はじめてでもわかる警備業法 警備員が知っておきたい基礎知識とルール

となりの警備員

警備員の仕事は、人々の安心・安全を守る社会的に重要な役割を担っています。
しかしその一方で、警備業は「警備業法」という法律に基づき、厳しく規制されています。警備員一人ひとりがこの法律を理解して業務を行うことが求められます。
新人警備員や、法律に苦手意識を持つ方にとっては「警備業法」と聞くだけで難しそうに感じるかもしれません。
この記事では、はじめての方でも理解できるように警備業法の基本ポイントを整理し、現場で押さえておくべきルールをわかりやすく解説します。

警備業法とは?

制定の背景

警備業法(昭和47年法律第117号)は1972年に制定されました。背景には、当時増加していたビル警備やイベント警備の需要に対して、業者ごとに業務の質や教育水準に大きな差があり、現場によっては経験や知識が不十分な警備員が配置されるケースもありました。こうした状況は事故やトラブルにつながる可能性が高く、社会の安心・安全を守る立場としては大きな問題でした。
そこで、警備員の教育や会社の運営方法を国が一定の基準で管理する仕組みができたのです。
出典元:e-Gov法令検索「警備業法」

警備業法の目的

警備業法の目的は、大きく分けて次の3つです。

  1. 警備業務の適正な運営を確保する
  2. 公共の安全と秩序を守る
  3. 個人や財産を守る

つまり、単に「警備会社を取り締まるための法律」ではなく、社会全体の安心を支えるためのルールといえます。

警備業務の4つの区分

警備業法では、警備業務を次の4つに区分しています。

区分名称主な内容具体例
1号業務施設警備業務建物や施設の中で巡回・監視・受付を行う商業施設の警備、オフィスビルの出入管理
2号業務交通誘導警備業務工事現場やイベント会場で車や人を安全に誘導する道路工事現場の通行止め、片側交互通行の管理
3号業務貴重品運搬警備業務現金や貴重品を運ぶ際に安全を守る金融機関の現金輸送、貴金属の運搬
4号業務身辺警護業務特定の人物の身の安全を守る著名人や要人の警護

自分が従事している業務がどの区分にあたるのかを理解することは、現場での判断や教育受講の対象を知る上で欠かせません。

警備員の教育と資格

新任教育と現任教育

警備員として働く際には、必ず「教育」を受けることが法律で義務付けられています。

  • 新任教育:初めて警備員になる際に受ける教育(20時間以上/業務区分ごとに規定あり)。
  • 現任教育:すでに従事している警備員が毎年受ける教育。少なくとも年2回以上・合計10時間以上が必要です。内容は業務区分ごとに定められています【出典:警備業法第21条、警察庁 警備業関係資料】。

教育は、知識の習得だけでなく「事故防止」や「法令遵守」を徹底するために必須とされています。

検定資格(公安委員会による制度)

警備業界ではしばしば「資格」という言葉が使われますが、正確には国家公安委員会が定める検定制度に合格した警備員を指します。いわゆる「国家資格」ではありません。代表的な検定には以下があります。

  • 交通誘導警備業務 1級・2級
  • 雑踏警備業務 1級・2級
  • 貴重品運搬警備業務 1級・2級
  • 施設警備業務 1級・2級

これらの「検定合格警備員」は、特定の現場に配置が義務付けられる場合があります。たとえば交通誘導業務では、工事規模や道路の種別に応じて「2級以上の有資格者」を置かなければならないケースがあります。

指導教育責任者と検定合格者の違い

  • 警備員指導教育責任者:営業所ごとに必ず配置が義務付けられる管理者資格。警備員の教育・指導・監督を担う。
  • 検定合格者(有資格警備員):現場ごとに必要とされる場合があり、現場配置義務の対象となる。

