株式会社SECURITY BRIDGE
代表取締役 榎本泰基氏インタビュー
警備業界ではいま、経営環境の難易度が確実に高まっています。採用難の長期化、隊員の高齢化、最低賃金の上昇、これらは現場の課題であると同時に、企業の収益構造や持続性にも直結する問題となっているのです。
特に中小規模の警備会社においては、
「案件はあるが人員を確保できない」
「受注拡大より配置維持が優先になる」
「教育・採用コストが経営を圧迫する」
といった状況が、もはや例外ではなくなりつつあるようです。一方で、都市再開発やインフラ更新、イベント需要の回復などを背景に、警備需要そのものは依然として安定しています。
つまり業界は「需要減少」ではなく、供給制約という構造問題に直面していると言えます。
こうした環境変化のなかで、近年あらためて経営戦略として注目されているのがM&A(企業の合併・買収)です。
そこで今回は、警備会社に特化したM&A支援を展開する株式会社SECURITY BRIDGE代表取締役の榎本泰基氏に、警備業界における再編の現実と可能性について話を伺いました。
プロフィール
榎本 泰基(えのもと たいき)様
株式会社SECURITY BRIDGE 代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、株式会社キーエンスに入社。法人向けコンサルティングセールスに従事し、社長賞を受賞。その後、大手M&A仲介会社へ転職し、企業承継・成長戦略支援に携わる。
警備業界案件への深い関与を契機に業界特化を志向し、2024年に株式会社SECURITY BRIDGEを設立。現在は警備会社専門のM&Aアドバイザリーを中心に支援を行っている。
株式会社SECURITY BRIDGE:https://security-bridge.co.jp/
「警備業界の発展に寄り添う」創業の意図
榎本氏は大手M&A仲介会社での経験の中で、警備会社の経営者が抱える独特の悩みに直面したことをきっかけに、”業界特化”という道を選びました。
「警備業界は人材不足や待遇改善といった課題を抱えています。しかし同時に、社会インフラとしての需要は極めて安定しています。経営者・従業員・譲受側の三方にとって価値ある選択肢としてのM&Aがあるはずだと思ったのです。」
この言葉には、単なる「売却支援」ではなく「業界の持続性支援」という視点がにじみます。榎本氏はこれまで、警備会社400社以上の経営者と面談を重ねてきました。
「金銭面の条件だけでなく、“どのような会社にしたいか”“従業員へ対する気持ち”といった想いを聞くことが重要だと感じました。」
また、「数字だけでは実態を見誤る可能性がある」という業界評価の難しさにも言及されました。
稼働率、資格者数、隊員の年齢、取引先の属性、配置の安定性、こうした現場に根ざした要素こそが企業価値に直結するという考え方です。
現場のリアルを深く理解したうえでの創業だったといえます。

“需要はあるのに伸ばせない”構造的ジレンマ
警備業界が抱える共通課題として挙げられたのは、以下の点です。
- 深刻な採用難
- 後継者不在
- 最低賃金上昇や社会保険加入の拡大などによる収益圧迫
「単独での経営努力だけでは限界を迎えるケースもあります。統合やグループ化は、採用力や待遇改善余地を広げる現実的な経営戦略になります。」
特に中小規模の企業にとって、M&Aは大手と肩を並べる採用力や福利厚生の改善余地を広げる重要な成長戦略になり得るという視点を示しました。
再編は“縮小”ではなく“価値の再設計”
警備業界におけるM&Aは、単なる事業承継を超えた意味を持ちます。
- 待遇改善/給与水準向上
- 採用力の安定化
- 交渉基盤の強化
- 地域密着型サービスの継続
「これは“価値連鎖としての再編”です。M&A成立後、現場の仕事量が増え給与の安定や、待遇の改善につながったケースも少なくありません。」と振り返ります。
業界特化だから見える“本当の企業価値”
