夏場の警備現場では、熱中症対策が欠かせません。交通誘導警備では直射日光やアスファルトからの照り返し、車両の排熱などにさらされることがあります。施設警備でも、屋外巡回や出入口対応、駐車場対応など、暑さの影響を受ける場面は少なくありません。
水分・塩分の補給、適切な休憩、冷却装備の活用など、複数の対策を組み合わせることが重要です。一方で、どれほど有効な対策であっても、現場で続けられなければ十分に機能しません。
「塩飴は少し苦手」
「暑い日は食欲がなく、補給がおろそかになる」
「業務中に口の中へ長く残るものは使いづらい」
このように感じる隊員もいるのではないでしょうか。本記事では、警備現場で無理なく続けやすい熱中症対策について、補給方法や冷却装備、現場での運用の工夫を整理します。
厳しい暑さが続くなか、警備現場で重要になる熱中症対策
2026年夏を迎え、警備業界でも熱中症対策への関心が高まっています。気象庁の資料によると、2025年夏は6月から8月の平均気温が統計開始以降で最も高く、日最高気温の国内最高は群馬県伊勢崎市で41.8℃を記録しました。また、40℃以上を観測した延べ地点数、猛暑日の延べ地点数も歴代最多となっています。こうした暑さは、屋外勤務が多い警備現場にとって大きなリスクです。
厚生労働省は、2026年5月1日から9月30日まで、令和8年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施しています。職場における熱中症予防対策として、WBGT値の把握、熱中症の重篤化を防ぐための体制整備、対応手順の作成、関係作業者への周知などが重点的に呼びかけられています。
また、2025年6月には労働安全衛生規則が改正され、一定の条件下で熱中症のおそれがある作業について、事業者に体制整備や対応手順の作成・周知などが義務付けられました。警備会社にとっても、熱中症対策は「個人の注意」だけに任せるものではなく、会社や現場全体で取り組むべき安全管理のテーマになっています。
WBGTとは
WBGTとは、気温だけでなく、湿度、風速、輻射熱を考慮して算出される暑さの指標です。
同じ気温でも、湿度が高い日や日差し・照り返しが強い場所では、熱中症リスクが高まります。そのため、警備現場でもWBGTを参考にしながら、休憩時間や作業時間、装備の使い方を調整することが重要です。

プロキャス警備が2026年に実施した現役警備員253名への調査では、熱中症になった、または熱中症になりかけた経験がある人は50.2%でした。前年調査の75.5%から25.3ポイント改善しているものの、2026年時点でも約2人に1人が熱中症または熱中症寸前を経験していることになります。
さらに、夏場の警備現場で困ることとして最も多かったのは「暑さそのもの」で61.7%でした。「ヘルメットや防具による暑さ・不快感」も45.1%にのぼっており、水分補給や休憩だけでなく、装備や勤務環境を含めた対策が求められていることが分かります。
継続しやすい塩分補給を考える
熱中症対策というと、塩飴や塩タブレットを思い浮かべる人も多いでしょう。実際に、多くの現場で塩分補給用品が支給されており、夏場の定番アイテムになっています。一方で、塩飴や塩タブレットがすべての隊員に合うとは限りません。
「暑い日はしょっぱいものを食べづらい」
「口の中がベタつく感じが苦手」
「業務中はゆっくり飴を舐めていられない」
このような声も考えられます。
特に気温が高い日は食欲が落ちやすく、味や食感が合わないことで、十分な補給ができなくなる可能性もあります。
そのため、近年はキャンディタイプだけでなく、グミ、ラムネ、ゼリー、スポーツドリンクなど、さまざまな補給方法が選択肢になっています。重要なのは、「どの商品が一番よいか」ではなく、自分の勤務環境や体調に合わせて、無理なく続けられる方法を選ぶことです。
交通誘導警備・施設警備それぞれの課題

1.交通誘導警備の現場
