年末は、警備の現場が最も慌ただしくなる季節です。交通量の増加、買い物客の集中、工事の前倒し、イベントの活発化……。普段は落ち着いた現場であっても、年末だけは空気が一変することも珍しくありません。
初めて年末警備を任された隊員は、「どんな雰囲気なんだろう?」「何に気をつければいい?」「トラブルが起きたらどう動けばいい?」と不安を抱えがちです。しかし、年末警備はやみくもに怖がる必要はありません。大切なのは“事前に知っておくこと”と“正しく準備すること”。これだけで、緊張を大きく減らし、安全に業務をこなすことができます。この記事では、初めて年末警備に入る隊員が 安心して現場に立ち、確実に役目を果たせるようになる5つのコツ をまとめています。実際の現場経験から来る“あるあるの危険ポイント”や、“新人がつまずきやすい場面”“事故につながりやすい要素”も織り込みながら解説するので、ぜひ今日から役立ててください。
コツ①:年末は普段と違う動き方!年末警備の“特徴と危険”を先に知っておこう
年末警備の現場は、通常とは違う“独特の動き方”をします。まずはその特徴を把握することが最大の安心感につながります。
人・車・現場の「全部」が忙しくなる
年末は、以下のようなイベントが重なり、人も車も、いつも以上に多い状態になります。
特に2号警備(交通誘導・雑踏)は影響を強く受け、「午前はスカスカなのに午後から急に大混雑」というケースもあります。
・買い物客・帰省客の増加
・配送トラックの増加
・工事現場の“年内仕上げラッシュ”
・イベント開催の増加 など
また、1号警備(施設警備)でも、普段より問い合わせが増える傾向があります。
・来場者対応の増加
・館内トラブルの増加
・忘れ物・落とし物の増加 など
事故につながる“危険ポイント”が増える
年末シーズン特有の危険として、通常時より事故が起きやすく、新人が初めての現場でパニックになる原因にもなりがちです。
- 焦るドライバーの急発進・急減速
- 大量の人の流れによる滞留・逆走
- 寒さによる隊員自身の集中力低下
- 路面凍結による転倒
- 暗くなる時間の早さ など
「知っている」だけで動きが楽になる
大切なのは、「年末はこういう時期だから、こうなるんだ」と事前に理解しておくこと。まったく知らずに現場へ入ると、どんな小さな変化でも「え? なんで?」と焦ります。
しかし、最初から想定しておけば、「来た来た、こうなると思った」と落ち着いて動けます。
コツ②:事前準備と“情報共有”を丁寧に!年末は準備の質が安全を左右する
年末警備で最も大切なのは、事前準備と情報共有です。
普段の現場よりも“確認しなければならないこと”が明確に増えます。
下見(現場確認)は新人ほど必須
可能であれば、現場の“下見”をしておくのが理想です。確認しておきたいポイントは以下の通りです。
- 車両の流れ
- 歩行者の動線
- 混雑しそうな場所
- 障害物・デッドスペース
- 出入口・退避場所
- トラブルが起きた時の集合ポイント
事前に地図だけ見て現場に入ると、「ここ思ってたより車線狭い!」「ここ視界悪いじゃん!」と直前で焦ることが多いのですが、下見しておけば初動が圧倒的にスムーズになります。
年末は“特例ルール”が発生しやすい
施設・店舗・工事現場では、年末だけの特例ルールが設定されることがあります。
- 駐車場の一部開放
- 入店ルートの変更
- 配送車の時間変更
- テナントの営業時間延長
- 一時的な迂回路の設置
新人が知らないとトラブルになりやすいため、必ず「今日の特例ルールありますか?」と最初に確認しましょう。
情報共有を面倒くさがらない
年末の警備では、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)が現場を救います。新人が特にやりがちなのが、「些細なことは言わなくていいだろう」という思い込みですが、年末はそれが事故の元。
- 駐車場が急に混み始めた
- 歩行者の流れが変わった
- 工事車両の待ち列が伸びた
- 風が強まり誘導が難しくなった
こうした小さな変化は、上長にとって極めて重要な情報です。年末は、“言いすぎかな”くらいがちょうどいいと思っておきましょう。

コツ③:防寒・体調管理で“集中切れ”を防ぐ!寒さ対策は安全対策
年末警備はとにかく寒い。寒さは隊員の集中力を容赦なく奪います。
冬は集中力が本当に落ちる
寒いと仕事の質に直結します。特に夜間は、「突然、体が動きにくくなる」「気づいたらボーッとしていた」という現象が起きやすく大変危険です。
- 視界が狭まる
- 手指が動きにくい
- 誘導が雑になる
- 挨拶や声かけが弱くなる
- 判断が遅れる など
装備は“私物OKか必ず会社に確認”
