株式会社RTS 代表取締役 行政書士 増田良和氏が語る
現場・取引先・法制度をつなぐ
“伴走支援”の実践と展望
株式会社RTS 代表取締役であり行政書士でもある増田氏は、18歳で警備業界に入り、現場勤務~経営と多様な経験を重ねてきました。そして行政書士としての支援まで一貫して関わる視点から、「警備業の許認可が単なる手続きではなく、現場や経営の課題に深く関わるもの」だと語ります。
前編では、警備業界に特化した行政書士としての視点から、許認可取得にある課題・新規参入の実態・経営に必要なことについてお伺いしました。
後編ではその視点をもとに、警備業界の変化と課題、そして今後求められる支援や経営のあり方について、より具体的に掘り下げていきます。

【プロフィール】
増田 良和(ますだ よしかず)様
株式会社RTS 代表取締役/行政書士事務所RTS 代表
18歳で警備業界に飛び込み、大手警備会社で現場勤務・営業・管理を経験。その後、中堅警備会社にて取締役・代表取締役を歴任し、経営の最前線にも携わる。
令和元年には、施設警備を中心とした警備サービスを展開する株式会社RTSを創業。さらに、取引先の建設業・イベント業・ビルメンテナンス業に対する総合的な支援を目指し、行政書士事務所RTSを開業。
現場・経営・法制度の三つの視点をあわせ持ち、警備業界に特化した許認可取得支援や体制整備、教育・運用サポートまで、現場に寄り添う伴走型支援を行っている。
株式会社RTS:https://rts-safety.com/
行政書士事務所RTS:https://rts-keibi.com/
「変わる現場、変わる経営」──昭和から令和の警備業界
警備業界は、時代とともにその在り方を大きく変えてきました。
「昭和60年代ごろから警備会社の数が一気に増えました。歴史のある企業も多い一方で、ここ数年はコロナ禍をきっかけに助成金や融資でなんとか乗り切った企業が、資金の使い方を誤って立て直しに苦労しているケースも見られます」
さらに、異業種からの参入も相次いでいます。
「異業種からの参入が悪いとは思いません。ただ本業が厳しくなったから別事業でと考える方や、取引の中で警備業は比較的簡単ではないかなどと考えて警備業を始める方も多く、制度や現場運用の理解が浅いままでは、現場や社員が疲弊してしまいます」
その背景には、「経営者の姿勢が現場の環境をつくる」という根本的な構造があると指摘します。
「結局、社員や中間管理職は経営者を見ています。トップが人を大切にしないと、教育の質も落ち、働く人の意識も下がっていく。逆に、中間層がしっかり経営者の考え方を受け継いでいれば、それは必ず現場に浸透します」
「安心・安全」は“目に見えない商品”
増田氏は、行政書士として多くの警備会社や取引先(建設業、イベント、ビルメンテナンス等)とのやり取りを重ねる中で、ニーズの変化や信頼構築のポイントを現場感覚で捉えています。
「警備という仕事は、“目に見えない商品”──つまり、安心・安全といった抽象的な価値を提供しているようなものです。だからこそ、会社の実績や歴史、スタッフの信頼感が非常に重要になります」
企業規模や地域性によっても客層は変わりますが、共通して求められるのは“安定した現場対応”と“信頼できる組織体制”。
「印象に残っていない企業はありません。逆に、関わった企業のほとんどが軌道に乗っています」
信頼を築くうえでの基本は、やはり“体制の整備”。
日常的なコミュニケーションや、急な依頼にも柔軟に対応できる仕組みを持つことが、取引先との信頼関係の継続に大きく寄与しているように感じました。
「許認可だけでは終わらない」──行政書士としての伴走支援
警備業界への新規参入が増えるなか、制度や運用への理解不足が大きな障壁となることもあります。
「“なんとなく警備業をやってみたい”というご相談もありますが、そこは丁寧にヒアリングさせていただきます。なぜ参入したいのか、今後どう展開したいのか。方向性が明確でないと、結局うまくいきません」
そのうえで、法定書類や実務運営をサポート。必要に応じて社労士や顧問弁護士のご紹介も行います。
「許認可業務はあくまで入口。その後も労務や採用の相談、取引先の紹介まで行っています。行政書士であると同時に、“警備業支援のパートナー”として頼っていただける関係を築いていきたいと考えています」
「採用は念力」──人を大切にする会社が選ばれる

人材確保が業界の共通課題となるなか、「選ばれる警備会社」になるために必要なこととは。
「圧倒的に中小企業が多いこの業界では、繰り返しになりますが“トップがどれだけ人を大切にしているか”がすべてだと思います」
そのうえで、採用活動における“熱量”も重要だと語ります。
「採用は“念力”です。どれだけ本気で取り組むか。求人記事の見せ方、レスポンスの早さ、問い合わせへの対応。どれを取っても“真剣さ”が伝わらないと、応募者の心は動きません」
「未来を拓く」──女性・外国人が活躍できる環境へ
今後の警備業界の展望について、増田氏は「女性や外国人が活躍できる環境づくりが鍵」だと強調します。
「夜勤を希望する女性も多いのに、仮眠室が男女共用だったり、鍵がかからなかったりして、物理的なハードルが多い。子育て中の方が働けるような短時間勤務の仕事や仕組みも不足しています。改善しなければ、優秀な人材を取りこぼすことになります」
加えて、外国人就労の可能性についても注目しています。
「特定技能制度に警備業を加える議論が進んでいます。まだ先の話かもしれませんが、就労環境を整え、外国人でも安心して働ける現場が増えれば、業界全体の活性化にもつながるでしょう」
株式会社RTSと行政書士事務所の展望──そして最後に伝えたいこと

こうした現場と経営の視点を持つ増田氏が、今後目指している方向性にも注目が集まります。
「業界団体のお手伝いなどを通じて、警備業界の発展に寄与したいと考えています。横のつながりができることで、情報やノウハウを共有でき、業界全体がさらに良くなっていくことを期待しています」
また、事業規模の拡大についても明確な目標があります。
「売上は数年以内に倍増を目指しています。ありがたいことに、施設警備を中心に安定したニーズがあり、採用面でもうまくいっていると感じています。在籍スタッフは現在約130名で老若男女おりますが若い方も多く、男女比はおおよそ9:1と、業界の平均に近い構成です」
最後に、読者である警備業界の経営者や管理職の方、業界志願者へのメッセージを伺いました。
「AIや機械警備に置き換わる部分はありますが、それでも“人”が担う領域はなくなりません。だからこそ、教育や環境整備にもっと力を入れていくべきです」
たとえば数十年変わらない消防設備のように、「何かあったときに最終的に判断や対応をするのは“人”であること」は、今後も変わらないと語ります。
「賃金水準も、私が警備員を始めた27年前と変わっていない業界でもあります。これは大きな課題です。業界全体で、価値を見直し、待遇改善にも取り組んでいく必要があります」
それでも、増田氏は警備業界の未来に希望を見出しています。
「警備業は、絶対になくならない仕事です。だからこそ、“人を大切にする会社”を選び、正しく丁寧に取り組めば、現場も経営も成長していける。経営者にとっても志す人にとっても、未来は明るいと私は思っています」

警備業界の内側から制度と現場を支える、稀有な存在である増田氏。「人が財産」という理念のもと、士業として、そして経営者としても着実に成果を上げています。
警備NEXT(警備ネクスト)では今後も警備業界に寄り添う士業の方々に光を当て、現場と制度をつなぐヒントを届けていく予定です。どうぞご期待ください。