交通誘導警備では、直射日光に加え、アスファルトからの照り返しや車両の排熱など、厳しい暑熱環境で勤務することがあります。
水分や塩分をこまめに補給する必要がありますが、車両や歩行者への対応が続くと、補給のタイミングを逃してしまうこともあります。そのため、短時間で口にできる補給用品や、携帯しやすい飲料を準備しておくことが重要です。
また、個包装の塩飴などは、手袋をしたまま開封しにくい場合があります。風の強い現場では、包装が飛ばされないよう注意も必要です。交通誘導警備では、味や成分だけでなく、開封のしやすさ、持ち運びやすさ、ゴミの出にくさも選ぶ際のポイントになります。
2.施設警備の現場
施設警備では、商業施設やオフィスビル、工場、物流施設など、勤務場所によって暑さの感じ方が異なります。
屋内中心の勤務であっても、出入口対応、駐車場対応、外周巡回などで屋外に出る機会があります。冷房の効いた屋内と暑い屋外を行き来することで、温度差による疲労を感じやすい場合もあります。
また、施設警備では来館者対応や受付対応など、接客に近い場面もあります。そのため、口の中に長時間残る補給用品よりも、短時間で補給しやすいものを選びたいと考える隊員もいるでしょう。
現場ごとの業務内容に合わせて、補給しやすいタイミングと方法を決めておくことが大切です。
熱中症対策グッズの選択肢
熱中症対策用品は多様化しています。従来の塩飴や塩タブレットに加え、グミやラムネなど、味や食感に配慮した商品も登場しています。
ここでは、補給方法の一例として、特徴の異なる商品を紹介します。
グミタイプの塩分補給用品

グミタイプは、柔らかい食感で食べやすく、短時間で補給しやすいことが特徴です。
例えば、カンロ株式会社が販売する「やさしい塩グミ」は、塩グレープフルーツ味の塩分補給グミです。メーカーによると、塩味を強く感じすぎないよう味のバランスに配慮されており、さっぱりとした味わいが特徴とされています。また、果物由来の成分であるペクチンを使用しているため、柔らかい食感に仕上げられている点も特徴です。グミタイプは、交通誘導警備や施設警備など、短時間で補給したい場面において、選択肢の一つになるでしょう。
ラムネタイプの塩分補給用品

ラムネタイプは、口の中に長時間残りにくく、必要なタイミングで手軽に補給しやすいことが特徴です。
例えば、サラヤ株式会社が販売する「しおまる」は、塩ラムネタイプの塩分補給商品です。メーカーによると、食塩だけでなく重曹を配合し、塩味を強く感じすぎない味わいを目指して開発された商品とされています。また、チャック付きパウチを採用しているため、個包装のゴミが出ない点も特徴です。現場でゴミが出にくいことや、必要なタイミングで取り出しやすいことは、日常的に使い続けるうえで、選ぶ際のポイントの一つになりそうです。
このように、現在は味や食感、持ち運びやすさなど、さまざまな特徴を持った商品があります。自分が「続けやすい」と感じるものを選ぶことが、熱中症対策を習慣化する第一歩になるかもしれません。
継続しやすい熱中症対策を実践するポイント
熱中症対策では、「どのグッズを使うか」と同じくらい、「どう継続するか」が重要です。実際の現場では、塩分補給用品や飲料が用意されていても、忙しさから補給のタイミングを逃してしまうことがあります。
特に交通誘導警備では、車両や歩行者への対応が続き、休憩や水分補給が後回しになってしまうケースも少なくありません。また、施設警備でも、お客様対応や巡回業務の合間を見ながら補給する必要があり、思った以上にタイミングを取りづらいことがあります。
そのため、熱中症対策を継続するためには、「喉が渇いたら飲む」「疲れたら休む」といった感覚だけに頼らず、補給や休憩を習慣化する工夫が大切です。
例えば、
- 休憩時には必ず水分と塩分を補給する
- 携帯しやすい補給用品を選ぶ
- 暑さで食欲が落ちても口にしやすいものを準備しておく
