警備現場の管理は変わる!警備DXで現場責任者の役割が「対応」から「改善」へ

テクノロジー

少子高齢化による人材不足、労働時間の厳格化、現場の複雑化といった課題が警備業界にも影響しています。
特に現場責任者や管制業務を担うスタッフは、電話対応や書類作成、現場監視、報告書作成といった多くの業務に追われ、「一日が“対応”だけで終わってしまう」という声も少なくありません。こうした背景から、近年は警備現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進みつつあります。

警備現場のDX化とは、従来は個人の経験や勘に依存していた運用を、データやツールに基づく仕組み化された運営に変える取り組みです。これにより、現場業務の効率化だけでなく、管理の属人化を解消し、組織全体で安定した運用品質を確保できるようになります。

本記事では、警備現場におけるDX化による具体的な時間短縮効果、現場責任者の役割の変化、そして新しい管理体制への移行のポイントについて解説します。

警備業界でDX化が求められる理由

これまでの警備現場では、以下のような課題が顕著でした。

  • 電話や紙ベース中心の連絡体制で、情報伝達に時間がかかる
  • 現場からの報告を手作業で集計・確認する必要がある
  • 勤怠確認やシフト調整が個人任せになり、属人性が高い
  • トラブル発生時の対応に時間が割かれ、計画的な改善が後回しになりやすい

こうした状況は、特に人手不足の現場で深刻化します。業務量は増える一方で、経験豊富なスタッフに負担が集中し、効率的な運営が困難です。DX化はこの問題に対する有効な解決策となります。
デジタル技術を活用することで、定型的な事務作業や情報伝達の自動化が可能となり、現場責任者や管制スタッフはより重要な判断や改善活動に注力できる環境が整います。

DX化による時間短縮効果

DXの導入により、警備業務の多くの領域で時間短縮が実現されています。

1. 管制業務・情報共有の効率化

従来は、管制室での電話対応や紙の報告書の確認に多くの時間が費やされていました。
しかし、スマートフォンやクラウドシステムを活用することで、現場からの報告がリアルタイムで管制室に届き、確認や情報共有にかかる時間を大幅に削減できます。

  • 定型的な連絡がアプリやチャットで完結し、電話対応時間が減る
  • 現場からの報告がデジタルで集約され、一覧画面で状況把握が可能
  • 履歴も自動で蓄積されるため、後からの振り返りや検証もしやすい

ある事例では、情報処理にかかる時間が約80%短縮されたケースも報告されています。
これにより、管制担当者は“連絡係”から、データを基にした状況判断と改善提案の役割へとシフトしつつあります。

2. 事務作業・バックオフィス業務の効率化

シフト管理、勤怠確認、給与計算などのバックオフィス業務は、従来は手作業での転記や確認が多く、月末月初に負担が集中していました。
DX化により、これらの業務は大きく変わります。

  • 勤怠データの自動集計により、月末業務が7日から1日に短縮された事例
  • 年間で1000時間以上の作業時間削減が報告されているケースも
  • 給与計算や各種手当計算の自動化により、経理担当者の負担も軽減

このような効率化により、現場責任者は煩雑な事務作業から解放され、現場運営や隊員フォローに注力できるようになります。

3. 現場業務そのものの効率化

AIカメラ、巡回ロボット、スマートグラスなどのテクノロジーの導入により、現場での巡回・監視業務も効率化されつつあります。

  • 常駐監視の必要性を減らし、少人数で広範囲のエリアをカバー可能
  • 現場での報告書作成もタブレットやスマホを使いその場で完結
  • 事務所に戻ってからの転記作業や整理と言った二度手間が不要

結果として、警備員や現場責任者は「記録・報告に追われる時間」が減り、来場者対応や安全確保といった本来の警備業務に集中しやすい環境が整っていきます。

DX化で現場責任者の役割はどう変わるか

DX化は、単なる業務効率化に留まらず、現場責任者の役割自体を進化させます。
従来は、トラブル発生後の対応や日常的な事務処理に追われることが多かった責任者ですが、DX化により“改善と予防”の役割にシフトします。

