猛暑の警備現場で、「空調服を着ているのに頭が熱い」と感じたことはないでしょうか。
近年、警備業界ではファン付き作業着の導入が急速に進み、夏場の熱中症対策として定着しつつあります。しかし実際の現場では、「体は涼しくても頭部の暑さが厳しい」という声も少なくありません。特に交通誘導警備(工事現場等での車両・歩行者の誘導業務)は、直射日光の下でヘルメット着用が必須となるケースが多く、頭部の熱こもりは深刻な課題です。
そうした中、ヘルメット内部温度を最大約−6℃低減するとされる新装備が登場し、建設・警備業界から注目を集めています。
本記事では、今回発表された新製品の特徴を紹介しながら、警備業界における“頭部冷却”の重要性と、これからの熱中症対策の考え方について解説します。
なぜ今、「頭部の暑さ対策」が注目されているのか
近年の夏は、警備業界にとって“危険な暑さ”と言われるレベルに達しています。2025年6月からは、熱中症のおそれがある労働者を早期に発見し、重篤化を防ぐための体制整備が事業者に義務付けられました。警備会社においても、空調服や飲料支給だけでなく、現場環境に応じた装備選定や運用体制の見直しが求められています。
警備業務では、安全管理上ヘルメット着用が必要になる場面が多くあります。特に交通誘導警備では、直射日光を受けながら長時間立哨するケースも多く、ヘルメット内部に熱がこもりやすい環境になっています。
また、日陰の少ない道路工事現場や駐車場警備など、直射日光を避けにくい現場も少なくありません。誘導業務では常に周囲の状況を確認しながら車両や歩行者を安全に誘導する必要があり、暑さによる疲労や集中力の低下は安全管理上のリスクにもつながります。
現場では、「ファン付き作業服を着ていても頭の暑さが気になる」といった声も聞かれます。ヘルメット内部に熱がこもることで不快感が増し、長時間の業務負担につながるケースもあります。
プロキャス警備が昨年7月に発表した調査では、若手警備員の約7割が熱中症を経験したと回答しており、警備現場における暑熱リスクの高さが改めて明らかになっています。

ヘルメット内部温度−6℃をうたう新装備とは
そうした中、ものづくりを通じて作業現場の快適化を支援する 株式会社ジュトク は、ヘルメット内部の温度上昇を抑える冷却デバイスの改良モデルを発表しました。
今回リリースされた製品は、既存モデルをベースに、実際の現場利用者から寄せられた声をもとにアップデートされた「ブリーズダクトA(アドバンス)」です。警備業界や建設現場など、炎天下で長時間ヘルメットを着用する作業環境を想定し、「より現場で使いやすいこと」を重視して改良が行われています。

特徴的なのは、空調ウェアと組み合わせて使用する構造です。
近年、警備業界でもファン付き作業服の導入は急速に進みました。しかし実際の現場では、「身体は涼しくても、ヘルメットの中が暑い」という声が以前から少なくありませんでした。今回の製品は、そうした“頭部の熱だまり”に着目した装備です。空調ウェアから送られる風を専用ダクトによってヘルメット内部へ誘導し、内部を常時換気することで蒸れを軽減。さらにネックカバー構造を採用することで、風が頭部へ届く前に外へ逃げにくい設計になっています。

リリースでは、こうした送風構造によってヘルメット内部温度を最大約−6℃低減できるとしています。
さらに今回の改良モデルでは、遮熱性を高めたチタンコーティング生地も採用されています。直射日光による熱を遮りながら、送風による換気と組み合わせることで、首まわりや後頭部の暑さ負担軽減を目指しています。
また、現場導入のしやすさも特徴のひとつです。新たな電動機器を追加するのではなく、既存の空調ウェアを活用し、現在使用しているヘルメットへ装着する構造になっているため、大掛かりな設備変更が不要です。電気機械部品を持たない構造のため、故障リスクを抑えながら繰り返し使用できる点も、現場運用を意識した設計と言えるでしょう。警備会社では、隊員数分の装備をそろえる必要があるため、導入コストやメンテナンス負担は重要な検討ポイントになります。そうした意味でも、「今ある装備を活かせる」という考え方は、導入ハードルを下げる要素になりそうです。

