警備業界では、慢性的な人手不足と急速な高齢化が同時に進行しており、紙やExcelを前提とした従来型の業務運営は、制度面・運営面の双方から限界を迎えています。警備業法および労働基準法などの関連法令を遵守しながら、限られた人員で警備品質を維持するためには、警備業界特化型クラウドを中核とした業務改革が不可欠です。
これは単なる業務効率化ではありません。今後も警備事業を継続していくための「経営インフラの再構築」と位置づける必要があります。
本記事では、警備業界が抱える課題を整理したうえで、警備業界特化型クラウドシステム導入による具体的な効果、警備種別ごとに異なる導入ポイント、さらに導入失敗を防ぐためのチェックリストまで解説します。
警備業界は「高齢者が主戦力」という特殊な産業構造
警察庁「警備業の概況(令和5年版)」によると、警備業界の人材構造は他業界と大きく異なります。
警備業界の従事者データ(2025年最新状況)
| 項目 | 内容・数値 | 特徴・動向 |
|---|---|---|
| 総警備員数 | 約58万人 | 微増傾向だが有効求人倍率は高水準 |
| 年齢構成 | 60歳以上が約50% | 65〜69歳14.8% 70歳以上17%と高齢層が主戦力 |
| 男女比 | 男性93.3%/女性6.7% | 施設警備を中心に女性需要は増加傾向 |
| 外国人 | 増加傾向(統計なし) | 永住者・留学生・定住者などが中心 |
| 雇用形態 | 常用91.5%/臨時8.5% | 常用主体だが現場は流動的 |
(出典:警察庁「警備業の概況(令和5年版)」)
警備業務は年齢上限がなく、健康であれば60代・70代からでも就業可能です。その結果、高齢者が重要な労働力となっています。一方で、30歳未満は約1割にとどまり、将来的な担い手不足、いわゆる「2025年問題」はすでに顕在化しています。
人材の多様化が進むほど、属人的管理は困難
警備業界では、日本人高齢者に加え、女性警備員や外国人労働者の活用が進んでいます。警備業専用の在留資格はありませんが、永住者、日本人の配偶者、定住者、留学生の資格外活動などにより、外国人の就業は現実のものとなっています。
さらに、特定技能制度への追加検討も進んでおり、今後は言語・文化・ITリテラシーが異なる人材が同じ現場で働くことが前提になります。このような環境では、「口頭連絡」「紙マニュアル」「担当者の経験値」に依存した管理は成立しません。
そのため、
・多言語表示
・音声ガイダンス
・地図アプリ連携(現場到達支援)
・ワンタッチ操作
といった「誰でも使える設計」を備えたクラウドシステムが必要不可欠となります。
法令遵守の高度化による、紙・Excel管理のリスク
警備業は、警備業法に加え、労働基準法、労働安全衛生法など複数の法令遵守が求められます。特に管理負担が大きいのは以下の点です。
・有資格者(検定合格者)の配置基準
・労働時間、休憩、36協定管理
・教育時間、実施履歴の管理
紙やExcelでは、人力確認が前提となり、見落としや転記ミスのリスクが避けられません。クラウド型システムであれば、法令違反の可能性を自動で検知・警告でき、コンプライアンスを仕組みとして担保できます。(出典:警備業法、厚生労働省「労働時間制度の概要」)
隊員配置・勤怠管理はクラウドシステムで解決できる

警備業界特化型クラウドを導入することで、以下の業務が大きく変化します。
・上下番報告:電話 → スマホでワンタッチ
・勤怠集計:手入力 → 自動集計
・欠員対応:個別連絡 → 一斉通知・即時把握
GPS連動により、なりすまし防止や位置確認も可能となり、管制業務の負荷は大幅に軽減されます。実際に、月末締め作業が8日から数秒に短縮された事例もあります。
警備種別ごとに異なる「求められるシステム機能」
警備業と一口に言っても、施設警備・交通誘導警備・雑踏(イベント)警備など、種別によって業務内容や管理の難しさは大きく異なります。
そのため、クラウドシステム導入においても「万能型」を選ぶのではなく、警備種別ごとの特性を理解したうえで機能を見極めることが重要です。
