2026年2月、千葉県警は、警備業法違反および労働者派遣法違反の疑いで7社8人を書類送致しました。 本事案では、交通誘導警備員を他社の指揮命令下で従事させた行為や、無届・無認定での警備業務が問題とされています。
警備業界においては、警備業務への労働者派遣は原則禁止であり、今回の事案は実務運用の適法性を見直す契機となる可能性があります。
出典|千葉県警察(2026年2月24日公表)
事案の事実関係
千葉県警の発表(2026年2月24日)によると、書類送致は2026年2月20日付で行われ、違反内容は公開情報をもとに以下のとおり整理しました。
① 警備業法違反(無届)
令和7年6月12日、千葉市稲毛区内に事業所を設けたにもかかわらず、千葉県公安委員会への届出書を提出しなかったA社および会社役員の男性を書類送致。
② 警備業法違反(無認定)
令和7年4月14日〜16日の間、千葉県公安委員会への認定申請を行わないまま、合計3回にわたり雇用した労働者を交通誘導警備業務に従事させたB社および会社役員の男性を書類送致。
③ 労働者派遣法違反(禁止業務への派遣)
令和7年4月14日〜6月16日の間、合計11回にわたり雇用した労働者を交通誘導警備員として派遣し、他社の現場責任者の指揮命令下で道路補修舗装業務時における交通誘導警備業務に従事させたA社・会社役員の男性・会社役員の男性、B社・会社役員の男性を書類送致。
④ 労働者派遣法違反(禁止業務への派遣)+警備業法違反(無認定)
令和7年4月2日〜6月27日の間、合計84回にわたり雇用した労働者を交通誘導警備員として派遣し、他社の現場責任者の指揮命令下で道路補修舗装業務時における交通誘導警備業務に従事させ、さらに認定申請を行わないまま合計39回にわたり交通誘導警備業務に従事させたC社および会社役員の男性を書類送致。
⑤ 労働者派遣法違反(禁止業務への派遣)
令和7年4月3日〜7月1日の期間中、雇用した労働者を交通誘導警備員として派遣し、他社の現場責任者の指揮命令下で道路補修舗装業務時における交通誘導警備業務に従事させた4社・4名を書類送致。
なぜ問題となるのか
警備業務は「派遣禁止業務」
労働者派遣法では、警備業務(警備業法第2条に規定される業務)への労働者派遣は禁止されています。
そのため、
他社が雇用する警備員を自社の指揮命令下で働かせる
といった形態は、契約形態にかかわらず違法となる可能性があります。
判断基準は「契約」ではなく「実態」
行政判断において重視されるのは、契約書の形式ではなく、現場の実態です。 今回の事案でも、他社の現場責任者の指揮命令下で警備員が就業していた点が重要な判断要素となっています。
特に確認されるポイントは以下です。
- 指揮命令を誰が行っているか
- 雇用関係がどこにあるか
- 教育・配置の責任主体はどこか
「無届」と「無認定」は別の違反
今回の事案では、無届(届出書の未提出)と無認定(公安委員会への認定申請なし)の両方が問われています。この2つは異なる違反類型であり、それぞれ独立した法的責任が生じます。
警備会社が押さえるべき実務ポイント
今回の事案を踏まえ、現場運用において確認すべきポイントは以下です。
- 他社雇用の警備員を、自社の指揮命令下で運用していないか
- 警備員の教育・配置が自社責任で完結しているか
- 契約形態と現場実態に乖離がないか
- 委託先が公安委員会の認定を受けた警備業者か
- 事業所設置時の届出が適切に行われているか
これらはすべて、適法性判断に直結する要素です。
想定される行政処分
警備業法および関係法令に違反した場合、以下のような処分が行われる可能性があります。
- 営業停止命令
- 認定の取消し
- 罰金等の刑事処分
※ただし、今回の事案における具体的な処分内容は現時点では確認できません
まとめ
今回の事案から確認できるポイントは以下のとおりです。
- 警備業務への労働者派遣は法律上禁止されている
- 実務判断は「契約」ではなく「現場の実態」で行われる
- 「無届」「無認定」「違法派遣」はそれぞれ独立した違反類型である
- 指揮命令関係の整理がコンプライアンス上の核心
警備業は制度産業であり、運用のわずかなズレが法令違反に直結する特徴があります。 現場単位の運用についても、改めて適法性の確認が求められます。
今回の事案を「他社の話」で終わらせないことが重要です。
人手不足や現場の忙しさを理由に、自社の運用が曖昧になっていないか、この機会に、自社の契約形態・指揮命令体制・届出状況を改めて点検してみてはいかがでしょうか。
警備NEXT(警備ネクスト)では、今後も業界の動向を発信してまいります。
本記事は、千葉県警察の公表情報(2026年2月24日)をもとに編集部が構成しています。
特定企業の違法性を断定するものではありません。