交通誘導警備の現場に直結する法改正が、2024年から2025年にかけて相次いで施行されました。この記事では、熱中症対策義務化、警備業法改正、労務単価引き上げといった最新情報をわかりやすく解説します。現場で働く警備員の方や企業担当者が押さえておきたいポイントをまとめました。
はじめに
交通誘導警備は、道路工事や建築現場などで車両や歩行者の安全を守る重要な業務です。炎天下や悪天候の中でも、現場の安全を確保するために警備員は長時間にわたり立哨や誘導を行います。そのため、労働環境や安全管理のルールは、警備員の健康と命を守るために欠かせません。近年、気候変動による猛暑の深刻化や社会全体の安全意識の向上を背景に、交通誘導警備に関連する法令や制度が相次いで見直されています。本記事では、2024年〜2025年にかけて施行された最新の改正情報をまとめ、現場運営や企業経営にどのような影響があるのかを解説します。
改正内容の全体像
今回取り上げる主な改正は以下の3つです。
- 熱中症対策の義務化(2025年6月施行)
- 警備業法改正による「認定証」廃止と標識掲示義務(2024年4月施行)
- 公共工事における警備員労務単価の引き上げ(2024年3月適用)
熱中症対策の義務化(2025年6月〜)

背景
熱中症は毎年、警備員にとって大きなリスクです。特に交通誘導警備では、舗装された道路や工事現場で直射日光を浴び続ける環境が多く、気温以上に体感温度が高まります。警備員が熱中症で倒れると、本人の健康被害だけでなく、現場全体の安全確保にも支障が生じます。近年、厚生労働省や警備業協会は熱中症防止キャンペーンを展開してきましたが、実施は企業の努力義務にとどまっていました。しかし、猛暑日が年間で数十日を超える地域も珍しくなくなり、努力義務から「法的義務」へと移行する必要性が高まりました。
義務化の内容
2025年6月から、以下の条件下での作業について、事業者に熱中症対策が義務付けられました。
・WBGT値(暑さ指数)28℃以上、または気温31℃以上
・作業時間が連続1時間以上、または1日4時間を超える場合
事業者が行うべき対策例:
- 暑さ指数の計測と記録
- 休憩時間の設定(例:1時間に1回、10〜15分)
- 日陰や冷房の効いた休憩場所の確保
- 水分・塩分の補給体制
- 交代要員の配置による作業時間短縮
- 熱中症発症時の緊急対応マニュアル整備
現場対応のポイント
- WBGT計の常備
- 定期的な声かけで水分補給や休憩を促す
- 冷感インナーやファン付き作業着の支給
- 炎天下を避けたシフト調整

改正警備業法の施行(2024年4月〜)
改正のポイント
- 「認定証」の廃止
- 営業所の見やすい場所への標識掲示義務
- ウェブサイト上での認定番号掲載
- 用語の変更:「認定証」→「認定」、「認定証番号」→「認定番号」
背景と狙い
従来の紙の認定証は現地でしか確認できず、利用者や発注者が事前に事業者の認定状況を知るには不便でした。今回の改正で、ウェブサイト上にも情報を掲示することで、透明性の向上と行政監督の効率化が期待されています。
実務対応例
- 営業所にA3サイズ程度の標識を掲示
- 自社ホームページのトップページや会社概要ページに認定番号を記載
- 行政からの通知に基づき迅速に更新
公共工事の警備員単価の引き上げ(2024年3月〜)
改定内容
区分 | 引き上げ率 | 新単価(全国加重平均) |
---|---|---|
警備員A(1級・2級検定合格者) | +6.4% | 16,961円/日 |
警備員B(上記以外) | +7.7%(最大伸び率) | 14,909円/日 |
現場や企業への影響
- 待遇改善の可能性
- 資格取得の促進
- 発注者との価格交渉材料

まとめと今後の注視点
- 熱中症対策義務化は、現場運営の仕組み作りを迫る
- 標識掲示義務化は、企業の透明性と信頼性向上につながる
- 労務単価引き上げは、待遇改善と人材確保のチャンス
今後は、警察庁や警備業協会からのガイドライン更新や、熱中症対策の具体的事例集の公開が想定されます。現場や経営陣はこれらの情報を逐次チェックし、早めに対応策を整えることが重要です。
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