【特集】大阪・関西万博2025の警備体制を徹底解説

業界ニュース

2025年4月に開幕した大阪・関西万博は、半年間で数千万人の来場が見込まれる国際イベントです。開会式前後には、最大でおよそ1万人規模の警備体制が敷かれ、現在も多層的な警備運営が続けられています。来場者の安全を確保するため、警察庁や大阪府警を中心に、民間警備会社や関連団体が連携し、人的警備・テクノロジー・教育・広域協力を組み合わせた体制が構築されています。本記事では、人的警備と最新テクノロジーの融合など全貌をご紹介します。

万博警備の位置づけ

大阪・関西万博は、世界約160の国と地域が参加し、半年間で2,820万人規模の来場者が予想される国際イベントです。オリンピックやサミットと並ぶ「国家的警備対象」と位置づけられています。警察庁は「大阪・関西万博警備対策推進室」を設置し、大阪府警も「万博対策本部」を編成。開会式など警備が厳重になるタイミングには、最大1万人規模の警備体制が展開されました。現在も来場者数やイベント内容に応じ、規模や体制が柔軟に調整されています。

会場内のセキュリティ体制

人的警備

会場には数千人規模の警備員が日々配置されています。主な任務は以下の通りです。

  • 入場ゲートでの金属探知機・手荷物検査
  • 会場内巡回による不審者・不審物対応
  • 混雑エリアの整理と誘導
  • VIP警護やイベント時の動線確保

夏場は猛暑の中で勤務するため、体調管理や休憩ローテーションによる熱中症対策も重視されています。

機械警備・監視システム

会場全体には数百台規模の監視カメラが設置され、中央管制室で常時モニタリング。不審な動きや突発的な事故を早期に把握し、現場へ指示を出せる体制が整備されています。AIによる群衆行動解析の試行も行われています。

医療・防災

救護所やAEDが会場各所に設置され、医師・看護師が常駐。体調不良や事故に迅速に対応できる体制が整っています。猛暑対策として冷却装置やミスト散布も導入されています。

会場外での警備と交通誘導

夢洲の人工島という特性上、アクセス経路が限られるため、会場外での人流・車両管理は極めて重要です。夢洲交通ターミナルや桜島ターミナルには数百人規模の警備員が配置され、公共交通利用者の安全と誘導を担当。舞洲地区の駐車場では渋滞や事故防止の取り組みが行われています。障がい者用駐車場では車いす対応や送迎補助も実施されています。

新技術の導入とロボット警備

万博を象徴するのが警備ロボットの活用です。帝国警備保障(テイケイ)が導入したロボットは、巡回や不審物検知を担い、異常を即時通報。夜間や人が少ない時間帯に場内を監視するほか、来場者案内機能も搭載され、警備員は接客や状況判断といった人間ならではの役割に集中できます。

ドローン規制と空の安全確保

夢洲および周辺約1kmはドローン飛行禁止区域に指定され、違反機の監視や無力化技術が導入されています。イベント会場を狙った不審ドローンへの備えは国際的にも注目を集めています。

警備員教育と現場力の強化

新大阪警備は障がい者対応、AED使用、熱中症対策、外国語対応を含む研修を実施。さらにVR訓練など先進的手法を取り入れる企業もあり、災害時やパニック発生時への対応力強化が進んでいます。警備員は安全だけでなくホスピタリティも担う存在へと進化しています。

広域連携とサイバー対策

国土交通省や関係団体との連携により、鉄道・港湾・空港など周辺インフラの警備も強化されています。サイバー攻撃対策としてネットワーク監視が導入され、ホテルや商業施設との情報共有により、トラブルの芽を早期に発見する仕組みが整えられています。

現場の課題と工夫

  • 人材確保: シニア層や学生アルバイトを採用し、ロボットやデジタルツールで補完。
  • 暑さ対策: 空調服・冷感インナーを支給し、定期的な水分補給や交代勤務を徹底。
  • 多言語対応: 翻訳アプリや音声翻訳デバイスを活用し、来場者への対応力を強化。

業界へのインパクト

大阪・関西万博の警備体制は、最大1万人規模の展開、最新技術と人的警備の融合、教育・ホスピタリティの強化、官民連携による広域的な警備など、多層的な仕組みで運営されています。これらの取り組みは、将来のスポーツイベントや国際会議のモデルケースとなり、警備業界の新たな標準を生み出す可能性があります。

まとめ

大阪・関西万博2025の警備は、人的リソースと最新技術、そして官民連携の融合によって稼働する大規模体制となっています。来場者の安全を守るだけでなく、警備業界の未来像を示す「実証の場」となる取り組みです。万博の成果が今後どのように全国の警備体制に活かされていくのかに注目が集まります。

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出典・参考資料:

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