1. 現状の課題抽出と改善提案

DXツールによって、勤怠・巡回・異常発生などのデータが蓄積されていくと、現場責任者は感覚だけでなく数字に基づいて課題を把握できるようになります。

  • 報告遅延の多い時間帯や現場を特定
  • 巡回ルートのムダや、負担の偏りを可視化
  • トラブル発生の傾向を分析し、対策を検討

これらを踏まえ、DXツールの設定見直しや運用ルールの改善提案を行うことで、現場責任者は組織的な改善をリードする立場になっていきます。

2. 現場の声を吸い上げ、ツール改善に反映

どれだけ高機能なシステムでも、現場で使われなければ意味がありません。
現場責任者は、警備員の声を聞きながら「使いやすさ」を担保する役割も担います。

  • 操作が複雑な箇所を洗い出し、マニュアルや設定を見直す
  • 現場からの要望を取りまとめ、システム改善にフィードバックする
  • ベテラン・新人問わず定着するような運用ルールを設計する

これにより、DX化が「現場負担を増やす仕組み」ではなく、「現場を助ける道具」として根づきやすくなります。

3. 段階的導入と教育

DX導入は一度に全機能を導入するのではなく、段階的に進めることが重要です。現場責任者は、現場の負荷を考慮しながら、段階的な導入と教育を主導します。

  • まずは勤怠や報告など、効果が見えやすい領域からスタート
  • 小さな成功体験を積み重ねながら、対象業務を広げていく
  • 隊員向けの説明会やOJTを通じて、使い方を丁寧に浸透させる

こうしたステップを踏むことで、現場の抵抗感を抑えながらDX化を進めることができます。

4. データ活用による運用改善

DX化によって蓄積されたデータを活用することで、現場責任者はより戦略的な運用が可能になります。

  • 勤怠や報告データを分析し、最適な人員配置を計画
  • 異常発生時の迅速な対応体制を構築
  • 現場全体の警備品質向上に貢献

これにより、単なる作業監督者から、現場全体を改善できるマネージャーへの役割変化が進みます。

5. 人的資源管理と育成

DX化によって定型業務から解放された時間は、「人」に投資できます。

  • 隊員の技能指導やOJTの充実
  • 定期的な面談やフィードバックによるモチベーション管理
  • 健康状態や家庭事情も踏まえた柔軟なシフト作成

AIでは代替できない人間ならではの判断力・コミュニケーション・教育・倫理判断が、ますます重要になります。

DX化による新しい管理体制のポイント

  • 属人化排除と標準化:管理の仕組みを整備し、誰でも運用品質を再現可能に
  • 事前リスク管理の強化:トラブル発生後の対応から、事前にリスクを予防する改善活動にシフト
  • 複数現場の統括管理:データを活用し、広範囲の現場を効率的に管理
  • 顧客価値の向上:DX化で生まれた余裕を活かし、より高度な提案やサービス提供

DX化は、現場責任者の業務を単なる“作業管理”から、組織全体の改善をリードする戦略的役割へと進化させます。

「対応」から「改善」へ—現場責任者の進化

DX化は、「担当者の力量で業務を回す体制」から「組織全体で運用品質を再現できる体制」への移行を後押しします。管制業務やシフト調整、連絡・指示出し、隊員フォローといった日常業務は、属人性の排除と標準化により、現場責任者の役割そのものも変化します。

これまで“トラブル発生後の対応”に追われていた業務が、DX化によって“事前にリスクを取り除き、現場全体を改善できる役割”へと拡張されます。

人材不足や高齢化に対する対症療法ではなく、企業としての持続的な運営に向けた構造改革にもつながるため、まずは自社の状況に合わせ、取り組みやすい領域から着手してみてはいかがでしょうか。

警備NEXT(警備ネクスト)では、今後も現場実務に役立つ知見や警備員・管理者の声を発信してまいります。日々の業務改革や将来の体制づくりに、少しでもお役立ていただければ幸いです。


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