近年、気象庁も注意喚起しているように、日本各地で「ゲリラ豪雨」と呼ばれる局地的な大雨が増えています。短時間で一気に強い雨が降るため、通常の雨具では対応しきれない場面も多く、現場で働く警備員にとって大きな課題となっています。
警備業務は「交通誘導警備」(道路工事現場などで通行の安全を確保する業務)、「施設警備」(ビルや商業施設などでの防犯・防災業務)、「雑踏警備」(イベント会場や人の集まる場所での混雑整理)と多岐にわたります。いずれの現場でも、急な雨により業務効率が低下したり、安全上のリスクが増すことは避けられません。
そこで本記事では、警備員の皆さんが雨の日も快適かつ安全に業務を行えるよう、「本当に役立つレインギア(防水ウェアや関連装備)」のチェックポイントやおすすめアイテムを紹介します。
レインギアとは
レインギアとは、警備員や屋外で働く人が雨天時にも快適かつ安全に業務を行うための防水装備の総称です。具体的には、防水性と透湿性を備えたレインジャケットや防水パンツ、雨水の浸入を防ぐ防水ブーツなどを指します。
これらは急な豪雨や長時間の雨天に対応できる耐水圧の高い素材で作られており、動きやすさや視認性を高めるために反射材が付いているものも多いのが特徴です。レインギアは単なる雨具ではなく、警備員が雨天の現場でも体を濡らさず安全に業務を遂行するための重要な装備であり、その選び方や正しい着用方法、定期的なメンテナンスも非常に重要です。
レインギアに求められる基本性能

防水性能とは何か?
雨具を選ぶ際にまず確認すべきなのは「防水性能」です。防水性能は主に「耐水圧」という数値で表されます。これは、生地がどの程度の水圧に耐えられるかを示す指標で、たとえば耐水圧10,000mmであれば「その高さの水柱でも水が染み込まない」という意味になります。
参考までに、JIS規格や各種解説サイトで示されている目安は以下のとおりです。
- 300mm程度:小雨に耐えられる
- 2,000mm程度:普通の雨に耐えられる
- 10,000mm以上:豪雨や長時間の雨にも対応可能
ただし実際の警備現場では、体重や姿勢によってさらに強い圧力がかかります。たとえば75kgの人が膝をつくと約11,000mmの圧力がかかるとされます。そのため、警備業務で使用するレインウェアは最低でも耐水圧10,000mm以上を目安にすると安心です。
参照:ユニフォームネクスト
透湿性でムレを防ぐ
防水性能と並んで重要なのが「透湿性」です。透湿性とは、衣服内の蒸気(汗や湿気)を外に逃がす性能のことで、24時間あたりにどれだけの水蒸気を放出できるか(g/㎡/24h)で表されます。
透湿性が低いと、内部が蒸れて体温が上がりやすく、夏場には熱中症リスクも高まります。目安としては以下が参考になります。
- 5,000g/㎡/24h:軽い作業に対応
- 8,000~10,000g/㎡/24h:発汗が多い作業にも対応
- 15,000g/㎡/24h以上:スポーツレベルの高強度な活動でも快適
特に夏の交通誘導や雑踏警備では、透湿性8,000g以上のレインウェアを推奨します。
参照:KOKURAYA

視認性と安全性を高める工夫
雨天時は視界が悪くなり、事故のリスクが高まります。そのため、レインウェアには反射材(リフレクター)が施されたものを選ぶことが大切です。特に夜間の交通誘導では、車両ドライバーからの視認性を確保することが安全に直結します。
また、フード付きウェアを選ぶ際は「視界を遮らない設計」かどうかもチェックポイントです。
豪雨でも身を守れるアイテム紹介

警備員が豪雨に直面した際、最も重要なのは「浸水を防ぎつつ、快適に動ける装備」をそろえることです。ここでは現場で役立つ代表的なアイテムをご紹介します。
■ レインジャケット
レインウェアは防水性が高いほど生地が硬くなりがちです。しかし警備員は腕を大きく振って合図を出したり、立ち位置を移動したりと、常に体を動かしています。動作を妨げないストレッチ性のある素材や、関節部分にゆとりを持たせた設計を選びましょう。
突然の雨に備えるため、軽量で持ち運びやすいレインウェアは必須です。現場によっては「晴れていたのに急に豪雨」ということも多く、制服の上からすぐに着用できるタイプも便利です。
- 耐水圧10,000mm以上のモデルがおすすめ。豪雨でも水をしっかり弾き、内部への浸水を防ぎます。
- 透湿性のある素材を選べば、ムレを防ぎ快適な着用感を維持できます。
- 夜間業務用には反射材付きタイプを選ぶと安全性もアップ。
■ 防水パンツ
- 上下セットで着用すると、風雨を全身でシャットアウト可能。
- 裾に調整ベルトがあるタイプなら、ブーツの上からしっかり固定でき、水の侵入を防ぎます。
- 動きやすさを重視するなら、ストレッチ素材を使ったタイプが便利です。
■ 防水ブーツ
レインウェアだけでなく、足元の防水も重要です。靴が濡れると足の冷えや疲労感の原因になり、集中力低下につながります。滑り止め機能付きのレインブーツや防水シューズカバーを併用すると、快適性が大きく向上します。
- 滑りにくいソールが付いたタイプは、濡れた路面や現場でも安定して歩行できます。
- 長時間の着用でも疲れにくい軽量設計のモデルがおすすめ。
- 内部が蒸れにくい仕様を選ぶと、夏場の豪雨でも快適です。
防水ウェアの着用実態と課題
警備や建設、イベント警備など、屋外での業務が多い現場では、防水ウェアは欠かせない存在です。特に長時間の雨天勤務では、衣服が濡れることで体温が奪われ、集中力や作業効率の低下につながる恐れがあります。そのため、防水性能の高いウェアを選び、正しく着用することが非常に重要です。
しかし一方で、「蒸れやすい」「動きにくい」といった理由から、防水ウェアの着用を敬遠するケースも見受けられます。機能を十分に発揮させるには、素材や構造に加えて、着用方法やメンテナンスの理解が欠かせません。
メンテナンスの重要性
防水ウェアは使用を重ねると性能が低下します。少なくとも年に一度は状態を点検し、劣化が見られる場合は買い替えや修理、撥水加工の再処理を行いましょう。こうしたメンテナンスを習慣化することで、常に安心して現場に立つことができます。
まとめ:快適なレインギアで安全性を高める
ゲリラ豪雨など突発的な雨は、警備員にとって避けられないリスクです。しかし、防水性能・透湿性・視認性・動きやすさといったポイントを押さえたレインギアを導入すれば、快適性と安全性を両立できます。
最後に、チェックすべきポイントを整理します。
- 耐水圧は最低10,000mm以上を目安に
- 透湿性8,000g/㎡/24h以上でムレ防止
- 反射材や視界確保で事故防止
- 動きやすさ・軽量性も重視
- 定期的なメンテナンスで性能を維持
現場責任者や装備品調達担当者の方は、ぜひこうした観点から装備を見直してみてください。警備員一人ひとりが快適に業務を行える環境を整えることが、結果として現場全体の安全向上につながります。