交通誘導警備、施設警備、雑踏警備など警備の仕事は、街の安全を支える欠かせない存在です。 一つひとつの現場に責任があり、トラブルを未然に防ぐ判断力や落ち着いた対応が求められます。
そんな現場で経験を積むうちに、「自分ももっと大きな現場を任されたい」「管制の仕事にも挑戦してみたい」と感じる方も多いのではないでしょうか。
近年、警備業界全体でも“現場で働く隊員がキャリアアップできる仕組み”が整いつつあります。 厚生労働省が策定した「職業能力評価基準」では、警備員のスキルや成長ステップが明確に示されており、全国警備業協会でもeラーニングなどを活用して、学びやすい環境づくりが進められています。
今回は、実際に現場からステップアップして管制や管理職として活躍している先輩たちの実例や、キャリアアップを支える制度を解説します。
キャリアの土台をつくる「新任教育」と「現任教育」
警備員として働き始める際には、まず20時間以上の「新任教育」を受けることが義務付けられています。この研修では、法令、安全管理、護身技術など、業務に必要な基礎知識と技能を学びます。
勤務開始後は、年に10時間以上の現任教育を定期的に受講する必要があります。これは、最新の法令や安全対策を学び直し、日々の現場で役立つスキルを維持・向上させるための制度です。
このような教育は「受けさせられる研修」ではなく、自分の将来を広げるチャンスです。リーダーや管制を目指す上でも、基礎力を磨くことが第一歩になります。
働きながら学べる「eラーニング」の活用
全国警備業協会では、従来の集合研修に加えてeラーニング(オンライン学習)を補完的に活用できる仕組みを整えています。スマートフォンやパソコンを使って座学を受けられるため、現場勤務の合間でもスキマ時間に学習できます。
ただし、警備業法に基づく法定教育は「面接指導(対面)」や「実技」が欠かせません。オンライン学習を活用しながら、対面での実技指導を組み合わせることで、効率的かつ実践的にスキルを身につけることができます。
忙しい中でも、自分のペースで成長を続けられる環境が少しずつ整ってきています。
実例紹介:現場からキャリアアップを果たした先輩たち

ここで、実際に現場警備員からキャリアアップを果たした事例を紹介します。
Hさん(和歌山警備保障)―機械警備から管制室、そして次長へ
和歌山警備保障の社員インタビューによると、Hさんは 機械警備の現場からキャリアをスタートし、管制室勤務を経て、次長に昇格 しています。
「最初は機械警備の現場から始めました。そこから管制室勤務を経て、次長に昇格しました。現場を経験しているからこそ、管制でも的確な対応ができると感じています。」
(出典:和歌山警備保障 採用サイト 社員インタビュー)
このコメントから分かるように、Hさんは現場で培った経験をもとに管制業務を担い、さらに管理職へと昇格しました。
管制室は、複数の現場を同時に監視・管理し、異常があれば出動指示を行う重要な拠点です。現場経験を持つことで、判断が実情に即し、隊員への指示も的確になります。
Hさんの歩みは、厚労省の評価基準で示される「現場から管制・管理職へ」という流れを体現しており、警備員のキャリアアップを考えるうえで参考となる実例です。
R.Tさん(安田エステートサービス)―施設警備から管理部門で活躍へ
安田エステートサービスの公式インタビューでは、R.Tさんが 施設警備の現場業務を経て、現在は警備管理部に所属 していることが紹介されています。
担当しているのは、オフィスフロアとマンションフロアを併設した複合施設です。来館者対応や入館者の誘導、巡回・モニタリング、緊急対応など、多岐にわたる業務を担っています。
「現場経験を活かして業務にあたっています。現場を経験しているからこそ、隊員の気持ちを理解でき、全体を見渡す責任を持つことにやりがいを感じています。」
(出典:安田エステートサービス 採用サイト 社員インタビュー)
このコメントからも分かるように、R.Tさんは現場経験を活かして現在の業務に取り組んでいます。施設警備はさまざまな利用者との接点や不測の事態への備えが求められるため、その経験が管理部門での役割を担ううえでも強みになっています。
R.Tさんの事例は、現場経験を土台にキャリアを積み上げていく典型的なパターンであり、業界で広く見られる方向性と一致しています。
キャリアアップで得られる3つのメリット
キャリアアップは昇格や役職だけを意味するものではありません。現場で働く中で、自分自身の成長を実感できることが最大の魅力です。
- 将来の目標が見える
現場の先にどんな道があるのかが分かることで、日々の仕事にも目的を持って取り組める。 - 信頼される存在になれる
管制やリーダーとして、仲間を支え、頼られる立場に立つことができる。 - スキルが自信に変わる
教育や研修で得た知識が、現場判断やトラブル対応に活きる。
自分の努力が評価され、後輩に教える立場になったとき、「続けてきてよかった」と思える瞬間が訪れます。
現場と管制をつなぐキャリアの道
警備員のキャリアアップは、新任教育 → 現任教育 → 現場責任者 → 教育担当 → 管制業務 → 管理職という流れで実現します。
実例で紹介したHさんやR.Tさんのように、最初から特別な資格を持っていなくても、現場での積み重ねが確実に次のチャンスにつながります。まずは、「今の現場でできることを一歩ずつ伸ばす」ことから始めてみてください。
その小さな一歩が、やがてチームをまとめるリーダーとしての自信や、現場全体を支える管制職への道につながっていきます。
今回紹介した先輩たちの実例や、キャリアアップを支える制度をヒントに、自分のペースで、一歩ずつ“管理職への道”を歩んでみてください。
警備NEXT(警備ネクスト)では、現場で役立つ知識や警備員の声をこれからも発信していきます。日々の勤務に少しでも役立ててもらえたら幸いです。