季節は秋から冬へと移り変わり、屋外や半屋外で勤務される警備員の皆さんにとって「寒さ」は毎年の大きな課題です。特に立ち仕事・屋外待機が多い警備業務では、体を動かす機会が少ない時間帯に体温が下がりやすく、集中力低下や体調不良のリスクにもつながります。そこでこの記事では、現場目線で「寒さに強い警備員になるための装備」「現場でできる工夫」を整理しました。明日から使える実践的な内容ですので、ぜひ自分の現場にも取り入えてみてください。
寒さの警備現場で起こる“困ったこと”と備えの必要性
屋外警備において秋冬が厳しい理由には、いくつかの共通した要因があります。
- 待機型の現場では体を動かす時間が少なく、体温が上がりにくい。
 - 夜間・早朝は気温が急降下し、地面や風の冷気が直に伝わる。
 - 制服の仕様上、厚着しすぎると動きにくくなることがある。
 - 冷えによる血行不良は集中力低下や体調不良を招く。
 
このような背景から、「寒さ対策=待機時間や少動作の時間帯でも体温・血流を保つ仕組み」が大切になります。次章以降では、装備・レイヤリング・現場工夫という三つの視点で深掘りします。
装備編:寒さに立ち向かうための“装備”選びのポイント
寒い現場で快適に業務を遂行するためには、装備・ウェアの選び方がとても重要です。ここでは警備員の装備という観点から、押さえておきたいポイントを整理します。
インナー・ミドルレイヤー
制服の下(インナー)やその上(ミドル)に着る層が体温維持の土台となります。重ね着できる枚数や動ける範囲を考えて選びましょう。
- 吸湿速乾かつ保温性のあるインナー素材を選ぶ。例えば、ポリエステル+メリノウール系など、汗をかいても体に湿気が残りにくいもの。
 - ミドルレイヤーとしてフリース、中綿入りジャケット、薄手でも保温性を持つベスト型など。重ねても動きやすさを保てるものがベスト。
 - 電熱服(ヒーターやバッテリーで暖めるタイプ)を制服の下に着るなど。
 
アウター(防寒着・制服上着)
外気・風・冷気から守る“最後の砦”となるのがアウター層。警備制服の上に着る場合、規定・見た目・動きやすさを考慮しなくてはなりません。
- 防風・防水・透湿性のあるアウターが理想。特に夜間の屋外では風からの影響が大きく、防風機能は重要。
 - 夜間誘導・交通警備など車両が来る現場は「高視認性(リフレクター付き)」の仕様があると安全性も向上。
 - 着ぶくれし動きが制限されたり、制服の肩章・ワッペン・バッジの表示が見えにくくならないよう、アウターは「動きやすさ+制服の識別性」を保てるものが望ましい。
 
ボトムス/手足の装備
下半身・手・足の末端は体温を奪われやすい部位です。特に足元が冷えると全身が辛くなります。
- 裏起毛・防風・防水のズボン(防寒パンツ)を選ぶ。動きやすさも重要なので、ストレッチ素材が入っていると◎。
 - 靴/ブーツも防寒+防水+滑り止め仕様があると、凍結・夜露・霜などの影響を受ける現場では安心。
 - 手袋・帽子・ネックウォーマーも大事。特に首(頸動脈を温めることで血流が巡りやすくなる)や手首・足首の“首”部分を守ることが、体全体の冷え対策に効果的。
 
			レイヤリング&使い方の工夫:装備を効果的に活かす方法
装備を持っているだけでは十分ではありません。着方・使い方・現場での工夫が、寒さを感じにくくする鍵です。
重ね着(レイヤリング)の基本
「レイヤリング」とは、複数の衣服を重ねることで保温・調湿・風防などの機能を構成する方法です。警備員の現場で有効な基本パターンを整理します。
ベースレイヤー(肌着)
汗をかいても体表面に湿気を残さない「速乾性・吸湿性」重視。熱を逃がさず、冷気にさらされた時に体温低下を緩やかに。
ミドルレイヤー(保温層)
フリース、中綿ジャケット、電熱ベストなど「暖かさ」を主目的に。動ける範囲で1〜2枚重ねられると安心。
アウターレイヤー(防風・防水層)
外部からの冷気・風・雨・雪などを遮断。制服の上に羽織ることが難しい際、防寒仕様の制服上着+インナー重ね着で代替する方法を併用。
ポイントとして、「重ねすぎて動きづらくならない」「制服としての識別性を確保する」「過剰な厚手で汗をかいて逆に冷える」というバランスを意識したいところです。実際、制服の上に市販の厚手アウターを「そのまま羽織る」のは禁止されている場合があります。
小物・末端部のケア
装備の中でも、手首・足首・首元など末端の“首”を温めることが実は体全体の保温に効きます。
ネックウォーマーやマフラー
首には重要な血管(頸動脈)があるため、首を温めることで血流が巡りやすく、首元を覆うタイプのものが寒い現場で重宝されている。
カイロ(貼るタイプ)
手首・足首・腰のあたりなど、動きが少ない場所に貼るのも効果的。インナーの上・アウターの下に貼ることで、装備の機能を損なわずに保温力を補える。
靴下の重ね履き
足元の冷えを防ぐためには、薄手+厚手の重ね履きや、裏起毛/保温素材の靴下が有効。
			現場での“使い方”工夫
装備が整っていても、現場での“使い方・習慣”が伴っていないと、寒さを感じやすくなります。具体的な工夫をいくつかご紹介します。
待機・誘導中でも「定期的に体を動かす」
ポケットに手を入れたままにせず、足踏み・軽いストレッチ・肩回しなどをこまめに行うと効果的。
休憩時は温かい場所へ移動&温かい飲み物を用意
誘導終了後は車内や宿直室などの暖かい場所で休憩を。また温かい飲み物を常備しておき、体の内側から温めることも。
装備チェック&準備を早めに行う
手袋・帽子の忘れ物防止、バッテリー式電熱服の残量確認などを忘れずに。
現場の「風向き・冷気の通り道」を把握する
ビル風・交差点付近・舗装からの反射冷気など、“冷えポイント”を把握しておくと◎。 立ち位置を風向きから少しずらす、壁側を背にするなどの工夫で冷えを軽減。
寒さのサインを見逃さない
 ・手足の指先がしびれる
 ・手袋の中が結露する
 ・足が重だるく感じる
これらは冷えが進行しているサイン。 早めに装備を整え直す・休憩を取るなど、無理せず対処を。