防寒装備はとても重要ですが、私物使用には会社ごとにルールがあります。現場・会社ごとに制限されている場合があります。勝手に使うのはNG。必ず確認してからにしましょう。
※会社の規定だけでなく、当日の現場責任者の指示が最優先となります。現場ごとに安全基準が違うためです。
- 色付きインナー
- ネックウォーマー
- 防寒ジャケット
- 防寒手袋
- カイロの貼り位置 など
冬の基本は「体幹を冷やさない」
おすすめの装備は、以下の通りです。特にカイロは“貼る場所”が効果を左右します。背中の腰骨あたり(腎臓の上)に貼ると全身が温まりやすいのでおすすめです。
※カイロは直接肌に貼らないようにし、必ずメーカーの使用方法に従ってください。長時間同じ場所に貼り続けると低温やけどの危険があります。
- 吸湿速乾インナー
- 発熱インナー(規定範囲内で)
- 防寒性の高い靴
- 滑り止めインソール
- 手の動きを妨げない薄手防寒グローブ
- カイロ(腰・お腹・背中)
休憩を軽視しない
「寒すぎて気づいたら集中していなかった」という状態は危険なので、休憩時の暖取りも重要です。
- 暖かい飲み物を用意
- 防寒着の調整
- 体を軽く動かす
- 手足を温める
これだけで、次の1時間のパフォーマンスが大きく変わります。
コツ④:利用者対応は“丁寧、ルールの範囲内で”年末は声かけの数が増加
年末は、買い物客・帰省客・観光客など、いつも以上に利用者対応が増えます。
やさしい対応は大事だが、“やりすぎ”は危険
見た目は親切でも、「ルールを超える案内」はクレームや事故の原因になります。
- 禁止されている場所を案内してしまう
- 勝手にルート変更して誘導してしまう
- 判断が必要な事案に自分の裁量で対応してしまう
新人ほど、「良かれと思って…」でやってしまいがちです。しかし、年末ほど危険な時期はありません。利用者対応=指定された範囲の業務だけとしっかり覚えておきましょう。
混雑時は“見ているだけで安全に貢献できる”
年末の混雑は、隊員1人の動きで流れが崩れることもあります。そのため、新人は無理に流れを動かそうとしないというスタンスが安全です。
- 行列の詰まり
- 逆走
- 子どもが走る
- 足元の危険
- ドライバーのイライラ
こうした“前兆”を見つけて、すぐに上長へ伝達することが最も正しい動きです。
年末は“声”の効果が普段の2倍
「足元すべりやすいです」「混雑しますので順番にお願いします」「車両が通ります、ご注意ください」たった一言で事故が防げる場面も多いです。年末は騒音・人混みで伝わりにくいので、いつもより“はっきり”“ゆっくり”を意識しましょう。
コツ⑤:トラブル時は“絶対に独断しない” 新人を守るルールは「相談・報告」
年末はトラブルが起きやすい時期です。以下の事案に注意してください。
- 転倒事故
- 車両の接触
- 子どもの迷子
- 施設トラブル
- 故障・停電
- 苛立つドライバー・来場者 など
新人に求められているのは「判断」ではない
新人は、状況把握 → すぐ報告 → 指示を受けて行動だけでOKです。むしろ、新人が“判断しようとすること”が危険です。
※新人は“判断”をせず、案内が必要な場合は必ず上長の確認を取る。
勝手にルートを変更・許可されていない場所へ誘導すると事故責任が発生する可能性があります。
「これは小さいことかな」と思っても報告
年末警備では、「大事かどうか」を新人が判断してはいけません。
- 少し車が渋滞してきた
- 風が強くなった
- 足元が凍りそう
- 子どもが走り回っている
- 駐車場の流れが変わった
こうした小さな情報こそ、上長にとっては重大な予兆です。
トラブルは“早期発見”が何よりも重要
隊員の仕事で一番大切なのは、“事故を未然に防ぐこと”。そのためには、早め早めの報告・共有が最も有効です。新人のあなたが「報告が早い」「相談が丁寧」なら、上長からの信頼は一気に上がります。
まとめ:年末警備は“成長のチャンス”
年末警備は、確かに厳しく、忙しく、緊張する現場が多い時期です。しかし、同時に、現場経験が一気に増える判断力が鍛えられる、対応力が磨かれる、チームワークの重要性が理解できる、という、隊員として成長できる貴重な季節でもあります。
この5つを押さえておけば、年末警備は怖くありません。
- 年末の特徴と危険を理解する
- 事前準備と情報共有を徹底する
- 防寒・体調管理で集中力を維持する
- 利用者対応はルールの範囲内で丁寧に
- トラブル時は独断せず、必ず報告・相談する
この5ポイントさえ押さえていれば、初めての年末警備でも「落ち着いて」「安全に」任務を果たせます。
警備NEXTでは、これからも隊員の皆さんが安心して働けるよう、現場で本当に役立つ情報を発信していきます。
どうか安全第一で、今年の年末警備を乗り切ってください。
あなたの一日一日の行動が、現場の安全を支えています。