警備の現場では、「立っていればいい」「巡回できればいい」と思われがちですが、実際に経験してみると、仕事の半分以上はコミュニケーションだと気づく人も多いはずです。その中でも、とくに大切なのが“報連相(ほう・れん・そう)”。「報告・連絡・相談」を適切に行えるだけで、現場の安全性はもちろん、あなたへの信頼度も大きく変わります。新人のうちは「何をどこまで話せばいいの?」「こんなこと聞いたら怒られない?」と不安を抱えるのが自然です。今回の記事では、警備の現場で求められる“報連相”の基本を、できるだけ具体的に、わかりやすく解説します。初めての現場でも、先輩に「お、ちゃんとできてるな」と思ってもらえるようなコツを、一緒に身につけていきましょう。
なぜ警備の現場では「報連相」が重要なのか
まず知っておきたいのは、警備の仕事は「状況が変わりやすい」という点です。人の流れ、天候、来館者の様子、イベント中の突発的な動き。どんなに経験豊富な隊員でも、予想外のことは起こります。
そこで必要なのが、隊員同士で情報を共有し、判断をそろえること。たとえば巡回中に「人の集まり」を見かけたとします。何かの説明会かもしれませんし、クレーム対応中かもしれません。あなたが黙って通り過ぎれば、指揮者は状況を把握できず、適切な対応が遅れる可能性があります。
逆に、「○○入口付近に人だかりができています。理由は不明です」と一言伝えるだけで、現場全体の安全レベルはぐっと高まります。つまり報連相とは“自分のため”というより、“現場の安全のため”。だからこそ、新人のうちから丁寧に身につけておくと強い武器になります。
新人がつまずきやすい「報連相」3つのポイント
●「何を伝えるべきか」がわからない
新人の多くが悩むのがこれ。「こんな小さなこと言う必要ある?」と迷うのは自然です。ただし警備業では、小さな変化こそ重要なヒントになることがあります。
●“報告のタイミング”がつかめない
仕事に慣れていない頃は、先輩が忙しそうに見えて声をかけづらいものです。しかし、伝えるべき内容が遅れると、危険を見逃してしまうこともあります。
●言い方が硬すぎたり、逆に曖昧だったりする
「どう言えば伝わるのか」も最初は難しい部分です。丁寧すぎて回りくどくなる人もいれば、「問題ないっす」など曖昧な言い方で誤解される人もいます。でも心配しなくて大丈夫。これから紹介するコツを押さえれば、自然と伝え方が上手くなっていきます。f
“報告”の基本:事実を短く・正確に伝える
報告は「起きたこと」をそのまま伝える作業です。難しく考える必要はありません。ただし、警備では推測よりも事実を優先することが大切です。
例えば、「たぶん酔ってるお客さんが騒いでいました」よりも、
「男性のお客様が大声を出しながら歩いていました。足取りがふらついています」のほうが、先輩は状況を判断しやすくなります。
●報告の型
場所+現象+人数/対象+自分の行動この4点が入っていれば十分です。
報告の例
「北側入口付近で、30代くらいの男性が長時間座り込んでいます。声をかけましたが反応がありません」
このように、短くても必要な情報がそろっていれば OK。
むしろ、長く説明しようとして混乱するより、簡潔で整理された報告 のほうが現場では役立ちます。
“連絡”の基本:仲間や指揮者と情報をそろえる
連絡は「共有」が目的です。大きなトラブルではなくても、現場の状態が変わったらこまめに伝えることで、全員の認識がそろい、ミスが減ります。
報告の例
「受付前の行列が伸びてきたので、一時的に誘導を強化します」
「○○通路の蛍光灯が切れています」
事件性はなくても、こうした情報は意外と重要です。施設担当者が来た時に「さっき聞いていなかった」となると、あなたも先輩も困ります。現場の“今”を共有する意識が大切です。
“相談”の基本:自分で抱え込まず、早めに頼る