さらに安全面への配慮も意識されています。
警備現場では、無線連絡や周囲の車両音、現場指示を聞き逃さないことが非常に重要です。そのため、耳元を覆うタイプの冷却装備は、現場によっては使いづらさが課題になることもありました。今回の製品は耳を塞がない構造を採用しており、耳元でファン音が発生しにくい設計になっています。暑さ対策だけでなく、「現場で安全に使えるか」まで考慮されている点は、警備業界においても重要なポイントと言えるでしょう。
近年の暑熱対策は、「とにかく冷えるか」だけではなく、“長時間の現場で無理なく使い続けられるか”が重視されるようになっています。今回の改良モデルも、単なるスペック向上ではなく、「実際に使う現場の不満や使いづらさをどう改善するか」という視点でアップデートされている点が特徴的です。
警備業界でも今後は、こうした“現場目線で進化する暑熱対策装備”への注目がさらに高まっていくかもしれません。
「暑さに耐える」ではなく「暑さを管理する」時代へ
以前の警備現場では、「夏は厳しくて当たり前」という空気もありました。
しかし近年は、猛暑による労働災害や熱中症事故が社会問題化しており、厚生労働省も「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を通じて対策強化を呼びかけています。現在は、WBGT(暑さ指数)を活用した現場管理や、重篤化防止体制の整備など、“会社として暑さを管理すること”が求められる時代になっています。
つまり、隊員個人の我慢や経験だけに頼る運営では限界が出始めているのです。特に警備業界では、長時間屋外に立つケースも多く、現場環境によって暑さリスクが大きく変わります。だからこそ今後は、「ファン付き作業服を支給したから終わり」ではなく、「その現場に合った対策ができているか」という視点が重要になります。
日陰休憩場所の確保、休憩回数の見直し、冷却装備の導入などを組み合わせながら、“暑さを前提にした現場設計”が必要になっていくでしょう。
現場装備は「高性能」より「使い続けられるか」が重要
警備業界では近年、多くの暑熱対策グッズが登場しています。
ただ実際には、「導入したけれど現場で定着しなかった」というケースも少なくありません。警備業務は長時間着用が前提となるため、スペックだけではなく“現場で使い続けられるか”が非常に重要です。例えば、重量が重かったり、違和感が強かったりすると、最初は使われても徐々に使用率が下がることがあります。また、バッテリー管理やメンテナンス負担が大きい製品は、現場運用に乗りづらいケースもあります。
そのため現在は、「どれだけ高性能か」だけではなく、“現場に馴染むか”も重視されるようになっています。今回のような頭部冷却装備も、今後は実際の警備現場でどこまで快適性や使いやすさを両立できるかが、導入拡大のポイントになっていきそうです。
まとめ|これからの警備業界は「頭部冷却」も重要テーマになる
今回発表されたヘルメット内部冷却装備は、警備業界の熱中症対策が新たな段階に入り始めていることを象徴しています。ファン付き作業調服の普及によって警備現場の暑熱対策は進みましたが、猛暑の長期化により新たな課題も見え始めています。
今後は「ファン付き作業服を支給して終わり」ではなく、頭部冷却や休憩管理、WBGT管理などを組み合わせた総合的な熱中症対策が重要になります。隊員の安全確保と定着率向上の両面から、暑さ対策への投資は今後さらに重要な経営課題になっていくでしょう。
警備NEXTでは今後も、警備業界の暑熱対策・安全装備・現場改善に関する最新情報を継続的に発信していきます。
参考文献
株式会社ジュトクプレスリリース「酷暑の現場を、特許技術が変える ヘルメット内部温度 −6℃を実現した「ブリーズダクトA(アドバンス)」新発売」(2026年5月12日公表)