警備種別ごとのシステム導入ポイント比較
施設警備
警備種別
施設警備
主な業務特性
・常駐型・長時間勤務が中心
・定期的な巡回業務が多い
特に重視すべきシステム機能
・巡回記録管理
・勤怠管理
・資格管理
導入時のポイント
巡回漏れを防ぐ仕組みと、法令・配置基準を自動でチェックできる設計が重要。
交通誘導警備
警備種別
交通誘導警備
主な業務特性
・屋外業務が中心
・現場が分散し、突発的な欠員が発生しやすい
特に重視すべきシステム機能
・シフト自動作成
・動態管理
・GPS打刻
導入時のポイント
欠員発生時に即座に代替要員を手配できることと、隊員の現在地を把握できる仕組みがカギとなる。
雑踏(イベント)警備
警備種別
雑踏(イベント)警備
主な業務特性
・短期間に人員を大量動員する
・日程や人数の変動が大きい
特に重視すべきシステム機能
・一斉連絡
・出退勤管理
・配置図共有
導入時のポイント
事前準備の段階で情報共有を完結させ、当日の連絡・指示を効率化できるかが成否を左右する。
貴重品運搬警備
警備種別
貴重品運搬警備
主な業務特性
・非常に高いセキュリティ要件
・ミスや情報漏えいが許されない業務
特に重視すべきシステム機能
・権限管理
・操作・閲覧履歴ログ
・厳格な勤怠管理
導入時のポイント
情報へのアクセス制限と、「誰が・いつ・何をしたか」を追跡できる記録保持が必須。
機械警備
警備種別
機械警備
主な業務特性
・少人数で広域をカバー
・夜間や緊急対応が多い
特に重視すべきシステム機能
・アラート連携
・対応履歴管理
導入時のポイント
緊急対応の内容を確実に記録し、後から状況を把握できる可視化が重要。
警備業界でクラウドシステム導入が進まない理由の一つに、「現場の実態と合わない機能ばかりで使われなくなる」という問題があります。重要なのは、”自社の主力警備種別は何か”、”管理負荷が最も高い業務はどこか”を明確にしたうえで、必要な機能が備わっているシステムを選ぶことです。
警備種別ごとの特性を踏まえたシステム選定こそが、現場定着・業務効率化・法令遵守を同時に実現する近道と言えるでしょう。
導入失敗を防ぐためのチェックリスト
警備業向けシステムは「導入すれば終わり」ではありません。 現場に定着しなければ、コストだけがかかり、逆に業務負荷が増えるケースもあります。以下のチェックリストをもとに、自社に本当に合ったシステムかを事前に確認することが重要です。
システム選定前チェックリスト
□ 自社の主力警備種別(施設・交通・イベント)に強い設計になっているか
□ 隊員・管制・事務、それぞれの業務フローが一気通貫で連携しているか
□ スマホ操作が苦手な高齢隊員でも直感的に使えるUIか
□ 日本語以外の多言語表示・音声ガイダンスに対応しているか
□ 地図アプリ連携やGPS機能があり、現場到着確認や動態管理ができるか
□ 勤怠・配置・給与計算が二重入力不要で連動しているか
□ 労働時間・資格配置など法令遵守を自動でチェックできるか
□ 初期費用・月額費用が現場人数の増減に柔軟に対応できる料金体系か
□ 導入後のサポート体制(設定支援・問い合わせ対応)が明確か
このチェックを通過できないシステムは、「使われない」「現場が混乱する」「結局Excelに戻る」といった失敗につながりやすくなります。
まとめ:クラウド導入は「人を守る経営判断」
警備業界特化型クラウドの導入は、管理者を定型業務から解放し、教育・品質管理・顧客対応といった本来の業務に集中するための経営判断です。また、操作が分かりやすいシステムは、高齢者や外国人を含む多様な隊員が安心して働ける環境をつくります。人手不足時代において最大の経営資源は「人」であり、その人が無理なく働ける仕組みづくりこそが、企業の持続性を高めます。警備業界のデジタル化は、もはや先送りできません。
クラウド導入はコストではなく、会社を強くするための投資です。
警備NEXT(警備ネクスト)では、今後も現場実務に役立つ知見や警備員・管理者の声を発信してまいります。日々の業務改革や将来の体制づくりに、少しでもお役立ていただければ幸いです。