【行政書士監修】異業種から警備業への参入はチャンスになる?成功のポイントと専門家活用の考え方

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異業種から警備業への参入を検討する企業が、近年増えています。
建設業、ビルメンテナンス業、人材関連事業、イベント運営会社など、これまで警備会社と関わりの深かった業種を中心に、事業拡張や内製化の一環として警備業を視野に入れる動きが見られるようになりました。

警備業は、一見すると参入のハードルが高そうに感じられる業界です。しかし、制度を正しく理解し、適切な準備を行えば、異業種にとっても中長期的に安定した事業として成立する可能性がある分野でもあります。
本記事では、なぜ今、異業種から警備業への参入が「チャンス」と言われているのか、その背景と成功の考え方を整理します。

【監修】株式会社RTS 代表取締役・行政書士 増田氏

警備会社の経営と現場運営に携わる一方、行政書士として活動。豊富な経験により難しい案件にも対応。許可申請だけでなく許可後の事業運営を幅広くサポートします。

今回は、異業種からの警備業参入について、実務と法令の両面から本記事を監修いただきました。

なぜ今、異業種から警備業への参入にチャンスがあるのか

警備業は今後も社会に必要とされ続ける業界

警備業は、施設、工事現場、イベント、インフラなど、人の活動がある限り必要とされる仕事です。

出典|警察庁_令和6年における警備業の概況

警察庁が公表した「令和6年における警備業の概況」によると、

  • 警備業の売上高:3兆4,477億円
  • 警備業者数:1万811業者(前年比+1.3%)
  • 警備員数:約58万人

とされており、警備業が社会インフラとして広く機能していることが分かります。
AIやロボット技術が進展する現在でも、現場での判断や対人対応を完全に代替することは難しく、一定の人的警備需要は今後も継続すると考えられます。

既存事業の強みを活かしやすい分野である

異業種参入が進んでいる理由の一つに、警備業が既存事業と親和性を持ちやすい点があります。

  • 建設業:交通誘導警備
  • ビルメンテナンス業:施設警備
  • イベント運営会社:雑踏警備

など、すでに保有している現場や取引先の延長線上で展開しやすい特徴があります。
これは「ゼロから新規事業を立ち上げる」というより、既存事業に警備を組み合わせて付加価値を高める参入モデルが成立しやすいことを意味します。

既存事業と離れた業界でも参入できる理由

警備業への参入は、既存事業と近い業界に限られるものではありません。
警備業は、特殊な製造設備や自社開発技術を前提とする事業ではなく、

  • 警備業法に基づく認定取得
  • 適切な人員配置
  • 教育体制と記録管理
  • 法令を遵守する運営体制

を整えることで成立する事業です。
既存事業との距離がある企業ほど、先入観にとらわれず警備業を一から学び、専門家の知見を取り入れることで、かえって安定した立ち上げにつながるケースもあります

異業種が押さえておきたい警備業の基本

警備業とは、他人の需要に応じて、人や財産の安全を守る業務を行う事業のことです。
警備業は自由に始められる事業ではなく、警備業法に基づき、都道府県公安委員会の認定を受けて営業する業種と定められています。

取り扱う業務は、施設警備、交通誘導警備、雑踏警備などに区分されており、事業者は自社が行う警備業務の内容を明確にしたうえで運営する必要があります。
異業種から参入する場合でも、「付随業務」としてではなく、独立した専門事業として向き合う姿勢が重要です。

異業種から警備業へ参入する前のチェックリスト

① 事業設計に関する6つのチェック項目

  1. □ 警備業を「既存事業の片手間」ではなく、独立した事業として位置づけている
  2. □ 行う警備区分(施設・交通誘導・雑踏)を明確に決めている
  3. □ 初年度の想定規模(警備員数・現場数)に上限を設けている
  4. 「なぜ警備業に参入するのか」(本業との関係性・狙う価値)が言語化できている
  5. □ 「受けない案件の条件」も事前に整理している
  6. □「自社の強み(本業など)を活かせる」組立ができている
ここが曖昧だと起きること

自社の強みを活かした展開からスタートしないと、事業として成り立つまでに時間がかかり、結果としてうまくいかないケースが多い。

 ② 認定・法令対応に関する4つのチェック項目

  1. □ 管轄する公安委員会を把握している
  2. □ 役員・管理者に警備業法上の欠格事由がないことを確認している
  3. 警備員指導教育責任者を誰が担うか明確にしている
  4. □ 認定取得後も継続義務(教育・記録管理)があることを理解している
最重要ポイント

警備員指導教育責任者がいなければ認定申請はできない。また、認定後に当該責任者が退職し、後任が不在となった場合は事業継続ができない(廃業になる)ため、複数名体制や交代計画まで含めた設計が不可欠。

ここを甘く見ると

公安委員会(警察)から会社に対して、営業停止、指示処分、行政指導などの対象となるケースがある。警備員指導教育責任者に対しても処分が行われることもある。

③ 人材・教育体制に関する4つのチェック項目とNG例

  1. □ 新任教育・現任教育の実施方法を具体的に決めている
  2. □ 教育記録を「誰が・どこで・どう保管するか」を決めている
  3. □ 最初は少人数・少現場から始める前提になっている
  4. 法定教育を完了した警備員のみ配置する運用(が社内で徹底されている)ルールがある