秋から冬にかけて“今から”準備すべきポイント
これから本格的な寒さが来る前に、早めに準備しておきたいポイントをまとめます。特に、秋口からの準備が冬の現場を快適にします。
- インナーやミドルレイヤーを「秋仕様」から「冬仕様」へ移行。例えば、薄手インナーから裏起毛インナーに変えておく、ミドルにフリースや電熱ベストを加えておく。
 - 防寒アウターのメンテナンス/交換をしておく。例えば防水・防風機能の確認。夜間誘導の現場では反射テープの劣化チェックも。
 - 靴・手袋・帽子など末端装備の準備。特に靴は冬場は滑りやすくなるため、裏底の摩耗・滑り止めの効き具合の確認が必要。
 - 電熱服・バッテリー式ヒーター装備を導入検討。予算や予備バッテリーの確保をチェック。特に長時間の夜勤・待機が多い現場では効果大。
 - チーム・組織で共有できる「寒さ対策チェックリスト」を作っておく。例えば「手袋・ネックウォーマー・カイロ携行」「休憩中温かい飲み物あり」「動線で風の影響強い場所を避ける」など。
 - 現場に応じて「寒さマップ」を作成。どの位置が冷えやすいか、風が強いか、地面の反射冷気が来るかを把握しておおき、立ち位置や誘導位置の検討がしやすくなる。
 
現場に強くなるための「マインド&習慣」
どれだけ良い装備を整えても、“現場での習慣・意識”が伴っていなければ寒さに負けてしまいます。以下、寒さに強い警備員になるためのマインドと習慣をご紹介します。
「寒さは油断すると集中力を奪う」という意識をもつ
寒さで身体が固まったり・血行が悪くなったりすると注意力が低下。誘導ミス・見落とし・反射神経の鈍化などにつながり、防寒は安全にも直結。
“自分の身体の状態を観察”する習慣をつける
例えば「指先が冷たい→血流が滞っている」「首元がスースーする→防寒が甘い」「動きを減らしている時間が長い→血行が悪くなっている」など、自覚できるように。
“先手防寒”の姿勢を持つ
寒さを感じてから動くのではなく、「この現場・この時間帯は寒くなる」という見通しを持って装備・動き・休憩を設計すること。
仲間・上司と情報共有を行う
例えば「この交差点は風が強くて寒い」「出入口付近で冷気が流れている」など、”寒さポイント”を共有しておくとチーム全体で対策できる。
休憩・飲食習慣を整える
寒い現場では、温かい飲み物をタイミングよく摂る、休憩場所を暖かく保つなど、冷えた身体をリセットする習慣が肝心。休憩を軽く見ないことがポイント。
まとめ:寒さを味方に、プロフェッショナルな警備員に
秋冬の警備現場は確かに過酷ですが、装備・レイヤリング・現場での工夫・マインドを整えることで「寒さに負けない警備員」になることができます。以下、改めてポイントを整理しておきます。
- 装備:インナー・ミドル・アウター・末端装備をそれぞれ見直す。特に制服の仕様を守りつつ、動きやすく保温性を高める。
 - レイヤリング・使い方:重ね着のバランス、カイロ・電熱服などの活用、末端部(首・手首・足首)を守る。
 - 現場工夫:定期的な動き・休憩・温かい飲み物・風・冷気の通り道を把握。
 - マインド&習慣:寒さを安全リスクと捉え、自分の身体状態を観察・先手防寒・情報共有を行う。
 
実際に多くの警備員が「制服の上から厚手アウターを自由に羽織れない」「静止時間が長く体が冷えやすい」といった悩みを抱えており、インナー重ね着・電熱ベスト・ネックウォーマー・カイロ活用といった対策を実践しています。
これから迎える冬に向けて、装備・現場習慣を今のうちに整えておけば、「寒いからつらい現場」ではなく「寒さをうまくコントロールできる現場」に変えていくことができます。次回の夜勤、次回の屋外誘導、次回の駐車場警備…、ひとつひとつを“寒さに強くなるチャンス”と捉えて、備えていきましょう。
警備NEXT(警備ネクスト)では、現場で役立つ知識や警備員の声をこれからも発信していきます。日々の勤務に少しでも役立ててもらえたら幸いです。