年末年始の繁忙期に活躍する人材の見抜き方!短期バイトから未来のリーダーを育てる方法

人材育成

警備業界にとって年末年始は一年の中でも特に繁忙期です。初詣や大型商業施設のセール、イベントの開催、物流の増加により、交通誘導や雑踏警備、施設警備の需要が急増するため、多くの警備会社では早めから短期アルバイトの採用準備を進めています。
特に近年は警備人材の不足が深刻化しており、早期の採用・育成戦略が一段と重要になっています。多くの企業では「短期バイトはその場限りの戦力」と考えがちですが、それではせっかくの人材が流出し、慢性的な人手不足の解消にはつながりません。
むしろ繁忙期にこそ、未来のリーダーを育てるチャンスがあります。本記事では、短期バイトから将来のリーダー候補を見抜き、育てるためのポイントと人材育成のコツを解説します。

繁忙期採用の現状と課題

一時的な戦力不足を補う「短期採用」

警備会社の実態報告や業界関係者の声では、年末年始の警備人員が通常期の1.5倍以上になるケースはよくある話です。そのため、未経験者や学生アルバイトの採用が増える傾向にあります。
厚生労働省の統計でも、警備業は「高齢者」「未経験者」の参入が多い業種として報告されています。2022年の厚生労働省「雇用動向調査」によれば、警備員の離職率は全職種の平均を上回る傾向にあり、特に若年層の定着が課題とされています。短期採用が現場を支える大きな要素である一方で、課題も浮き彫りになります。

課題1:即戦力になりにくい

警備業法では、新任教育として20時間以上の研修(座学+実技)が義務付けられており、未経験者は現場に立つまでに一定の時間とコストがかかります。繁忙期に即戦力化するにはこのタイムラグが大きく、さらに研修の質や本人の適性によって習熟度に差が出やすいのが現場の負担となっています。

課題2:定着率の低さ

「短期で終わる」という意識が強く、繁忙期が過ぎれば辞めてしまうケースが多く見られます。不規則勤務や体力的な負担、将来のキャリアを描きにくいことが要因で、結果として定着率が低くなりがちです。
そのため現場では常に新人教育を繰り返すことになり、教育コストの増加にもつながります。

短期バイトから未来のリーダーを見抜くポイント

短期採用者の中にも、長期的に育てる価値のある人材は必ずいます。以下のような視点を持つことで、「伸びしろのある人材」を見抜くことが可能です。

1. 基本動作に誠実さがあるか

  • 挨拶や報告がきちんとできる
  • 時間を守る
  • 服装や装備を正しく着用する

警備業務は「基本の徹底」が命。ここに誠実さがある人は、教育次第で必ず伸びます。

2. 指示を受け止める素直さ

現場では状況が常に変化します。隊長や責任者の指示を素直に受け止め、即行動できるかどうかは大切な資質です。また、単に指示に従うだけでなく、なぜそうするのかを理解しようと質問したり、一度教えたことをすぐに実践しようとするなど、学ぶ意欲があるかどうかも見極めましょう。

3. 仲間との連携力

雑踏警備や交通誘導では、複数人の連携が不可欠。コミュニケーションが円滑で、周囲に安心感を与える人材は将来のリーダー候補といえるでしょう。さらに、チームのために自分の役割を理解し、協調性を持って行動できるかも重要なポイントです。

4. 自ら考え、行動できるか

例えば「人の流れが滞っているので声をかけよう」といった小さな工夫を自然にできる人は、現場をまとめる役割に向いています。

5. 将来のキャリアに対する関心

短期雇用であっても、将来の展望や警備の仕事に対する関心を探ることで、定着につながる可能性の高い人材を見抜けます。「なぜこの仕事を選びましたか?」「将来、警備の仕事でどんなことに挑戦したいですか?」といった質問から、単なる短期的な収入源ではなく、明確な動機や成長意欲があるかどうかを見極めましょう。

事例紹介:短期から長期へ、成功のポイント

事例1:繁忙期バイトから正社員へ

ある大手警備会社では、年末年始の短期バイトを積極的に採用し、その中で「意欲と基本動作の安定度」に着目。入社後1ヶ月間のOJT期間を設け、特に優れた人材には、現場責任者との面談を通じて正社員への登用を打診する体制を構築しました。結果的に、繁忙期後に本人へ長期雇用を提案し、正社員登用に成功しました。
この社員は現在、交通誘導現場の隊長として新人教育も担っているそうです。

事例2:キャリアアップ研修で定着率向上

中堅規模の警備会社では、短期採用者にもキャリアアップ研修の一部を体験してもらう取り組みを実施。「自分も成長できる」と感じてもらうことで、翌年も継続して勤務するケースが増えたといいます。

教育・育成につなげるための工夫

忙しい年末年始でも、人材育成は可能です。少しの工夫で、短期バイトの心をつかみ、長期的な関係を築くことができます。ここでは、繁忙期でも実践できる具体的な教育・フォロー体制について解説します。

繁忙期でもできる「簡易教育」

短期採用者には、いきなり多くの情報を詰め込むのではなく、現場で最低限必要な知識とスキルを丁寧に伝えることが大切です。

  • 初日のオリエンテーションで「警備業法の基本」をわかりやすく説明し、仕事の社会的意義を伝える
  • 短時間でも制服や装備の正しい使い方を実習し、安全への意識を徹底させる
  • 現場に出る前には、何よりも「安全第一」の考え方を繰り返し伝え、事故防止の重要性を刷り込む

定着に向けたフォロー

繁忙期が終わり、戦力が去っていく前に、短期採用者の気持ちを長期的な雇用へとつなぐためのフォローが重要です。

  • 繁忙期終了後に面談を実施し、今回の勤務で良かった点を具体的にフィードバック。今後の働き方の希望も丁寧に相談する
  • 警備業務検定などの「資格取得支援」があることを案内し、キャリアアップの道筋があることを示す
  • 現場責任者から直接「君がいて助かったよ」といった感謝の言葉を伝えることで、仕事へのやりがいや貢献感を高める

こうした小さな工夫が「この会社で続けて働きたい」という気持ちにつながります。

人材不足の時代だからこそ、「育成型採用」で未来の戦力を育てる

警備業界は慢性的な人材不足に直面しています。今後は「短期で終わらせる」のではなく、「短期から育てる」発想が必要です。
繁忙期は、多くの新しい人材に出会える絶好の機会です。その中から未来のリーダーを見抜き、定着へと導くことができれば、長期的に大きな戦力となります。

  • リーダー候補を見抜くポイント: 基本動作の誠実さ、素直さ、協調性、キャリアへの関心
  • 定着への鍵:繁忙期後の面談や、キャリアアップにつながる研修へ参加させる

このような「育成型採用」の考え方は、短期的な戦力確保だけでなく、長期的な会社の成長に繋がります。警備の現場を支える人材を育てることが、ひいては業界全体の未来を築くことにもなるのです。

警備の”今”と”これから”を考えるメディア「警備NEXT」では業界ニュースや現役警備員から聞いた調査レポートを掲載しています。ぜひ参考にしてみはいかがでしょうか。

出典・参考資料:

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