- WBGTや気温を確認し、早めに休憩を取る
といった方法は、現場でも実践しやすい取り組みといえるでしょう。また、自分に合わない補給方法を無理に続ける必要はありません。
塩飴、グミ、ラムネ、スポーツドリンクなど、現在はさまざまな選択肢があります。味や食感、持ち運びやすさなどを踏まえ、自分にとって続けやすい方法を選ぶことも、熱中症対策の重要なポイントです。熱中症対策は、一度取り組めば終わりというものではありません。
暑い時期を通して無理なく続けられる工夫を考えることが、結果として現場での安全と体調管理につながっていくのではないでしょうか。
環境整備とのセット運用|熱中症対策を支える3つの柱
塩分補給グッズを活用することは大切ですが、それだけで熱中症対策が十分というわけではありません。現場では、次の3つを組み合わせて取り組むことが重要です。
① 体内補給
水分や塩分をこまめに補給することは、基本的な熱中症対策の一つです。暑さで食欲が落ちやすい時期だからこそ、自分が無理なく摂取できる方法を選び、定期的に補給する習慣をつけることが大切です。また、喉が渇いたと感じる前に、一定の間隔で水分を摂ることを意識している現場もあります。
② 外部冷却
近年は、暑さ対策のための装備も進化しています。
- ファン付き作業服
- 保冷剤ベスト
- PCM素材のネッククーラー
- 遮熱機能を備えたヘルメット関連製品
など、体温上昇を抑えることを目的とした製品が数多く登場しています。特に首元や体幹部分を冷やす装備は、暑さ対策として取り入れている現場も多く、自分の働く環境に合わせて選ぶことが大切です。
③ リスク管理
熱中症対策では、「まだ大丈夫」という感覚だけに頼らないことも重要です。
WBGT値の確認、定期的な休憩、冷房設備や日陰のある休憩場所の確保、隊員同士の声掛けなど、基本的な取り組みを現場全体で徹底する必要があります。
厚生労働省も、WBGT値の把握とその値に応じた熱中症予防対策、重篤化防止のための体制整備や手順作成、関係作業者への周知を重点的に呼びかけています。熱中症対策は、個人の努力だけで完結するものではありません。会社、現場責任者、隊員がそれぞれの立場で取り組むことが重要です。
現場で確認したい熱中症対策チェックリスト
熱中症対策は、一度準備して終わりではありません。日々の勤務のなかで、次のようなポイントを確認してみましょう。
□ 支給されている塩分補給品や飲料は、自分にとって続けやすいものか
□ WBGTや気温など、暑さのリスクを確認する習慣があるか
□ 冷房設備や日陰など、適切な休憩場所が確保されているか
□ ファン付き作業着や冷感インナーなど、装備面の対策を検討できているか
□ 水分・塩分補給のタイミングを意識できているか
□ 同僚や後輩と、お互いの体調を気遣う声掛けができているか
こうした小さな確認を積み重ねることが、現場全体の安全につながります。
まとめ
熱中症対策に、「これだけやれば十分」という方法はありません。
塩分・水分補給、冷却装備、休憩環境の整備などを組み合わせ、自分に合った方法を無理なく続けることが重要です。
特に警備現場では、勤務場所や仕事内容によって暑さの感じ方も異なります。だからこそ、現場で実際に続けられる対策は何かを考え、必要に応じて補給方法や装備を見直していくことが、夏を安全に乗り切るための第一歩といえるのではないでしょうか。
警備NEXT(警備ネクスト)では、警備業界の最新動向と実務に役立つ情報を継続的に発信しています。
参考・出典
- しょっぱくない塩ラムネ「しおまる」がドラッグマガジン主催「ヒット商品賞・話題商品賞」の話題商品賞を受賞!
- この夏、“塩分補給グミ”が新登場!マイルド塩味&やわらか食感 カンロ「やさしい塩グミ」発売
- プロキャス警備「【現役警備員の熱中症対策調査 2026】熱中症経験は前年比25.3pt改善、一方で約6割が『暑さそのもの』に課題」
- 厚生労働省「クールワークキャンペーン」