【後編】月商1,000万円超の警備会社の経営判断とは?アパレル縮小から警備事業へ事業転換のリアル

インタビュー

船井総研主催の警備・ビルメンテナンス研究会レポート

2026年1月23日、東京・八重洲では全国の経営者が集まり、警備・ビルメンテナンス研究会(主催:株式会社船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティング)が開催されました。研究会は単発セミナーではなく、継続型の「研究会」として参加者同士の双方向の情報発信と情報交換会事業転換の出発点がある点が特徴です。

今回、後編として取り上げるのは、登壇企業の一社である株式会社セーフプラスです。同社がどのように警備事業を立ち上げ、月商1,000万円超の成長軌道に乗せたのかを、研究会で語られた内容をもとに紹介していきます。

無知からスタートした事業転換の出発点

出典|株式会社セーフプラス公式ホームページ

2026年1月23日に開催された研究会で事例が紹介された一社である株式会社セーフプラスです。

登壇企業データ(研究会発表内容より)
  • 許認可:2024年7月
  • 月商:約1,100万円
  • 隊員数:50名前後

野田社長はもともと関連会社で求人広告を運営していたところで、アパレル商品のネット販売を運営。しかしアパレル事業の縮小が決まり、新規事業として警備会社の社長をやってくれないか、と声がかかったのがきっかけでした。

  • 在庫を持たない
  • 仕入れがない
  • できるだけ単純なビジネスモデルが良い

その条件に合う新規事業としても、警備業が選択肢になっていきます。一方で、参入当初は警備業界について無知だったとも語られました。

立ち上げ初期「運用は回った」鍵はマルチな指導教育責任者

業界知識が十分でない中でも、立ち上げ初期の運用が大きく崩れなかった理由として挙げられたのが、指導教育責任者がマルチにできる人だったことです。
反対に、新しく採用した隊員はみんな未経験で素人。それでも運用面で致命的な問題が起きなかったのは、営業・管制・パソコン業務・教育も回せる人がいたからだと振り返りました。

事業開始から「プロキャス警備」を導入

同社の特徴として大きいのが、事業開始からプロキャス警備を導入していた点です。

  • プロキャス無しでは、ここまで大きくならなかった
  • 一番最初から導入してよかった

と、コミュニケーションや労務面での運用の土台としての重要性に言及しています。そのため採用条件として、業界経験があったとしてもスマホを持っていない人、車に乗り合わせができない人は採用不可としているといいます。
“採用の間口を広げる”よりも、“現場運用が成立する前提を揃える”ことを優先している形です。

半年気づけなかった「現場先監督のカスハラ」最初は自社の指導不足だと思っていた

ただ、現場が回っているように見える一方で、見えにくい問題も潜んでいました。
現場先の監督によるカスハラが発生していたにもかかわらず、それに気づくまで半年かかったことがあったといいます。
当初は、注意される状況について「うちの指導が悪いからだ」と思っていた
現場先とは飲み会などコミュニケーションも取っており、関係性は築けているつもりだった、とも語られました。
しかし上層部同士ですり合わせた結果、現場監督のカスハラだと認めたという流れです。ここで野田社長が得た気づきは明確でした。

黙認せずに企業と話すことが、社長の役目である

現場の問題を「自社の反省」だけで処理し続けると、隊員を守れない。
この経験が、その後の会社のスタンスに直結していきます。売上のために現場を選ぶのではなく、隊員を守る線引きを会社として持つことが、運営の安定につながっているようです。

「もっと早く決めればよかった」会社・ブランドコンセプト

後から振り返って「もっと早くやるべきだったこと」として挙げられたのが、会社・ブランドコンセプトを決めることです。
事業が動き始め、隊員が増え、現場が増えるほど、会社としての姿勢が曖昧だと、教育・評価・コミュニケーションもブレやすくなります。野田社長は、その整理を早期にすべきだった、スムーズに進めるためには非常に重要なことだったと語ります。

理念についても、最初から完成していたわけではありません。
やっていくうちに自分の中で整理して作ったという同社のキーワードは「品よく」。
指導教育責任者は隊員を「さん付け」で呼び、隊員は有名人、こちらはマネージャー、という捉え方を内勤にも伝えたといいます。この価値観が共有される中で、リファラル採用も増えました。
実際に昨年8月、大学生のスタッフが野球部を引退した友人らに声を掛け、隊員さんが増えていった話が挙げられました。

採用は「電話に早く出る」 面接は“会社案内→応募者の話”の順

採用については、打ち手が明確です。

  • Indeedにお金をかける
  • 電話に早く出る、かける

さらに面接の運び方にも工夫があります。
面接時には、野田社長が対応するようにしています。社長が対応できなかった場合でも同じように対応できるよう会社案内(会社としての考え方)を作り説明してから、応募者の話を聞くようにしているということです。

離職原因は「会話不足」、任せきりだった

離職の理由について、野田社長は原因を「制度」や「採用」ではなく、自分自身との会話が足りなかった点に置いています。
当初は指導教育責任者に任せる形を取っていたため、結果として隊員が感じている不満や違和感が、上層部まで届きにくい状態になっていたという整理です。そこで、今年の1月から対応を変更。
日中は社長自らが隊員の話を聞き、問題や違和感を引き出す役割を担うようにしました。

取り組みを始めてからまだ日が浅く、明確な数値としての変化はこれからではあるものの、少なくとも「現場の声がどこで止まっているのか」を把握できるようになった点は、経営としての大きな変化だといいます。

人は承認欲求が強い。
だからこそ、制度を整える前提として、会話が成立する土台を作ることが重要。


今回の判断は、離職対策そのものというより、今後の組織づくりに向けた前提条件を整える取り組みとして位置づけられています。

営業は「ほとんどしていない」でも「やめたことはない」

営業については、意外にも「ほとんどしていない」と語られています。ただし、やめることもなかったという表現がポイントです。具体的には入札案件に対してテレアポを実施しています。

  • 閑散期にたくさん電話すると良いと聞き架電専任を置いた
  • 年末から、山梨県内のインフラ関係へテレアポ
  • 対面で話すと、安心して依頼してくれる

そして、営業の“型”として用意しているのが、会社概要と単価表を1枚にしたFAX資料です。
すぐ送れる、すぐ判断できる。小さな工夫ですが実務としては強い設計です。

後編まとめ|事業を伸ばしたのは「会話」と「線引き」と「最初からの仕組み」

セーフプラス社の事例で一貫していたのは、売上づくりの前に現場が回り続ける前提を整える判断です。

  • カスハラを“自社の反省”で終わらせず、企業と話すのが社長の役目だと気づいた
  • ひどい扱いの現場は断る線引きを持った
  • 事業開始からプロキャス警備を導入し、運用の土台を先に作った
  • 会話不足を課題と捉え、隊員の声が上層部に届く導線を作った
  • 営業は増やしすぎず、入札×閑散期テレアポ×FAX1枚で“型”を作った

中小警備会社にとって「遠すぎない」現実的な成長モデルです。
その裏側にあるのは、派手な施策ではなく、判断の順番と組織の前提づくりでした。

船井総研が主催する警備・ビルメンテナンス企業の経営者向けの継続的な会員制勉強会は、「経営者のみ・初回のみ」と条件が合えばお試しで無料参加することも可能です。
次回は2026年3月2日(月)11:00~16:30に開催予定。ぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。

警備NEXT(警備ネクスト)では、引き続き警備業界のDXや働き方改善に関する調査・取材を行い、現場と経営をつなぐ情報を発信していきます。

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