業界特化の意義についてうかがったところ、
「警備会社は“人が財産”と言える産業です。業界特性を理解しないままでは適正な評価やマッチングはできません。」
警備業界では、次のような要素が企業価値に直結します。
- 稼働率
- 元請比率
- 年齢構成
- 教育体制
「同じ売上規模でも会社によって、企業価値の評価は異なります。」
業界に特化することで、経営者の価値観や組織文化を踏まえた提案が可能になるのです。
スピード感に現れる専門性
一般的なM&Aの成立期間が10ヶ月〜1年前後とされる中で、「2〜3ヶ月程度で成約に至った事例も複数ある」といいます。
その背景には、
- 警備業界特化の譲受候補ネットワーク
- 事前の業界研究の蓄積
- 論点整理の精度
があります。
「業界理解があることで、検討プロセスの無駄が削減され、意思決定が速く進みやすいのです。」
スピードは偶然ではなく、構造的な専門性の結果だといえるでしょう。
SECURITY BRIDGEの支援領域と特徴
同社は、警備業界特化のM&Aアドバイザリーを中核に据えながら、支援領域を多面的に展開しています。
・成長戦略型・事業承継型M&Aアドバイザリー(成約まで無料の完全成功報酬制)
・無料財務診断サービス/セカンドオピニオン
・企業再生支援
・ホームページ/採用ページの制作・運用
・警備員向け仮想空間教育システム「トラフィックコンダクター」販売
「M&Aは、事業承継や成長戦略を実現するための“数ある選択肢の一つ”に過ぎません。大切なのは、各社の状況に応じた、最適な進め方とタイミングを見極めることです。私たちは、情報収集の段階でのご相談から、迅速な判断が求められる局面まで、あらゆる状況においてオーナー様に寄り添い、最適なご提案とサポートを行なっています。」
このスタンスは、経営者の意思を尊重する伴走型支援の姿勢にも通じています。

“最後の手段”にしないための早期相談
インタビューでは、多くの経営者がM&Aに対して少なからず“不安”や“懸念”を抱いていることが分かりました。
主な懸念として、
- 従業員の離職リスク
- 事業承継後の企業文化の変化への不安
- 小規模企業では成立が難しいのではないかという先入観
などが挙げられました。榎本氏はこれらのリスクは、“どこと組むのか”、“どの様に進めるか”を、信頼できるアドバイザーに相談し対話を重ねることで、事前に整理・軽減できると述べます。
また、M&Aはタイミングが極めて重要です。いざM&Aをしたいと思った時が、必ずしも最適なタイミングとは限りません。
「理想的なのは、まだ具体的に決めていない段階から専門家に相談し、自社の将来像を描き、目標を定め、企業価値を高める準備を進めておくことです。」
将来の選択肢を広げるためにも、早い段階から情報収集をしておくことの重要性を指摘しました。
SECURITY BRIDGEの未来と展望
同社は現在、全国対応でM&A支援を展開するとともに、警備業界の動向を取りまとめたレポートの発信にも注力しています。さらに、警備業界のM&Aに特化したコラムも複数本執筆中とのこと。今後も、経営者の意思決定を支える情報ツールとして、継続的に提供していく予定です。
「業界の地位向上と発展の架け橋でありたい。M&Aだけが答えではありませんが、選択肢として価値ある提案を続けていきたいと考えています。」と今後の意欲を語りました。
まとめ:再編は業界活性の起点に
警備業界は、社会インフラとしての重要性が高まる一方で、構造的な人材・承継の課題を抱えています。
同社の取り組みは、単なるM&A仲介を超え、現場の価値を守りつつ未来を設計する支援として注目されます。
国内の中小警備会社がこれからも地域社会で力を発揮し続けるために、「再編と成長」という視点は今後ますます重要性を増していくでしょう。
警備NEXT(警備ネクスト)では今後も警備業界に寄り添う方々に光を当て、現場と制度をつなぐヒントを届けていく予定です。どうぞご期待ください。