NG運用チェック(1つでも該当したら要注意)

  1. □ 案件が決まってから警備員を集めている
  2. □ 現場開始を優先し、教育が後回しになることがある
  3. □ 指導教育責任者が実態を把握できていない
実務上の原則

警備業では「人が確保でき、法定教育が完了してから案件を受ける」が基本。
教育が回らない案件を無理に受注することは、短期的な売上よりも、中長期の事業継続リスクを高める判断になりかねない。

④ 管制・管理体制に関する4つのチェック項目

  1. □ 管制業務(配置・連絡・欠員対応)を誰が担当するか決めている
  2. □ 電話・LINE・紙が混在しないよう、連絡手段を整理している
  3. □ 勤怠・報告の回収方法を事前に決めている
  4. □ トラブル時の記録・振り返り方法を想定している
特に重要

管制業務で最も疲弊しやすいのは欠員対応と事故対応
この2点を想定せずに立ち上げると、管理担当者の負担が急増し、離職やミスが連鎖しやすい。

⑤ DX・効率化に関する4つのチェック項目

  1. □ 警備配置・シフト管理を人力だけで回さない設計にしている
  2. □ 隊員への連絡・既読確認が一元管理できるツールを想定している
  3. □ 日報・報告をデジタルで回収できる仕組みがある
  4. □ DXは「差別化」だけでなく販管費削減の観点でとらえている
重要

 DXは「余裕が出てから」ではなく最初から前提にした方が結果的にコストは抑えやすい

⑥ 営業・受注時の説明に関するチェック項目

まず理解すべき前提

警備業の営業は、「何号業務を主軸にするか」で訴求軸が大きく異なります。

・1号業務(施設警備)
・2号業務(交通誘導警備・雑踏警備)

では、顧客が評価するポイントが明確に違います。

1号業務(施設警備)で重視される営業ポイント

施設警備では、継続性・再発防止・管理体制が重視される傾向があります。

顧客が確認する主な観点

  • 配置計画の妥当性
  • 教育・品質管理体制
  • トラブル時の対応フロー
  • 報告/記録の管理方法
  • 警備員の定着率

施設側は「建物全体の安全管理パートナー」を探しています。
そのため、単に人数を提示する営業では差別化できません。

差がつく説明内容

  • 24時間体制のバックアップ体制
  • 巡回ルート設計の考え方
  • クレーム発生時の改善プロセス
  • 引継ぎ方法と責任区分
  • 管制と現場の連携方法
▶ 重要

1号業務では「運用の仕組み」をどこまで言語化できるかが、受注の安定性を左右します。

2号業務(交通誘導・雑踏警備)で重視される営業ポイント

2号業務では、評価軸がより実務的になります。

現場側が見ているポイント

  • 動きが良い隊員であるか
  • 指示を正確に理解できるか
  • 依頼人数に対して確実に配置できるか
  • 欠勤が少ないか
  • 急な変更に即応できるか
  • レスポンスが早いか

2号業務での営業の本質

2号業務では、“運用の仕組み”よりも現場遂行能力が優先される傾向があります。具体的には以下です。

  • 欠員発生時の即時代替体制
  • 早朝・夜間対応の可否
  • 大人数案件への対応力
  • 現場責任者の力量
  • 元請との報連相の速さ
▶ 重要

2号業務では「欠員を出さない体制」が最大の信用になります。

営業活動を設計する際の追加チェック項目

  1. □ 自社が主軸にする号業務を明確にしている
  2. □ 号業務ごとの営業資料を分けている
  3. □ 現場責任者を営業に同席させる設計になっている
  4. □ 欠員発生時の具体的な説明ができる
  5. □ 配置可能人数の上限を正確に把握している
  6. □ 「即答できる体制」を営業段階から構築している

⑦ 内製と外部連携の切り分けに関する4つのチェック項目

  1. □ すべてを自社で抱え込まない前提になっている
  2. □ 法令対応・教育設計など専門性が高い領域は、初期は外部活用も検討している
  3. □ 外部連携は「依存」ではなく初期リスク回避策と理解している
  4. □ 将来的な内製化のイメージも描けている
▶ 実務的な考え方

立ち上げ初期は外部活用を中心にし、事業が安定した段階で段階的に内製化する方がリスクは低い。
その際、警備員指導教育責任者にどこまでの役割を担ってもらうかを事前に整理しておくことが重要。

既存の警備会社にとっても前向きな変化

異業種からの参入は競争を生む一方で、業界全体を見直すきっかけにもなります。
新しい視点や仕組みが入ることで、働き方や運営方法の改善につながる可能性もあります。

また、長年現場を支えてきた警備会社にとっては、教育力や現場対応力といった「警備のプロとしての価値」が、より明確になる局面でもあります。

まとめ

異業種から警備業への参入は、決して無謀な挑戦ではありません。
警備業は今後も社会に必要とされる分野であり、既存事業の強みを活かせば、十分に成長の余地があります。

その一方で、警備業特有の実務や法令を正しく理解し、必要に応じて専門家の力を借りることが、安定した事業運営につながります。
警備業への参入を前向きに検討する企業にとって、本記事が判断材料の一つになれば幸いです。

この他にも警備NEXT(警備ネクスト)では、今後も現場実務に役立つ情報を発信してまいります。

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