巡回警備のDX事例|GPSとライブ映像で変わる情報共有の仕組みとは

テクノロジー

「現場の状況が分からないので判断できない」
巡回警備の現場では、こうした課題が発生することがあります。

施設警備とは異なり、巡回警備では警備員が車両や徒歩で広範囲を移動しながら業務を行います。そのため、現場で何が起きているのかを管理者がリアルタイムで把握することは簡単ではありません。近年は警備員不足や高齢化が進む中、複数の現場を少人数で管理する必要性が高まっています。こうした状況のなか、電話や無線だけに頼らない情報共有の仕組みづくりが求められています。

2026年5月、シンテイ警備株式会社は、株式会社サイエンスアーツが提供するコミュニケーションサービス「Buddycom(バディコム)」の導入事例を公表しました。

本記事では、この事例をもとに巡回警備における情報共有の課題と、警備DXによって現場運営がどのように変わるのかを解説します。

なぜ今、巡回警備の情報共有が課題になっているのか

巡回警備は、車両や徒歩で担当エリアを巡回しながら、防犯や異常の有無を確認する業務です。常駐型の施設警備と比べると、警備員と管理者が離れた場所で業務を行う時間が長くなります。そのため、現場で発生した事象を迅速かつ正確に共有することが重要になります。

しかし実際には、電話や無線による連絡が中心となっているケースも少なくありません。

例えば、不審者対応や事故対応が発生した際、警備員は現場の状況を言葉で説明しなければなりません。管理者はその説明をもとに判断するため、情報量には限界があります。

また、巡回車両を複数運用している場合には、どの車両が現場に近いのかを把握するために個別連絡が必要になることもあります。

こうした課題は以前から存在していましたが、人手不足によって管理負担が増加している現在、より大きなテーマになっています。そのため近年は、勤怠管理やシフト管理だけでなく、現場との情報共有を効率化するツールへの関心も高まっています。

Buddycomとはどんなサービスか

Buddycomは、株式会社サイエンスアーツが提供するクラウド型コミュニケーションサービスです。

スマートフォンやタブレットにアプリをインストールし、4G・5G・Wi-Fiなどの通信回線を利用することで、業務用無線機やトランシーバーのように複数人と同時に音声連絡を行うことができます。特徴は、音声連絡だけでなく、位置情報共有やライブ映像配信、テキストチャットなどの機能を利用できる点です。

また、音声内容をテキスト化する機能も備えており、過去のやり取りを確認しながら報告書作成などに活用することもできます。

サイエンスアーツによると、Buddycomは航空、鉄道、建設、福祉、流通など幅広い業界で導入されており、警備業界でも活用が広がっています。

今回のシンテイ警備の事例では、位置情報共有やライブ映像配信機能を活用し、管理者が現場状況を把握しやすい運用が行われています。

シンテイ警備の事例に見る巡回警備DX

シンテイ警備株式会社では、巡回警備における情報共有の効率化を目的としてBuddycomを導入しました。

発表によると、導入前はSMSや電話が主な連絡手段となっており、巡回車両の位置確認や現場状況の共有に時間を要していたといいます。

導入後はGPSによる位置情報共有やライブ映像配信、音声テキスト化などの機能を活用し、巡回時のリアルタイムな情報共有と的確な指示につなげています。

導入前後の変化を整理すると、次のようになります。

項目導入前導入後
情報共有SMS・電話中心音声・チャットでリアルタイム共有
車両管理電話で現在地を確認GPSで位置を可視化
現場確認口頭説明が中心ライブ映像で状況共有
報告業務音声通話の内容を報告書へ反映する必要があったテキスト化された通話履歴を確認しながら報告書を作成
指示伝達個別連絡が中心状況を共有しながら迅速に指示

それでは、それぞれの変化を見ていきましょう。

電話・SMS中心だった情報共有をリアルタイム化

導入前はSMSや電話が主な連絡手段となっていました。また、業務用スマートフォンも一部メンバーしか所持していなかったため、情報共有に時間がかかる場面があったといいます。

巡回警備では、管理者と現場が離れていることが多く、日常的な連絡が積み重なることで業務負担が増加します。

シンテイ警備によると、Buddycom導入後は音声やチャットを活用したリアルタイムな情報共有が可能となり、現場と管理者の連携強化につながっているとしています。

巡回車両の位置把握をGPSで可視化

導入前は、巡回車両の現在地を確認するために個別に電話連絡を行っていたとされています。管理者は各車両の位置を確認したうえで指示を出す必要があり、対応までに時間を要することもありました。

導入後はマップ機能を活用し、巡回車両の位置をリアルタイムで確認できるようになりました。シンテイ警備によると、マップ機能の活用により、最寄りの車両への連絡や指示を行いやすい環境づくりにつなげているとしています。

ライブ映像と音声テキスト化で現場対応を支援

従来は、事件や事故が発生した場合でも、管理者は警備員からの口頭説明をもとに状況を判断する必要がありました。

導入後はライブ映像機能を活用し、管理者が遠隔から現場状況を確認できるようになりました。

さらに、音声内容がテキスト化されることで、通話履歴を見返しながら報告書を作成できるようになり、音声内容をテキストで確認できることから、報告書作成時の確認作業にも活用しているとしています。

この事例から警備会社が学べること

今回の事例から見えてくるのは、警備DXの対象が勤怠管理やシフト管理だけではないという点です。

警備業界ではDXというと、勤怠管理やシフト管理、給与計算などのバックオフィス業務に注目が集まりがちです。

しかし今回のシンテイ警備の事例は、GPSや映像共有といった個別機能ではなく、「現場の見える化」を実現している点に特徴があります。巡回警備やパトロール業務を行う警備会社では、まず現場との連絡手段や報告フローを見直し、自社の情報共有にどのような課題があるのかを整理することが重要です。

また、今回の事例で示された「現場の見える化」という考え方は、巡回警備だけでなく、施設警備や交通誘導警備における情報共有の改善を考えるうえでも参考になるでしょう。現場責任者が離れた場所から状況を把握できる仕組みは、応援配置やトラブル対応の判断を支援する手段の一つになり得ます。

また、どれだけ高機能なシステムでも、現場で使われなければ意味がありません。

導入を検討する際は機能だけでなく、操作性や教育負担、高齢隊員でも利用しやすいかといった視点も欠かせません。

巡回警備のDXは「現場の見える化」から

今回のシンテイ警備の事例は、GPSやライブ映像を活用しながら、巡回警備における情報共有の強化を図る取り組みとして注目されます。

警備業界では勤怠管理やシフト管理のデジタル化が進む一方で、現場との情報共有も重要なテーマとなっています。今回の事例は、巡回警備におけるDX活用の一例として参考になりそうです。

警備NEXTでは、業界の法令動向や事案を継続的にウォッチし、現場に役立つ視点でお届けしています。
※本記事は公開情報をもとに編集部が作成したものです。特定の企業の法的判断を示すものではありません。

参考文献

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