警備会社はなぜ給与だけでは採用できないのか?第三の賃金という考え方

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警備会社の採用で「人が集まらない」と感じている方は多いのではないでしょうか。

警備会社の採用において、給与を上げても人が集まらない状況は珍しくありません。警察庁の「令和6年における警備業の概況」によれば、警備員の在職1年未満は17.6%、在職3年未満では38.4%に達しています。入社しても早い段階で退職・離職につながるケースが多いのが現実です。

こうした状況の中で、採用にかけた広告費や教育コストが回収できないまま終わるケースも増えています。

本記事では、警備会社の採用がうまくいかない原因を整理し、給与だけに頼らない「第三の賃金」の考え方と具体的な対策を解説します。

警備会社の採用はなぜうまくいかないのか

警備会社の採用が難しくなっている背景には、複数の要因がありますが、最も大きいのは「給与で差がつきにくくなっていること」です。

厚生労働省の発表によると、令和6年度の地域別最低賃金の答申における全国加重平均額は1,121円です。

このような最低賃金は近年継続的に引き上げられており、賃金水準全体が底上げされています。その結果、求職者は単純な時給ではなく、「負担と見合っているか」という観点で仕事を選ぶようになっています。

さらに、需給の面でも厳しい状況が続いています。厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和4年度分)」では、保安業の有効求人倍率は約6~7倍と非常に高い水準です。これは、求人数に対して求職者が大幅に不足している、いわゆる売り手市場の状態を示しています。

加えて、警備業界は中小企業が中心です。警察庁のデータでは、警備業者の90.2%が警備員100人未満の規模となっています。

出典|警察庁「令和6年における警備業の概況」

多くの会社にとって、給与で競争し続けることは現実的ではありません。こうした背景から、「給与を上げれば解決する」という前提自体が成り立ちにくくなっているのが現状です。

第採用改善の鍵となる「第三の賃金」とは何か

一般的に「第三の賃金」とは、福利厚生を通じて実質的な手取りを増やす取り組みを指します。住宅手当や食事補助、健康支援などが代表的な例です。これらは企業選びの重要な判断材料であり、整備されていることが前提となりつつあります。

こうした考え方は、いわゆる「第三の賃上げ」とも呼ばれ、賃上げを次の3つに分けて捉える文脈で語られることが一般的です。第1の賃上げは定期昇給、第2の賃上げはベースアップ、そして第3の賃上げが福利厚生を通じた実質的な手取りの増加です。

福利厚生以外に調査が示すもう一つの条件

実際に、プロキャス警備が行った警備員を対象とした調査でも、働き続けたい職場の条件として「福利厚生が充実(34.8%)」と「シフト対応が柔軟(34.8%)」が同率で最も多く挙げられています。

出典|プロキャス警備調べ(株式会社PROCAN)

このように、福利厚生は採用や定着において重要な要素であることは間違いありません。

一方で、同時に「シフト対応の柔軟性」といった日々の働きやすさも同じ水準で重視されている実態が見えてきます。

警備業の採用現場では、この第3の賃上げ(福利厚生)だけで応募や定着が大きく改善するケースは多くありません。なぜなら、警備業は現場ごとに勤務条件や拘束時間、移動負担などが異なり、実際の働きやすさが就業継続に直結しやすい構造にあるためです。

シフトの柔軟性や連絡の負担の少なさ、業務の分かりやすさといった要素は、給与には直接表れないものの、「ここなら続けられる」と感じる重要な判断材料になります。

つまり、福利厚生が“前提条件”だとすれば、働きやすさは“選ばれる理由”です。この違いを理解することが、採用改善の出発点になります。

採用後に定着しない理由と現場の実態

採用がうまくいかない要因は「応募が来ないこと」だけではありません。採用しても定着しないことで、結果的に人が足りない状態が続いているケースも多く見られます。

では実際に、なぜ採用しても定着しないのでしょうか。

大きな要因のひとつが、入社後に感じる「思っていた働き方と違う」というギャップです。求人情報では見えにくい運用上の問題が、入社後に顕在化します。代表的なのが、欠員対応の連絡です。従来は、担当者が電話で個別に連絡を取り、人員を確保する方法が一般的でした。この方法では、対応に時間がかかるだけでなく、受け手にとって「断りにくい」という心理的な負担が生まれます。

