警備業界でも近年、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
特に、管制業務を担う担当者や責任者の方にとっては、「人手不足の中で、これ以上アナログ管理を続けられない」「DXが必要なのは分かるが、何から手をつければいいのか分からない」と感じる場面も増えているのではないでしょうか。一方で、「どんなツールがあるのか分からない」「システム導入で現場が混乱しないか不安」といった声が多いのも事実です。
管制業務は、交通誘導警備・施設警備・雑踏警備など警備種別を問わず、シフト作成、配置調整、上下番確認、隊員との連絡など、日々多くの判断と調整が求められる重要な役割です。だからこそ、新しいツールの導入に慎重になるのは自然なことです。
本記事では、DXツールを導入すると管制業務が「どう変わるのか」を整理したうえで、管制初心者でも選びやすい警備DXツールの比較を分かりやすく紹介します。
警備管制を取り巻く現場の変化と、いま起きている課題
警備業は、施設警備(1号警備)や交通誘導・雑踏警備(2号警備)など、人の配置と判断が業務の中心となる業界です。その中で管制は、現場と隊員、会社全体をつなぐ“中枢”の役割を果たしています。
近年、警備現場では人手不足や案件の多様化が進み、シフト変更や配置調整、急な欠員対応など、管制が判断・対応しなければならない場面が増えています。一方で、業務の進め方自体は大きく変わっておらず、限られた手段で多くの情報を扱わなければならない状況が続いています。
その結果、管制業務は以前よりも負担が大きくなっていますが、これは担当者の能力不足によるものではありません。では、現場では具体的にどのような問題が起きているのでしょうか。
1. 変更が多すぎて、連絡が追いつかない
たとえば年末年始や大型イベント、急な天候悪化などは、欠員や配置変更が多くなります。電話連絡が中心だと、不在・折り返し待ち・伝言ミスが積み上がり、最終的に「伝えたつもり」「聞いていない」が起こりやすくなります。
2. 情報が散らばり、“どれが正”かわからない
Excelでシフト、紙で上下番、LINEで連絡、別の表で日報回収……のように複数のツールを使用すると、管制は常に「最新の情報はどれ?」の確認から始まります。特に業務が忙しい朝は、最新情報を探すこと自体が業務になってしまうケースも少なくありません。
3. 属人化して、引き継ぎができない
「この現場は○○さんが詳しい」「この隊員は電話が早い」といった暗黙知が増えるほど、新任担当者は混乱します。属人化は、休みづらさや離職にも直結します。
DX導入で管制業務はどう変わるのか

管制業務を「仕組み化」できるようになる
警備業におけるDXは、「最新システムを入れること」そのものが目的ではありません。本質は、管制業務の判断や情報共有を、個人依存から切り離すことにあります。
DXツールを導入すると、次のような構造的な変化が起こります。
- 情報が現場や隊員へ即時に伝わる
→ 電話のかけ直しや伝言待ちが減り、連絡ミスのリスクが下がります。 - 誰がどの情報を持っているかが明確になる
→ 担当者個人の記憶に頼らず、必要な情報を誰でも確認できるようになります。 - 変更が起きたときの「正しい情報」が一元化される
→ 最新の配置・シフトがシステム上で更新され、「どれが正か迷う」状況が減ります。
連絡・把握・判断の負担が減る
DXツールを導入すると、連絡や隊員の勤務状況など、次のような変化が期待できます。
- 属人化しにくくなる
連絡履歴や判断の記録が残り、新人でも状況を把握しやすくなります。 - 電話連絡が減り、情報共有が一本化される
シフト変更や配置情報をシステム上で即時共有できます。 - 「誰が・どこで・何をしているか」が見える化される
管制担当者の頭の中にあった情報を、画面で確認できます。
法令順守・記録管理を仕組みで担保できる
DXツールを導入すると、管制業務を進める過程そのものが記録として残るようになります。
- シフト作成や変更の履歴が自動で残る
- 上下番の実績がリアルタイムで記録される
- 配置状況や指示内容を後から確認できる
このように、「記録するために別作業をする必要がなくなる」のが大きな変化です。結果として、法令順守の確認やトラブル時の事実確認を、慌てず・無理なく行える体制を整えることができます。
管制初心者でも選びやすい!警備DXツール比較【2026年版】
今回の比較では、警備業界での導入実績がある、管制業務で実際に使われやすい、初心者でも導入しやすいという観点でツールを整理しています。
プロキャス警備|急な変更や短期案件が多い現場に向いている

