隊員の適性といった要素は人による判断が欠かせません。しかし、経験豊富な管制担当者のノウハウをデータとして活用し、業務負担を軽減する取り組みは、今後の警備業界でも注目されるテーマのひとつになりそうです。

AIカメラによる異常検知

施設警備や巡回警備の分野では、AIカメラ活用も少しずつ広がり始めています。
従来の監視カメラは、主に「録画すること」が役割でした。つまり、何か問題が起きたあとに映像を確認する、“事後確認”が中心だったのです。しかし現在は、AIによる映像解析技術の進化によって、「異常をリアルタイムで検知する」方向へ変わり始めています。
例えば近年のAIカメラでは、

  • 立入禁止エリアへの侵入
  • 長時間の滞留
  • 不自然な動き
  • 転倒
  • 煙や火災の兆候

などを自動検知するシステムも増えています。特に大型商業施設や物流施設では、すべてを人の目だけで常時監視し続けることが難しくなっています。警備員が複数モニターを長時間確認し続ける業務では、どうしても“見落とし”リスクが発生します。深夜帯や長時間勤務では、集中力低下も避けられません。そこで現在は、「AIが先に異常候補を検知し、人が確認・判断する」という役割分担が広がり始めています。

例えば、“人が倒れている可能性”をAIが検知した場合、警備員へ通知を送り、現場確認につなげる仕組みなども登場しています。また最近では、防犯だけではなく、“安全管理”目的でAIカメラを導入するケースも増えています。物流倉庫や工場では、「危険エリアへの侵入」「ヘルメット未着用」「作業員の異常行動」などをAIが検知する仕組みも導入され始めています。これは単なる監視強化ではありません。

人手不足が進む中、“限られた人数でも安全レベルを維持する”ための支援技術としてAIが活用され始めているのです。もちろん、現時点ではAIだけで警備が完結するわけではありません。

例えば不審者対応や緊急時対応では、現場状況に応じた判断やコミュニケーションが必要になります。そのため現在のAIカメラは、“警備員を不要にするもの”というより、“警備員が異常を見つけやすくする補助技術”としての役割が大きいと言えるでしょう。今後は施設警備だけではなく、交通誘導現場やイベント警備などでも、AIによる安全確認支援が広がっていく可能性があります。

報告書・書類作成の効率化

近年、生成AI活用として特に注目されているのが、文章作成支援です。
警備業界では、

  • 日報
  • 事故報告書
  • 提案資料
  • 教育マニュアル
  • 求人原稿

など、多くの文章業務が発生します。しかし実際には、「書類作成に時間が取られている」という現場も少なくありません。現在は生成AIを活用することで、「文章のたたき台を作る」「内容を整理する」「表現を分かりやすくする」といった使い方を行う企業も増えています。特に警備会社では、“現場経験は豊富だが文章作成が苦手”というケースも多いため、AIが“整理役”として機能する場面が増えていく可能性があります。

AIは警備員の仕事を奪うのか

AI活用が進む中で、「警備員の仕事がなくなるのでは」という不安の声もあります。ただ現時点では、警備業界において“完全無人化”が急速に進む可能性は高くありません。理由は、警備業務が“人との対応”を多く含むからです。

例えば交通誘導では、「現場状況の瞬間判断」「歩行者対応」「イレギュラー対応」「クレーム対応」など、人による柔軟な判断が必要になります。また施設警備でも、来館者対応や緊急時対応など、“安心感を与える存在”としての役割があります。つまりAIは、“警備員を不要にする技術”というより、“限られた人数で現場を回すための支援技術”として広がる可能性が高いのです。

実際、警備業界は慢性的な人手不足状態にあります。そのため今後は、「AIか人か」ではなく、“AIを活用しながら人をどう活かすか”が重要テーマになっていくでしょう。

警備会社経営者が今考えるべきこと

現在のAI活用は、“大規模システム導入”だけではありません。
むしろ最近は、

  • 日報・報告書作成
  • 求人原稿作成
  • 教育資料作成
  • 社内問い合わせ対応

など、小さな業務改善から始める企業が増えています。
重要なのは、「AIを導入すること」そのものではなく、“どの業務負担を減らしたいのか”を明確にすることです。

例えば、「管制担当の残業を減らしたい」「教育時間を短縮したい」「採用対応を早くしたい」など、現場課題から考えることで、AI活用は現実的になります。今後、警備業界の人手不足はさらに進む可能性があります。だからこそ経営者には、“人だけで回す前提”を見直す視点も求められ始めています。AIは人を減らすためのものではなく、人が本来行うべき判断や顧客対応に集中するための支援ツールとして活用できます。

まとめ|AI活用は「未来の話」ではなくなっている

以前まで、AIは警備業界とは縁遠い存在と思われていました。しかし現在は、人手不足や管理負担増加を背景に、AI活用が少しずつ現実のものになり始めています。もちろん、警備業務そのものがすぐ無人化されるわけではありません。
ただ今後は、

  • 管制・シフト調整支援
  • 日報や報告書の作成支援
  • AIカメラによる映像解析
  • 採用や教育業務の支援

など、“人の負担を減らすAI”は増えていく可能性があります。

そして重要なのは、AI導入そのものではなく、“現場負担をどう減らすか”という視点です。警備業界は今、大きな変化の入り口に立っています。だからこそ今後は、「AIを使うかどうか」ではなく、“AIをどう現場に活かすか”が、会社ごとの差になっていくのかもしれません。

警備NEXTでは今後も、警備業界のDX・AI活用・業務改善に関する最新情報を継続的に発信していきます。

関連記事

TOP
CLOSE