政府は11月、2025年度補正予算案を閣議決定しました。今回の補正では、政府全体の公共事業費が 約2.6兆円 に達し、前年度を上回る規模となっています。
特に「防災・減災」「国土強靱化」といった危機管理投資に 1.55兆円 が投じられ、インフラ整備・公共施設の改修が多方面で進む見込みです。国土交通省が所管する公共事業費も 2兆873億円 と、同省の補正予算としては発足以来はじめて“2兆円超”を記録しました。
これにより、全国で道路・橋梁・河川・学校施設など、多様な工事現場が動き出す可能性があります。
こうした公共投資の拡大は、警備業界においても 受注機会の広がりが期待できるタイミング といえます。
公共事業の増加で警備需要が高まりやすい理由

道路・橋梁・河川工事での「交通誘導・保安業務」
道路舗装、橋梁補修、治水工事などの現場では、以下の警備が必要になるケースがあります。
- 資材搬入出の車両誘導
- 歩行者の安全導線確保
- 夜間作業時の保安灯管理
- 工事区間の片側交互通行誘導
特に国土強靱化関連の工事は工期が比較的長くなりやすく、複数月にわたる発注につながるケースも見られます。
公共施設(学校・庁舎)の改修での安全管理
補正予算には、公立学校施設の老朽化対策や避難所機能の強化も含まれています。こうした現場では以下のような警備が発生します。
- 児童の導線と工事動線を分離する警備
- 校庭や周辺道路の車両誘導
- 作業員・外部業者の出入り管理
特に学校工事は日中の施工が多く、安全確保のための警備人員配置が求められやすい分野です。
災害復旧・復興に伴う臨時警備
豪雨・台風・地震などの被災地域では、復旧工事に伴い突発的な警備需要が発生することがあります。
- 道路啓開作業の誘導
- 仮設住宅エリアの入退場管理
- 復旧工事車両の夜間誘導
短期間で集中的に人員が必要となるため、スポット警備の機会につながる場合があります。
インフラDX・遠隔監視で広がる“併用型警備”
今回の補正では、維持管理の高度化やインフラDXにも予算が投じられています。
これにより、以下のような“デジタル併用型警備”の提案余地も広がります。
- 工事現場にカメラを設置 し、警備本部で遠隔モニタリング
- AIカメラと巡回警備の組み合わせ
- 見守りセンサーによる夜間の省人化設計
とはいえ、大きな設備投資をいきなり行う必要はありません。
まずは 「カメラ+巡回」など、既存業務に小さくDXを加える」 といった取り組みだけでも、工事会社からの評価につながります。
経営層が今“準備すべき”ポイント

公共事業は発注が集中する時期があり、準備不足の会社は受注チャンスを逃しやすいのが実情です。
今回の補正を踏まえると、以下の取り組みが効果的です。
重点分野での提案資料・営業体制の整備
「道路」「学校」「災害復旧」など、自社が強い領域を明確化し、入札や工事会社向けの提案資料を整えておくと受注に繋がりやすくなります。
資格者(交通誘導2号)と体制の強化
工事現場の増加に備えて、体制面の強化が必要です。
- 資格者の計画的確保
- 隊員のシフト管理
- 健康管理・勤怠管理の効率化 など
ICT併用の提案力を少しずつ育てる
“工事現場カメラ+巡回”など、既存業務と組み合わせた形でDXの第一歩を踏み出すことで、工事会社や自治体への説得力が高まります。
地域自治体との関係構築
学校・公共施設の工事は自治体主導で行われるため、地域に根ざした警備会社は大きな優位性を持てます。
警備業界は“機会と制約が並走”する時代
警備需要が増える可能性がある一方で、現実の制約も存在します。
- 隊員不足
- 採用単価の上昇
- 資格者不足
- 夜勤現場の負担増 など
つまり、機会はあるが準備がなければ受注できないという構図です。特に今回のように公共投資が大きく動くタイミングでは、“体制が整っている企業が一気にシェアを伸ばす”ことも珍しくありません。
今は“仕込みどき”。来年以降の受注につながる準備を
2025年度補正予算の拡大により、今後1〜2年の公共工事は活発化する見込みがあります。
これらはすべて、交通誘導・施設警備・夜間警備・遠隔監視など、警備会社の事業領域と密接にリンクする分野です。公共事業の本格稼働は、例年「年度明けから夏」にかけて加速します。
- 人材確保
- 提案力強化
- 資格者の計画的育成
- DX対応の基礎づくり
まさに今こそ、警備会社が取り組む絶好のタイミングです。
この波をつかむ準備を整えれば、来年度の安定受注につながる土台を築くことができるかもしれません。今回の補正予算は、警備会社にとって 将来への備えを後押ししてくれるタイミング と捉えておくとよいでしょう。
警備NEXT(警備ネクスト)では、引き続き法改正や価格適正化の動きを追い、警備会社が現場運営に活かせる情報を発信していきます