このように、両者は「管理者資格」と「現場従事資格」という異なる位置づけです。

警備員が守るべき主なルール

1. 警備員証の携帯

警備員証(顔写真付きの身分証)を携帯し、求められたら提示できるようにしておく必要があります。

2. 権限を超えない

警備員は「警察官の代わり」ではありません。職務質問や逮捕など、強制力を伴う行為はできません。
可能なのは「声かけ」「通報」「注意喚起」などにとどまります【出典:警備業法第15条】。

3. 秘密保持

業務を通じて知り得た情報を外部に漏らしてはいけません。
(例:施設の警備体制、テナントの売上情報など)

4. 品位の保持

勤務態度や言葉遣いは「業界全体の信頼」に直結します。

違反したらどうなる?

警備業法に違反すると、会社や働く警備員本人にとって大きなトラブルにつながります。

  • 会社の場合
    許可を出している公安委員会から「業務をしばらく止めなさい」という命令(業務停止)や、ひどい場合は「もう警備業をやってはいけません」という処分(営業許可取り消し)を受けることがあります。
  • 警備員本人の場合
    ルールを破った働き方をしたり資格が必要な現場に無資格で入ったりすると、会社から解雇されることがあります。さらに悪質な場合は、法律違反として刑事罰の対象になることもあります。

過去には「資格を持っていない警備員を現場に配置した」ことが問題になり、その会社が行政処分を受けました例もあります【出典:警察庁発表資料】。

2025年以降の最新動向

教育制度の見直し

現任教育の教材標準化や、オンライン教育の一部導入などが議論されています。

技能検定の強化

「検定合格者の配置義務」の拡大や、検定合格者を増やすための受験機会拡充が検討されています。

高齢警備員の活用

65歳以上の警備員比率が上がっており、就労環境改善や配置基準の見直しが進められています。

熱中症対策

2025年10月現在では、法改正による「明文化された義務」までは至っていません。
ただし、厚労省・警察庁の通達や指導基準として、WBGT(暑さ指数)の測定や休憩管理の徹底が強く求められています【出典:厚生労働省 熱中症予防対策資料】。

現場で役立つチェックリスト

警備員証を必ず携帯しているか

警備員証は、本人確認や業務の正当性を証明する唯一の証書です。万が一、トラブルや第三者からの確認を求められた際に提示できないと、信頼性を損なう恐れがあります。

新任教育・現任教育を受講しているか

教育の受講状況は法令遵守だけでなく、自分の安全を守るための知識・スキルの確認にも直結します。「忙しいから後回し」ではなく、計画的に受講する姿勢が求められます。

自分の担当業務区分を理解しているか

業務区分を誤解していると、現場での判断を誤る可能性があります。たとえば「施設警備」と「交通誘導」では、対応すべき状況や留意点が大きく異なります。

権限を逸脱する行為をしていないか

警備員は「警察官」ではありません。できることとできないことの線引きを理解して行動することが、法令違反やトラブル防止につながります。

秘密保持に注意しているか

警備員は施設の裏側や重要な情報に触れる立場です。小さな会話やSNS投稿からでも情報漏洩に発展することがあります。情報管理は信頼を守るための基本です。

まとめ

警備業法は一見難しく感じられますが、要点を押さえれば現場で役立つ「安全の指針」として理解できます。

  • 教育は「新任20時間以上」「現任は年2回以上・合計10時間以上」
  • 資格は「国家資格」ではなく「公安委員会による検定制度」
  • 「指導教育責任者」と「検定合格者」は役割が異なる
  • 違反は会社にも個人にも大きなリスク
  • 最新動向としては教育・検定強化や高齢化対応が中心
  • 熱中症対策は努力義務・指導強化段階

これらを理解することで、警備員としての自覚と誇りを持ち、安心・安全を支える存在として活躍できるでしょう。

警備の”今”と”これから”を考えるメディア「警備NEXT」では業界ニュースや現役警備員から聞いた調査レポートを掲載しています。ぜひ参考にしてみはいかがでしょうか。

参考・出典

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