2024年に成立した改正建設業法が全面施行され、建設工事に関わる職種ごとに国が「労務費の基準値」を示す仕組みが動き始めました。初弾として発表されたのは14職種で、その中には 「警備(交通誘導)」も、建設現場を支える業務として含まれています。
今回の改正は建設業を対象とするものですが、警備会社にとっても見逃せない内容となっています。
そもそも建設業法の改正は、警備会社に関係あるのか?
結論から言うと、建設業法そのものは警備会社には適用されません。ただし、影響は確実に及ぶと考えられています。理由はシンプルで、国が次のように位置づけているためです。
「交通誘導の警備員は、建設工事を進めるうえで欠かせない存在」
「だから労務費の基準値(適正な価格の目安)も設定していく」
つまり「建設業のルール変更」ではあるものの、交通誘導警備はその枠組みの中で重要な役割を持つという扱いになっているのです。ただし、
警備業務の契約は“建設工事そのもの”ではない
という法律上の整理があるため、建設業法の規定が警備会社にそのまま適用されることはありません。では、どう実効性を確保するのでしょうか。国は次のような“別ルート”を使う方針を示しています。
- 改正下請法(取引適正化法)に基づく価格転嫁の助言・指導
- 警備業界に対する適正価格の要請
このように、「建設業法の対象外だが、価格適正化の流れにはしっかり警備業も巻き込む」という形で影響が広がっていくと考えられています。
警備会社が押さえるべき三つの影響
今回の改正は建設業界向けですが、警備会社が早めに把握しておくべき点が3つあります。
① 労務費の「最低ライン」が実質的に明確になる
国が基準値を示すことで、警備会社が建設会社と交渉する際の“適正水準”が可視化されます。
- 安すぎる単価の見直し
- 適正価格での契約
- 安全確保に必要な人員配置の説明がしやすくなる
など、交渉の根拠材料として使える場面が増えていきます。
② 元請・建設会社からの「価格転嫁要請」が強まる可能性
下請法の趣旨に沿って、元請側から
- 適正な労務費を反映してください
- 無理な低価格での契約は避けてください
といった要請が増えると見られます。つまり、“安く受ければ仕事が取れる”という構造が変わりつつあるということです。
③ 警備員の待遇改善につながる可能性
国が労務費の適正化を進める以上、建設関連の交通誘導はもちろん、その他の警備業務にも波及しやすくなります。
- 給与水準の適正化
- 離職率の改善
- 採用競争力の向上
など、経営・人事の両面にプラスの影響が期待されます。

警備会社が“今からできること”
改正建設業法はすでに動き出しており、警備会社は早めの備えが重要です。経営・人事・総務が連携して取り組むべきポイントを整理しました。
警備会社がまず取り組むべきは「単価・賃金構造の見える化」
どの現場の利益率が低いのか、どの単価が適正で、どこに無理があるのか、を整理し、適正価格への移行準備を進める必要があります。
- 原価の把握
- 現場ごとの単価比較
- 警備員への支給額と請求額のバランス
警備会社が元請との交渉方針を明確にする
「国が基準値を出している」ことは、大きな交渉材料になります。
- どの単価を見直すか
- 交渉の根拠として何を提示するか
- 価格転嫁のガイドラインをどう活かすか
など、会社としての姿勢を示すことで、現場の負担軽減につながります。
警備会社が“経営・人事・総務”横断で体制をつくる
法改正への対応は、どの部署か一つだけが取り組めばよいものではありません。
- 経営 → 単価戦略・原価設計
- 人事 → 給与・採用の見直し
- 総務 → 契約書・価格交渉資料の整備
三位一体で動くことで、効果的な準備が可能になります。
まとめ
建設業法の改正は、直接的には警備会社に適用されません。しかし、国が 「労務費は適正に支払われるべき」 という方向を明確にしたことで、交通誘導警備を中心に警備業界にも影響が及ぶのはほぼ確実です。
- 適正価格での契約
- 原価の見える化
- 警備員の待遇改善
- 採用・労務・契約の内部整備
といった準備を警備会社は進めることで、この流れをチャンスとして活かすことができます。
警備NEXT(警備ネクスト)では、引き続き法改正や価格適正化の動きを追い、警備会社が現場運営に活かせる情報を発信していきます。