① どんなツール?
プロキャス警備は、警備業務におけるシフト管理や隊員連絡を効率化するDXツールです。
登録型の隊員管理や短期案件への対応に強く、日々の配置変更が多い現場でも運用しやすい点が特長です。
② 管制業務の「どこが」どう楽になるか
- シフト変更や配置情報を一括で共有でき、連絡の手間が減る
- アプリ通知を活用することで、電話連絡に頼らない運用がしやすくなる
- 誰に何を伝えたかが履歴で確認でき、行き違いを防ぎやすい
③ こんな悩みがある現場に向いている
- 急な欠員や配置変更が頻繁に発生する
- 短期・スポット案件を多く扱っている
- 電話連絡中心の管制業務に限界を感じている
④ 管制初心者視点でのポイント
操作が比較的シンプルで、まずは一部の現場から導入しやすい点が特徴です。「すべてを一気にDX化する」のではなく、連絡やシフト共有といった分かりやすい業務から始めたい管制初心者に向いています。
警備フォース|管制・勤怠・給与までまとめて管理したい会社向け

① どんなツール?
警備フォースは、警備業務における配置管理だけでなく、勤怠・給与・請求までを一元管理できるDXツールです。
管制業務と事務業務をまたいで、管理を一元化したい企業で導入されています。
② 管制業務の「どこが」どう楽になるか
- シフトや配置情報と勤怠実績を一体で管理できる
- 管制と事務の情報連携がスムーズになる
- 二重入力や転記作業を減らしやすい
③ こんな悩みがある現場に向いている
- 管制・勤怠・給与管理がバラバラになっている
- 管制と事務のやり取りに手間がかかっている
- 拠点や隊員数が増えて管理が煩雑になってきた
④ 管制初心者視点でのポイント
機能が幅広いため、最初に運用設計が必要になります。
一方で、「いずれ管理全体をまとめたい」と考えている場合は、将来を見据えた選択肢として検討しやすいツールです。
KOMAINU|配置と上下番を“見える化”したい現場向け

① どんなツール?
KOMAINUは、警備現場の配置状況や上下番をリアルタイムで把握しやすくするDXツールです。
「いま誰がどこで勤務しているか」を即座に確認できる点に特長があります。
② 管制業務の「どこが」どう楽になるか
- 配置状況や上下番を画面上で確認できる
- 電話での状況確認が減る
- 現場把握にかかる時間を短縮しやすい
③ こんな悩みがある現場に向いている
- 隊員の配置状況を即答できず困ることが多い
- 現場数や拠点が複数ある
- 管制担当者の“頭の中の把握”に頼っている
④ 管制初心者視点でのポイント
機能が比較的シンプルで、「まず現場状況を見える化したい」という目的から始めやすい点が特徴です。
管制業務の全体DXというより、把握業務の改善から着手したい場合に向いています。
くもかん|上下番報告をシンプルにしたい小規模現場向け

① どんなツール?
KUMOCANは、上下番報告を中心に、管制業務の一部を省力化するDXツールです。特に小規模〜中小規模の警備会社で導入しやすい設計になっています。
② 管制業務の「どこが」どう楽になるか
- 上下番報告をアプリで完結できる
- 電話での出退勤確認が減る
- 報告内容が自動で記録として残る
③ こんな悩みがある現場に向いている
- 上下番確認の電話対応が負担になっている
- 管制業務の一部だけをまずDX化したい
- 小規模な現場から段階的に改善したい
④ 管制初心者視点でのポイント
導入ハードルが低く、「まずは上下番管理から始めたい」という管制初心者に向いています。
DXの第一歩として取り入れやすいツールです。
AirSHIFT|シフト作成の手間を減らしたい組織向け

① どんなツール?
AirSHIFTは、シフト作成を効率化することに特化したツールです。警備業専用ではありませんが、シフト作成の負担軽減を目的に導入されるケースがあります。
② 管制業務の「どこが」どう楽になるか
- シフト作成を自動化しやすい
- 希望シフトの回収や調整がしやすい
- 作成作業そのものの時間を削減できる
③ こんな悩みがある現場に向いている
- シフト作成に毎月多くの時間を取られている
- 隊員数が多く、調整が大変
- まずは作成業務を効率化したい
④ 管制初心者視点でのポイント
配置管理や上下番管理は別途工夫が必要なため、「管制全体のDX」よりも「シフト作成の効率化」に課題がある場合に向いています。
比較表から見える「初心者向けDX」の考え方
表を見ると分かる通り、すべてのツールが万能というわけではありません。
初心者にとって重要なのは、「全部できるか」ではなく、「いまの混乱を一番減らせるか」です。
たとえば、
- 連絡ミスが多い → 「伝える」に強いツール
- 上下番が把握できない → 「確認」に強いツール
- 事務が回らない → 「まとめる」に強いツール
というように、課題別にDXを進める方が定着しやすく、失敗も少なくなります。
警備DXは「悩みに合う選択」
管制責任者や経営層の立場から見ると、DXは「一度に全部変えるもの」ではなく、「小さく始められる改善手段」です。DXツールは、管制の代わりになるものではありません。日々の判断と調整を支える“相棒”です。
まずは、自社で一番困っている管制業務を書き出し、その悩みを減らせそうな機能から導入するという、この一歩が、業務効率化とミス削減につながります。
警備NEXT(警備ネクスト)では、現場で役立つ知識や警備員の声をこれからも発信していきます。日々の勤務に少しでも役立ててもらえたら幸いです。