外国人警備員の活用は進むのか?注目される最新政策と今後の展望

業界ニュース

1. なぜ今、外国人材の活用が注目されているのか

警備業界では、少子高齢化による慢性的な人手不足が続いています。特に深夜帯や休日のシフト、長時間の立哨業務などは敬遠されがちで、採用難は年々深刻化しています。高齢の警備員に頼らざるを得ないケースも増える中で、「若くて継続的に働ける人材」の確保が急務となっています。
こうした背景のもと、政府は外国人材の受け入れを進める政策を打ち出しており、建設業・介護業・宿泊業など多くの現場で活用が広がっています。警備業界でも「いつかは必要になる」という意識が高まっており、現場レベルでの検討が始まりつつあります。

2. 最新の外国人雇用に関する政策動向

2024〜2025年にかけて、外国人労働に関する制度が大きく見直されつつあります。警備業界の今後に影響を与える政策を整理すると、以下のようになります。

2.1 育成就労制度の創設(旧:技能実習制度の見直し)

長らく批判の多かった「技能実習制度」に代わり、2025年から新たに「育成就労制度」がスタートします。この制度は、人材育成を前提としつつも、より実践的な労働力の確保を目的としています。
現在のところ警備業は対象職種には含まれていませんが、同じ労働集約型産業である「清掃」「建設」「運送」などが対象となっており、将来的な追加対象とされる可能性は否定できません。

2.2 特定技能制度の拡充

「特定技能」は、一定の技能水準と日本語力を有する外国人に対して、在留と就労を認める制度です。現時点では警備業は対象外ですが、社会的ニーズや業界団体からの要望により、今後の追加対象分野として検討される可能性があります。
特に「交通誘導」「施設受付」など一部の警備業務については、語学力や対人対応が問われるものの、技能としては汎用性が高く、外国人材でも対応可能な業務領域として注目されています。

3. 現場ではどこまで進んでいる?警備業界での外国人雇用の現状

3.1 実際に働ける在留資格とは?

近年、多様な働き手が警備業界にも求められる中、「外国人は警備員として働けるのか?」という疑問を持つ経営者・人事担当者も多いのではないでしょうか。ここでは、警備業で合法的に就業できる外国人の在留資格について、押さえるべきポイントを解説します。
警備員として働く場合、日本の法律上「誰でもOK」というわけではありません。日本で原則として警備業に従事できるのは、以下の4つの「身分系在留資格」を持つ方です。

  • 永住者
  • 永住者の配偶者等
  • 日本人の配偶者等
  • 定住者

これらの身分系在留資格を持つ外国人は、日本人と同様に就労制限がないため、警備業を含むあらゆる職種で働くことができます。この4つの在留資格は「就労制限がない」ため、日本人と同様に警備員としてフルタイムで働くことができます。派遣・アルバイト・正社員など雇い方に関わらず、業務内容の制限も基本的にありません。
一方、特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務などの「就労系ビザ」や、留学生、家族滞在などの「在学・親族帯同系ビザ」は、警備員としての就業は原則として認められていません。

  • 技能実習・特定技能など:原則として警備業は搭載職種にありません。
  • 技術・人文知識・国際業務:企業内で専門職に就くための資格のため、現場警備員は対象外です。

警備員として採用する場合、在留資格以外にも「年齢」や「犯罪歴」など、警備業法上の欠格事由に該当しないことが必要です。採用時には身分確認など必ずチェックしましょう。

3.2 「実際に雇用できるか?」という企業の声

現場の声を聞くと、以下のような意見が挙がっています。

  • 「イベント警備で若手が集まらないので、外国人材が候補になるかもと思っている」
  • 「日本語の聞き取りが難しいと、クレームにつながるのではと心配」
  • 「顧客(施設管理者)からの理解を得られるかが不安」

つまり、現場では「必要性」は感じているものの、語学力・法的制限・対外的理解のハードルにより、導入に踏み切れていないという実態があります。

4. 今後の制度改革と警備業界への波及

警備業界で外国人材が広く活用されるには、以下のような制度的整備が必要です。

課題必要な対応
警備業法の制限日本語力や国籍に関する要件の見直し
資格試験の言語対応検定試験(施設・交通・雑踏警備)を多言語対応化
顧客や現場の受け入れ体制外国人受け入れに対する啓蒙・ガイドラインの整備
雇用管理体制の強化日本語研修・文化理解研修、宗教配慮やシフト調整等への制度化
コンプライアンスと監督体制不法就労の防止、外国人への適正な待遇・契約の整備

警備業は国民の安全・秩序に直接関わる仕事であるため、他業界より慎重な制度設計が求められます。とはいえ、特定の警備業務において段階的な導入が進められる可能性も十分にあります。

5. 企業が今からできる実務的な備え

外国人警備員の本格導入に備え、企業としては以下のような取り組みを始めることができます。

5.1 雇用モデルの検討と関係機関との連携

  • 派遣会社や業務請負を通じて、外国人が関わる関連業務(清掃・受付など)から段階的に導入
  • 地方自治体や外国人支援団体との連携により、雇用モデルのケーススタディを収集

5.2 内部体制の見直しと研修の準備

  • 現場責任者に対する「多文化共生研修」や「やさしい日本語」の導入
  • 勤怠管理や業務指示のマニュアルを多言語で準備(英語・ベトナム語・中国語など)

5.3 法制度のウォッチと実証事業の活用

  • 業界団体(全国警備業協会など)の動向を定期的に確認
  • 自治体が主導する「外国人材受け入れ実証プロジェクト」に積極的に参加

将来的に制度が整備された際に、いち早く対応できる体制を持つことで、採用競争における優位性を獲得できます。

6. まとめ:外国人材の“可能性”と“備え”の両立を

外国人材の活用は、警備業界が抱える人手不足の抜本的解決策となり得ます。とはいえ、制度面・社会的理解・現場の備えが十分でなければ、単なるトラブルの火種にもなりかねません。
重要なのは、「いますぐ大量採用」ではなく、「制度の変化に対応できる柔軟な準備」です。定住者など現在就労可能な外国人のトライアル雇用から始め、実績を積むことが企業にとって最良の第一歩となります。
今後の制度整備と社会環境の変化に応じて、“多様な人材が活躍できる警備現場”がスタンダードになる時代は、そう遠くないかもしれません。

警備の”今”と”これから”を考えるメディア「警備NEXT」では業界ニュースや現役警備員から聞いた調査レポートを掲載しています。ぜひ参考にしてみはいかがでしょうか。

※本記事の内容は2025年7月時点の法令・制度情報です。最新の入管・警備業法改正情報は行政または警備業協会等の公的機関でご確認ください。

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