新人が特に難しく感じるのが相談です。「こんなこと聞いたら怒られるかな…」と躊躇しがちですが、実は相談ができる新人ほど、現場では評価されます。なぜなら、相談とは「判断に迷った時にリスクを減らす行動」だから。
自己判断で突き進んでしまうほうが事故につながることもあります。
相談のコツは、“現状”と“自分の判断”の2つをセットで伝えること”。
報告の例
「来館者から道を聞かれましたが、案内の範囲か少し迷っています。○○先輩ならどうしますか?」
状況が整理されていれば、先輩も答えやすくなりますし、あなた自身の理解も深まります。
伝えるときの“声掛けの工夫”で印象が変わる
報連相は「内容」だけでなく、「話し方」も重要です。
新人隊員はどうしても緊張して早口になったり、語尾が曖昧になりがちですが、少しの工夫で印象は大きく変わります。
●話し始めは“ひと声”入れる
「今、お時間よろしいですか?」「相談したいことがあります」
たったこれだけで、先輩は聞く姿勢を整えてくれます。
●伝える前に“結論”を言う
現場は常に動いているため、回りくどい説明だと伝わりにくくなります。
報告の例
「結論としては、南側ルートの誘導が必要だと思います。理由は──」
この順番にすると、先輩は状況を把握しやすくなるため、判断も早くなります。
●感情ではなく“事実”を中心に話す
「めちゃくちゃ怖い人が来ました」「ちょっとヤバそうな人が…」
これは伝わりません。
「来館者の男性が大声をあげています」「物を投げる動作が見られました」
このように事実ベースで話すと、誤解なく共有できるようになります。

トラブル時の“報連相”はどうする?
いざという時の報連相は、通常時よりもシンプルでOKです。むしろ簡潔なほうが現場が動きやすくなります。
伝える順番は次の3つ。
- 何が起きたか(事象)
- どこで起きているか(場所)
- あなたは今どうしているか(対応)
報告の例
「正面入口で来館者同士の口論が発生しています。私は距離を取って状況を見ています」
警備員の基本は“冷静”です。慌てて長く説明しようとすると、余計に伝わりにくくなります。落ち着いて、短く、順序よく伝えましょう。
報連相がうまい新人の共通点
経験上、報連相が上手な新人にはいくつか共通点があります。
●「自分のためじゃなく、現場のため」と考えている
“伝える目的”がブレないので、迷った時も判断しやすくなります。
●先輩の言い回しをメモしている
現場でベテランの先輩が無線でどう報告しているかを聞くと、良い言い方が自然と身につきます。
●「聞き返し」を恐れない
わからないまま進めるより、きちんと確認したほうが結果的に早いということを知っています。ここは素直さ、前向きさが出るところでもあります。
報連相は「慣れ」で必ず上達する
最初の頃は、「自分ばかり報告している気がする…」「言い方が硬いかも」と不安を感じるかもしれません。でも、報連相は“場数”で必ず上手になります。
1カ月もすると、
「この状況は先に共有したほうがいいな」
「こういう時は先輩はこう言っていたな」
という感覚が身についてきます。警備の仕事は、チームで現場を守る“共同作業”です。
そのための土台となるのが報連相。あなたが丁寧に伝えてくれるだけで、現場の空気は間違いなく引き締まり、先輩たちも仕事がしやすくなります。
最後に:報連相は“信頼される警備員”への最初のステップ
新人のうちは覚えることが多く、時には心が折れそうになることもあると思います。しかし、報連相は最も早く身につけられて、最も効果が出やすいスキルです。
しっかり伝えることで、「この新人、気が利くな」「任せても大丈夫そうだ」そんなふうに思ってもらえることは、あなたの自信にもつながります。
警備の仕事は、目立たないところで多くの人の安全を守る大切な業務。その第一歩は、“伝える力”から始まります。
今日から一つずつで大丈夫です。あなたの報連相が、現場の安全と信頼につながっていきますように。
警備NEXTでは、これからも隊員の皆さんが安心して働けるよう、現場で役立つ情報を発信していきます。