また、シフトの変更が頻繁に発生する、現場ごとのルールが共有されていない、といった状況もストレスの原因になります。新人にとっては、「毎回聞かないとわからない」「現場ごとにやり方が違う」といった状態になりやすく、結果として定着しにくくなります。

こうした問題は、個人の能力ではなく、業務の設計に起因しています。実際の業務フローを整理すると、以下のような違いが見えてきます。

多くの警備会社では、電話による個別連絡、紙やExcelでの管理、口頭での情報共有が中心となっています。一方で、運用を見直した企業では、一斉配信による連絡やデータの集約、情報の共有が進んでおり、業務の進め方に差が生まれています。

この違いは単なる効率化ではなく、「働きやすさ」に直結します。連絡の負担が減り、業務の見通しが立つことで、心理的なストレスも軽減されます。

警備会社の採用を改善するための具体策

採用と定着を改善するためには、大きな投資よりも「現場の運用をどう設計するか」が重要です。具体的には、次のような改善が有効です。

シフト管理の可視化

希望休の提出方法やシフトの反映状況が見えない状態は、現場の不安につながります。
LINEやフォームなどを活用して提出方法を統一し、誰でも確認できる形で管理するだけでも、「自分の予定がどうなるか分からない」という不安は大きく減ります。

連絡の仕組み化

欠員対応や日々の連絡を個別の電話に頼っていると、管理側・現場側の双方に負担がかかります。
一斉配信による自己申告型の運用に切り替えることで、「断りにくい」という心理的負担が減り、連絡の効率も大きく改善されます。

業務情報の見える化

現場ごとの注意事項や配置情報が共有されていない場合、新人は毎回確認しながら動くことになります。
あらかじめ情報を整理し、誰でもアクセスできる状態にしておくことで、現場ごとの差による混乱を防ぐことができます。

DXで運用を仕組み化する

ここまでの改善は、デジタルツールを活用することでさらに効果を高めることができます。

警備の現場ではこれまで、電話や紙、担当者の目視によって状況を把握することが一般的でした。しかし、スマートフォンやシステムを活用することで、シフト管理や連絡、出発・到着の報告といった業務を一元化できます。

例えば、シフトや連絡はアプリ上で完結し、出発・到着もスマートフォンから簡単に報告できるようになります。報告がない場合のみ自動で通知される仕組みにすることで、「全員に確認する」必要がなくなります。

また、誰がどの現場にいるのかといった情報も画面上で即座に把握できるため、これまでのように電話で状況を確認する必要がなくなります。

この変化は、「確認しにいく管理」から「見れば分かる管理」への転換です。

結果として、確認作業や連絡待ちの時間が減り、管理業務の負担が軽くなります。少ない人数でも現場を回しやすくなり、働く側にとっても無駄な連絡に追われない環境が整います。

こうした状態は、給与には直接表れないものの、「働きやすさ」として実感される重要な価値です。
DXによる運用改善は、第三の賃金を具体的に形にする手段のひとつといえます。

まとめ

警備会社の採用を改善するには、給与や福利厚生だけでなく、シフトや連絡、情報共有といった日々の働きやすさまで見直す必要があります。そして、こうした働きやすさは「第三の賃金」として、採用と定着の両方に影響します。

重要なのは、「福利厚生を整えるか」だけではなく、「現場の運用が働きやすい状態になっているか」です。ここが整っていなければ、給与を上げても定着にはつながりません。

まずは、自社の運用が次の状態になっているかを確認してみてください。

  • シフトが事前に見通せる状態になっているか
  • 欠員対応が電話に依存していないか
  • 新人が迷わず動ける情報共有ができているか

もしいずれかに課題がある場合は、その1つを改善するだけでも現場の負担は大きく変わります。ツールの導入を検討する前に、まずは1つの運用から見直すことが、「人が集まらない状態」を変える最初の一手になります。

警備NEXT(警備ネクスト)では、警備業界の最新動向と実務に役立つ情報を継続的に発信しています。

参考文献

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